2017/06/24

『夏の嵐』

Senso1954年、伊。ルキノ・ヴィスコンティ監督。アリダ・ヴァリ、ファーリー・グレンジャー他。アマゾンの紹介文。

1866年、対オーストリアの戦況も厳しいイタリア・ヴェニス。愛国運動の指導者で従弟のロベルトとオーストリア将校フランツとの諍いがきっかけで、リヴィア・セルピエーリ伯爵夫人はフランツと道ならぬ恋に落ちてしまう。その後別荘に移ったリヴィアのもとに、流刑の身となっていたロベルトがあらわれ、運動の軍資金の保管を託していくが、フランツの離隊を望むリヴィアは、賄賂が必要だという恋人にその金を渡してしまう。そしてある日恋しさのあまりフランツを訪ねたリヴィアが見たものは・・・。(引用終わり)

ヴィスコンティ作品は、同じくヴェニスを舞台に、作曲家マーラーをモデルにした『ベニスに死す』以来だが、ここでも将校の名前がフランツ・マーラーだというから、よほどお気に入りなのだろう。

本作でもまた、音楽が重要な役割を果たしている。全篇を通して、ブルックナーの交響曲第7番第1、第2楽章が効果的に使われている。聖俗の対極というべきか、不倫を扱った内容とは正反対の音楽であるにもかかわらず、である。

また、冒頭は、フェニーチェ劇場で演じられるヴェルディのオペラ『イル・トロヴァトーレ』のシーンから始まる。「決闘」で始まり、「復讐」で終わるこのオペラと、シチュエーションは異なるものの、この映画が同じ題材を扱っているのは、けっして偶然ではないだろう。

それにしても、どのシーンも本当に「絵に描いた」ように完成されている。迫力ある戦闘シーンですらそうである。ヴィスコンティ自身、オペラの演出も手がけたらしいが、後に数々の名舞台を演出したフランコ・ゼフィレッリは彼の弟子に当たり、この映画でも助手として参加している。

俳優陣では、何と言っても、伯爵夫人という身分でありながら敵軍の男に走り、最後は売春婦と同席させられる屈辱の末、愛憎半ばする復讐をなし遂げるヒロインのリヴィアを、『第三の男』のアリダ・ヴァリが好演している。

6月22、24日 ジョグ10キロ

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2017/06/21

『セトウツミ』

Setoutsumi2016年、製作委員会。大森立嗣監督。池松壮亮、菅田将暉他。公式サイトの紹介文。

高校二年生の内海想(池松壮亮)と瀬戸小吉(菅田将暉)は、放課後をいつも河原でダラダラと喋りながら一緒に過ごす。性格は真逆のような内海と瀬戸だが、くだらない言葉遊びで盛り上がったり、好きな女の子に送るメールの文面で真剣に悩んだり、ときにはちょっと深いことも語り合ったり……二人でいれば中身があるようでないような話も尽きない。そんな二人を影ながら見守っているのは同級生の樫村一期(中条あやみ)だ。瀬戸は樫村のことが好きだけど、樫村は内海が気になっていて、内海はそんな樫村につれない素振り。さらにヤンキーの先輩鳴山(成田瑛基)や謎のバルーンアーティスト(宇野祥平)たちが、二人の日常にちょっとした波風を立てていく。まったりと流れる時間の中で移り行く季節。瀬戸と内海の無駄話は止まらない・・・。(引用終わり)

原作は同名のコミックで、何かの符号みたいなタイトルは、瀬戸君と内海君の名前を繋げたものだ。ちなみに元サッカー部の瀬戸君のチームメイトは大橋君といい、また、樫村一期さんの妹は一会さんという。登場人物の名前からしてひと捻り効いている。(笑)

第0話から第6話までとエピローグ、計8つのショートストーリーからなり、紹介文にあるように、基本的に男子高校生二人が川辺の小公園の石段に腰掛け、他愛もないことを喋っているだけの映画なのだが、その独特の間と絶妙の遣り取りについつい見入ってしまう。そんな不思議な魅力をもった作品だ。

変な連想かもしれないが、同じように絶妙な間合いの脱力系アニメ『紙兎ロペ』に通じるものがあると思う。ロペたちも同じく高校生という設定だし、「フシがある選手権」とか、実際アキラ先輩が言い出しそうな遊びだ。(笑)

WOWOWで解説していた小山薫堂という人も、「朝の3分ぐらいのドラマで毎日見ていきたい感じ。その集大成が映画になるとかね…」と言っていたが、もしかすると彼もロペのことが念頭にあったのかもしれない。

ちなみに、映画のロケ地は堺市内で、自分が小学校卒業まで住んでいた場所から近く、大変懐かしい思いを抱いた。大阪出身の菅田将暉、中条あやみは当然として、福岡出身の池松壮亮の大阪弁も意外にサマになっていた。

6月20日 ジョグ10キロ

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2017/06/15

『パトリオット・デイ』

Ts3r00222016年、米。ピーター・バーグ監督。マーク・ウォールバーグ、ケヴィン・ベーコン他。公式サイトの紹介文。

2013年4月15日。殺人課の刑事トミー(マーク・ウォールバーグ)は朝からボストンマラソンの警備に駆り出されていた。オリンピックの次に歴史の古いこのマラソン大会は、毎年祝日である“愛国者の日”に開催され、117回目を迎えるこの日も50万人の観衆で賑わっていた。
次々と走者がゴールインする最中、トミーの背後で突如大爆発が起こる。歓声は悲鳴に変わり、逃げ惑う人々と折り重なって倒れる負傷者で現場はパニックとなった。到着したFBIのリック(ケヴィン・ベーコン)は現場に散乱した金属片を見ると「これはテロだ」と断言。テロだとFBIに管轄が移る。犯人逮捕に燃えるトミーは歯ぎしりをするが、病院を回って負傷者たちの話を丁寧に聞いてまわるのだった。
やがて監視カメラに映る不審な“黒い帽子の男”と“白い帽子の男”が容疑者として浮上し、事件はアメリカ全土を揺るがす緊迫の事態へと発展していくのだった……。(引用終わり)

劇場で映画を観るのは久しぶりだ。ボストンマラソンは2005年の第109回大会に参加し、また、事情が許せばこの2013年の大会にも参加していたかもしれなかった。それだけに、この事件はとても他人事とは思えず、大きな関心をもって事態の推移を見ていた。

当時感じたとおり、犯人逮捕に向けた警察、FBIの文字通り総力を挙げた捜査が、非常にリアルにかつ詳細に描かれている。巨大な倉庫か何かを借り切って設営された捜査本部の規模といい、その徹底ぶりは想像をはるかに超えていた。他方、犯人の抵抗ぶりも想像以上で、そのまま逃亡していたらNYのタイムズスクエアでも同様の事件を企てていたと知り、背筋が寒くなる思いだった。

もう1点、日本なら後ろ向きの話ばかりになるところを、事件を契機にかえってボストンの人々の団結心、故郷愛が強まり、前を向いて進んで行こうという機運が生じたことに改めて感銘を受けた。ただ、エンディングの「それは愛の力だ」とかいうナレーションはいかにも余計だ。それまでの様々なシーンを通じて、それはもう十分に語られているのだから。

6月14日 ジョグ10キロ

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2017/06/12

『スワロウテイル』

Swallowtail1996年、製作委員会。岩井俊二監督。三上博史、Chara、伊藤歩、江口洋介他。ウィキペディアの紹介文。

"円"が世界で一番強かった時代。一攫千金を求めて日本にやってきた外国人達は、街を"円都(イェン・タウン)"と呼び、日本人達は住み着いた違法労働者達を"円盗(イェン・タウン)"と呼んで卑しんだ。そんな円都に住む、円盗たちの物語である。
少女・アゲハ(伊藤歩)は、円都の娼婦であり唯一の肉親である母が死んでしまい、行き場がなくなってしまう。母の同僚の無責任な大人達にたらい回しにされる中、娼婦グリコ(Chara)の元に引き取られる。胸に蝶のタトゥーをつけ美しい歌を歌うグリコは、それまで名前がなかった彼女に"アゲハ"の名前を与える。グリコもまた、"円"を夢見て上海から日本にやってきた円盗だった。彼女の周りにいるのも、彼女と同じように円を求めて日本にやってきた円盗達だ。アゲハが彼らと共に過ごして数日経ったある日、アゲハを強姦しようとしたヤクザを誤って死なせてしまう。彼の体内には一万円札の磁気データが記録されたカセットテープが入っていた。
ひょんなことから一攫千金のチャンスを得た彼ら。データを元に作った偽札で儲け、グリコは歌手としての道を歩むが……。(引用終わり)

前に観た同じ監督の『リップヴァンウィンクルの花嫁』より20年も前に製作された作品だが、本作においてもやはり、先の全く読めないスリリングな展開、美術作品のような陰影深い映像、音楽を巧みに織り込んでいるところなど、どこをとっても独特の世界観に貫かれている。

近未来の架空都市「円都」を舞台に、偽札作りをめぐる裏社会の暗闘や、「円盗」たちの危うげなサクセスストーリーとその挫折、それらに巻き込まれる中での天涯孤独の少女アゲハの人間的成長を描いている。

そうした全体の筋書きもさることながら、個々のシーンのディテールがいちいち凄くて、大変なインパクトを与える(例えば、「阿片街」の凄絶な光景!)。自分としては珍しく、148分の長尺を一気に観終えてしまったが、機会があればもう一度観てみたいと思わせる作品である。

なお、タイトルの「スワロウテイル」はアゲハチョウの英語名 Swallowtail Butterfly から来ている。最初、アゲハの胸にグリコが悪戯で書いた芋虫が、蝶になって飛び立つさまを暗示しているのかもしれない。

6月10日 LSD20キロ
6月12日 ジョグ10キロ

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2017/06/03

『眺めのいい部屋』

Aroomwithaview_21986年、英。ジェームズ・アイヴォリー監督。アマゾンの紹介文。

20世紀初頭、イギリス。良家の令嬢ルーシーは、旅先で訪れたフィレンツェで労働者階級の青年と出会う。情熱的な彼にルーシーは強く惹かれるが……。封建的思想の残るイギリスを舞台に、大人の女性へと目覚めてゆく良家の令嬢の姿を描いた名作。ジェームズ・アイヴォリー監督による格調高い映像でアカデミー脚色賞、美術賞ほか数々の賞に輝いた。(引用終わり)

この監督の作品は『日の名残り』以来である。ここでも、貴族や階級といった制度がいまだに残るイギリス社会を背景に、そこで生きる人々の息遣いが感じられる人間ドラマが展開していく。

ストーリーそのものは極めて単純なのだが、主人公ルーシーの内面に踏み込んだ心象風景が、場面展開の際にクラシックな挿絵付きで表現されるのが面白かった。

しかし、何よりも映像の格調高い美しさが、この映画の生命だろう。特にフィレンツェの街の落ち着いた佇まいが、映画の最初と最後で強い印象を残している。

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2017/05/16

土曜時代ドラマ『みをつくし料理帖』

あきない世傳』の項で少し書いたが、黒木華主演のNHK土曜時代ドラマ『みをつくし料理帖』が13日から始まった。第1回「はてなの飯」では、上方ではよく食されるが、江戸では「猫またぎ」として見向きもされない戻り鰹を、江戸の人々に食べてもらうまでの苦労話が描かれた。

細かいところまで原作に忠実に作り込もうという制作者の意図が窺えるし、何と言っても大阪弁ネイティブで、耳に心地よい黒木華のセリフが良い。原作にたびたび登場する「下がり眉」という特徴も見事に再現されていて驚いた。

原作に忠実と言えば、文庫本巻末にあるのと同様、作品中の料理の作り方が、最後に黒木華本人によって紹介されている。なぜか「つる家」のセットではなく、スタジオかどこかの近代的キッチンというのが面白いが。(笑)

どうしても北川景子主演のTV朝日版と比較してみたくなるが、一見おっとりとしながら芯の強さを秘めた黒木華、凛とした佇まいにひたむきさを感じさせる北川景子、どちらの澪もそれぞれの良さがあると言うしかない。

ところで前回、これでTV朝日版の続篇がもうなくなったと書いたが、その後、実は北川景子が来年の大河ドラマ『西郷どん』に出演することが発表された。この2つの話がウラで繋がっているのかどうか。芸能界の事情に疎い自分としては、下司な勘ぐりをするしかないところだ。(苦笑)

さて、本日から静岡県内に廃線ランに出かけるので、次回更新までしばらくお待ちを。

5月15日 ジョグ10キロ

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2017/05/13

『恐怖の報酬』

Peur_21952年、仏。アンリ・ジョルジュ・クルーゾー脚本、監督。イヴ・モンタン他。ウィキペディアの紹介文。

ベネズエラの場末の街ラス・ピエドラス。そこは職が無く、食い詰めた移民達が日々何もすることもなく暮らしている。マリオ(イヴ・モンタン)もその一人であった。そこに、ホンジュラスからジョー(シャルル・ヴァネル)がやってきた。マリオとジョーは同じフランス人、意気投合しながら遊んでいた。
そんなある日、500km先の油田で火事が起きた。石油会社は火を消し止めるためにニトログリセリンを現場までトラックで運ぶことに決めた。安全装置のないトラックでニトロを運ぶのは命がけである。そこで街の食い詰め者に2000ドルの報酬で運ばせることにした。選ばれたのは、マリオ、ジョー、ルイージ、ビンバの4人。彼らは2台のトラックに分かれ、500km先の目的地に向かう。
道中は洗濯板のような悪路、転回困難な狭路、落石などいろいろな障害が待ち受ける。マリオと組んだジョーは怖じ気づいてしまい、運転はマリオ任せにして、何かあるとすぐに逃げ出す。「何もしないで2000ドルか」となじるマリオに対して、ジョーは「この2000ドルは運転の報酬だけではない、恐怖に対する報酬でもあるのだ」と答える。
彼らは500km先の油田に無事たどり着けるか? その後の運命は?(引用終わり)

カンヌ国際映画祭でグランプリと男優賞、ベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞した、サスペンスの古典的名作。今回、148分のディレクターズカット版で観たこともあり、4人がこの仕事にありつくまでの前段部分がやや退屈だったが、トラックが出発してからはまさに手に汗握る展開の連続で、意外な結末まで一気に見せる。

彼らは次々と現れる障害にめげることなく、大型トラックを巧みに操ったり、ニトログリセリンを適量使って岩を爆破したりするのだが、彼らは一体何者で、どんな商売をやっていたのだろうか?

ところで、マリオとルイージという名前でピンと来るように、かの任天堂のゲームのキャラクターの名前は、実はここから取ったようである。実際、映画の中のルイージは、ずんぐりとした体つき、ベレー帽、チョビ髭と、ゲームのそれとそっくりだ。いや、逆か。(笑)

5月11、13日 ジョグ10キロ

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2017/05/07

『自転車泥棒』

Biciclette_31948年、伊。ヴィットリオ・デ・シーカ監督。アマゾンの紹介文。

ローマの職業紹介所に並ぶ長い列。失業者アントニオはポスター貼りの仕事にありついた。ただし自分の自転車でという条件。話を聞いた妻はベッド・カバーをはぎ取って質屋へ行き、交換で自転車を受け出す。一家に希望がさしこんだのもつかの間、ポスターを貼っている間に虎の子の自転車を乗り逃げされた。泥棒は雑踏に消えて呆然と路上に立ちつくす。警察は相手にしてくれない。失望といらだち、6歳になる息子と自転車をさがし歩く。(引用終わり)

イタリア・ネオレアリズモの傑作とされる名画。主役の父子はともに演技経験のない素人を起用し、ほぼ全篇ローマ市内でロケ撮影されたこともあり、ドキュメンタリー作品を観ているような気分になる。

ストーリーは極めて単純で、盗られた自転車を探し求めて果たせず、その挙句他人の自転車を盗もうとして取り押さえられるまでの一部始終なのだが、それが残酷なほど丹念に、リアルに描かれている。大戦後の貧困に喘ぐイタリア社会の現実を、丸ごと切り出して観客の前に示したような作品だ。

とりわけ、息子ブルーノの表情や動作が本当に自然で、素人の演技とはとても思えない。茫然自失の態の父親の手を、彼がそっと握り締めるラストシーンは大変切なく、胸に込み上げてくる。

5月5、7日  ジョグ10キロ

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2017/04/16

『48時間』

48hrs1982年、米。ニック・ノルティ、エディ・マーフィー他。allcinema の紹介文。

野外労働中の囚人が、仲間の助けを得て脱走した。犯人に相棒を殺された刑事ジャックは、彼らとつながりのある、服役中の黒人レジーに捜査協力を求める。48時間の仮釈放という条件で、二人は凶悪犯の追跡に当たるが……。ニック・ノルティ、エディ・マーフィの凸凹コンビによるやりとりが最高のアクション・コメディ。(引用終わり)

エディ・マーフィーのデビュー作にして、代名詞のような作品と思っていたが、意外にも主演は相方のニック・ノルティの方だった。しかし、飄々とした風貌や例のマシンガントークなど、エディ・マーフィーの存在感は主役を完全に圧倒している。

紹介文のとおり、白人の刑事と黒人の囚人という取り合わせの妙が、この映画のキモの部分だろう。「バディムービー」というジャンルが、既に確立されていたのかどうか知らないけれど、この映画の影響を受けた後続のバディものは数多いことだろう。

やたらに銃をぶっ放したり、今日的には迫力不足が否めないアクションシーンなど、さすがに古さを感じさせるものの、97分という尺でも十分にお腹いっぱい、文句なしに楽しめる映画に仕上がっている。

4月14、16日 ジョグ10キロ

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2017/04/13

『レヴェナント:蘇えりし者』

Revenant_32015年、米。レオナルド・ディカプリオ主演。公式サイトの紹介文。

1823年、毛皮ハンターの一団はアメリカ西部の未開拓地を進んでいた。隊長のヘンリーを先頭に、ガイド役のヒュー・グラスとその息子のホーク、そしてグラスに対して敵意を抱いているフィッツジェラルドたち一行だったが、ある時、先住民に襲撃され多くの犠牲者を出す事態に。生き残ったグラスたちは危険な川を避け、船を捨てて陸路で砦に戻ろうとするが、グラスは巨大な熊に襲われて瀕死の重傷を負ってしまう。
隊長のヘンリーは余命わずかに見えるグラスを残して行くことを決断。息子のホーク、金に釣られて居残ることにしたフィッツジェラルド達にグラスの最期を看取るよう命じるが……。(引用終わり)

157分の長尺にもかかわらず、ストーリーは極めて単純である。息子ホークを殺害し、瀕死の重傷を負った自分を見捨てたフィッツジェラルドに対する、グラスの執念の復讐劇である。

極寒の山中で、あるいは冷たい川で、何とか食糧を確保し、枯れ草を燃やして暖を取りながら、グラスは次第にケガを克服して、とある砦まで辿り着く。その間のサバイバル術も大変なものだが、最後のフィッツジェラルドとの対決場面での木の枝を利用した偽装工作など、生き抜くためには体力だけでなく、知恵が必要なのだということを思い知らされる。

ただ、本作で最も素晴らしいのは、何と言ってもその美しい映像ではないかと思われる。朝夕の僅かな時間帯の柔らかい自然光の下で撮影されたという映像は、もはやこの世のものとは思えないほどだ。イニャリトゥ監督、ディカプリオに加えて、撮影のルベツキがアカデミー賞を獲得したのは頷ける。

もちろん、手付かずの大自然の中でロケを敢行したことが、迫力のある映像を生んでいる。エンドロールによれば、カナダのアルバータ州で撮影された箇所があるそうで、そう言えば、前に行ったジャスパーに似た風景が登場していた。冬場は氷点下20度、30度などザラという場所である。大変な労作であることは間違いない。

4月12日 ジョグ10キロ

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