2017/12/09

『アラバマ物語』

Mockingbird_2映画ネタはちょっと久しぶり。1962年、米。グレゴリー・ペック主演。「午前十時の映画祭」の紹介文。

世界恐慌の波が襲った1932年、アメリカ南部のアラバマ州。妻を亡くした弁護士、アティカス・フィンチ(G・ペック)は、幼い息子ジェムと娘のスカウトと共に、静かだが幸福な日々を送っていた。そんなアティカスに地方判事から、白人女性への暴行事件で訴えられた黒人青年・トムの弁護を依頼される。人種偏見が根強い町の人々は、黒人側に付くというアティカスや子供たちに冷たく当たるようになる。だが彼は不正と偏見を嫌い、何よりも正義を重んじ、トムの弁護を引き受ける。(引用終わり)

名作である。物語の主軸となるのは黒人青年トムの裁判であるが、当時の南部に根強かった人種偏見に対して、あくまで公正公平な態度を貫くアティカスの生き方や、子供に対する深い愛情がひしひしと感じられ、大変に感銘深かった。米映画協会が選んだ米映画のヒーロー100人の第1位がアティカスだったというのも頷ける。

グレゴリー・ペック自身、「好きな役柄は?」と問われて、「アティカスだ」と即答する場面が、特典映像の「グレゴリー・ペックとの対話」に収録されている。関係者のインタビューによれば、ペック自身アティカスを地で行くような公明正大な人物だったようで、中でも娘のセシリアのスピーチは父への深い尊敬を窺わせ、大変に感動的だった。

ところで、本作は“To Kill a Mockingbird” という原題で、ハーパー・リーによる同名小説を映画化したものだが、これにはネタバラシを含む説明が必要だ。

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2017/11/16

『夜の大捜査線』

Heat1967年、米。シドニー・ポワチエ、ロッド・スタイガー他。ウィキペディアの紹介文。

アメリカ南部の小さな駅に夜行列車からひとりの黒人(シドニー・ポワチエ)が降り立った。町では折しも有力者の殺人事件が発生。パトカーの警官がうだるような熱帯夜のなかを巡回していた。人種偏見の強い地方であるために、駅の待合室にいた「よそ者」の黒人は、巡回中の警官によって容疑者として連行され、署長(ロッド・スタイガー)の前に突き出されてしまう。しかし、あからさまな侮蔑と嫌悪にさらされているこの黒人の男は、フィラデルフィア警察の殺人課、敏腕刑事ヴァージル・ティッブスだった。
滅多にない殺人事件に手を焼く田舎町の警察は、地元市長からの圧力もあって、屈辱感を覚えつつも都会のベテラン刑事ティッブスに捜査協力を依頼する。白人署長はもともと頑固な差別主義であったが、次第にティッブスの刑事としての能力に一目置くようになる。ただし、人種偏見が根強い町であるために、捜査には困難が常につきまとう。
事件はようやく解決し、ティッブスと署長との間には奇妙な友情のようなものが生まれていた。ティッブスが町を去る日、駅には彼を晴れやかな表情で見送る署長の姿があった。(引用終わり)

「夜の大捜査線」という邦題から、夜の大都会を舞台に多数の警察官とパトカーが登場する派手なアクションものを想像していたが、全く違っていた。舞台はミシシッピの片田舎で、捜査に当たるのはティッブスと白人署長、それにサム巡査の3人だけ。殺人事件そのものも、犯人、動機、殺害方法、いずれをとっても月並みな、まことにショボい事件としか言いようがない。

しかし、この映画の価値は殺人事件の捜査そのものより、当時の黒人差別の現実、それを跳ね返すティッブスの名推理、次第に彼の真価を認めざるを得なくなる署長の心理などが、説明は最小限ながら実に巧みに描かれているところにあるだろう。

何と言ってもポワチエのクールな表情がハードボイルトそのものであるし、クインシー・ジョーンズの音楽がそれにぴったり合う。ただ、それ以上に白人署長を演じたロッド・スタイガーが大変いい味を出していて、台詞なしでも署長の内面心理が十分に伝わる名演技である。

11月15日 ジョグ10キロ

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2017/10/07

『ブレードランナー』

Blade_runner1982年、米。リドリー・スコット監督。ハリソン・フォード主演。映画ドットコムの紹介文。

2019年、惑星移住が可能になった未来。レプリカントと呼ばれる人造人間が謀反を起こし、地球に侵入。レプリカント専門の捜査官“ブレードランナー”のデッカードは追跡を開始する。一方、彼は製造元のタイレル社でレイチェルというレプリカントに会い、心を通わせていくが……。熱心なファンによって支持され、カルト化したSFハードボイルド・アクション。(引用終わり)

2019年、近未来のロサンゼルスが舞台というけれど、もう再来年のことになってしまった(笑)。惑星移住も、空飛ぶ乗用車も、酸性雨による都市の荒廃も、まだ現実のものとなっていないが、妙な日本語や中国語の看板が氾濫する、薄暗いロサンゼルスの街並みは独特な世界観を表している。

1982年公開というから、まだCG、VFXの技術はなかったはずだが、特殊撮影でここまでの映像が作られたことは驚嘆に値する。また、文明の進歩で生まれた人造人間の宿命と悲哀を考えさせる内容は、単なるSFアクションの枠を超えた深みをもっている。ラスト近く、ビルの屋上で「TDK」のネオンをバックに、ロイが辞世の詩を語る場面は感動的だ。

当初公開版ではレプリカントの人数に誤りがあったことなどから、「デッカード自身もレプリカントではないのか」という見方が生まれた。スコット監督自身もそのアイデアが気に入っていたそうで、後にそれを示唆するシーンを追加するなど再編集が行われた。今回観た2007年の「ファイナル・カット」版でも当然それらが含まれ、音声解説の中で監督自身が説明を加えている。

さて、そうなると逃走したデッカードとレイチェルのその後が気にかかるが、実は本作を観終わって、この記事を書くためにネットで検索していたら、何と今月末に続篇『ブレードランナー2049』が公開されることを知った。偶然にしても出来過ぎた話である。

10月5、7日 ジョグ10キロ

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2017/10/04

『許されざる者』

Unforgiven_41992年、米。クリント・イーストウッド監督、主演。ジーン・ハックマン、モーガン・フリーマン他。アマゾンの紹介文。

19世紀末のワイオミング。かつては列車強盗や殺人で悪名を馳せていたウィリアム・マニー(クリント・イーストウッド)も、今は農夫として2人の子供とひっそり暮らしていた。そんな彼のもとに、若いガンマンが賞金稼ぎの話を持ちかける。躊躇したマニーだが、今の生活では子供達を育てることはできない。彼は二度と握らないと誓った銃を手にすることを決意し、昔の相棒ネッド(モーガン・フリーマン)とともに、3人で町へと向かった。だが町では恐るべき保安官ビル・ダゲット(ジーン・ハックマン)が彼らを待ち受けていた――。(引用終わり)

普通の西部劇であれば、主人公マニーがヒーローで、悪役の保安官ビルをやっつける物語…となるところだが、本作はそれほど単純ではない。

マニーにしても、かつては冷血の凶悪犯であったし、丸腰の男を撃ち殺したことで、ビルから「最低の卑怯者」と罵られる始末だ。一方のビルも、町の治安を守るために体を張って頑張っていると言えなくもない。誰が善人で誰が悪人かなど、簡単に色分けできるものではない。

本作は西部劇の体裁を取りながら、単なる勧善懲悪劇の次元を超えて、西部開拓時代の現実を残酷なまでに再現してみせた作品である。度重なる暴力シーンはそれを描写するために不可欠なものだ。しかし、その暴力が生みだすものは人間性の崩壊しかなく、最も許されざるものは暴力だというメッセージが伝わってくる。

マニーが町を立ち去る際の、「女たち(娼婦)をもっと人間らしく扱え!」という最後の台詞ともあわせて、この作品はすぐれて現代的な意義を持っている。一部に言われるような「最後の西部劇」とか、「西部劇を殺した」という評価は、全く当を得ていないように思う。

10月3日 ジョグ10キロ

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2017/09/25

『盗聴者』

Lombre2016年、ベルギー、フランス。WOWOWの紹介文。

保険会社で働く真面目な男性デュバルは几帳面なために仕事を多く抱え過ぎ、不眠症とアルコール依存症の両方に悩むように。2年後、失業したデュバルは突然、初対面の男クレマンから仕事を頼まれる。それはあるアパルトマンの一室で盗聴された会話音声などをたったひとりで聴き、タイプライターで文字起こしするという不思議な仕事だ。会話音声では政府の関係者らしき人々が話しており、デュバルは自分の仕事が危険だと感じるが…。(引用終わり)

主人公デュバルが引き受けた仕事は、実はフランス政界の闇に繋がっていた…というストーリーなのだが、その内容に関する説明が断片的で、非常に分かりくい。そのため、それがテープ起こしの仕事とどう関係していたのかという、作品のキモのところがモヤモヤしたままで終わってしまった。

お人よしで小心者のデュバルは、政界の黒幕に体よく利用されただけということのようだが、秘密の仕事をしている最中に突然入って来た男を疑うことなく、言われるままにテープを渡してしまう場面は、いかな彼でもあまりにも不自然という気がした。

9月23、25日 ジョグ10キロ

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2017/09/19

『グッドフェローズ』

Goodfellas1990年、米。マーティン・スコセッシ監督。レイ・リオッタ、ロバート・デニーロ他。allcinema の紹介文。

“グッドフェローズ”と呼ばれるマフィアの世界に憧れるニューヨークの少年ヘンリー。そんな彼はある日、地元のボス、ポーリーのもとで働くことになり、ついにその世界へ足を踏み入れる。こうして、先輩のジミーやトミーから仕事のイロハを学び、一端のギャングとして成長していくのだった。やがて、カレンと結婚し、自分の家庭も築くヘンリー。しかし、ジミーらと犯行に及んだ空港での大金強奪事件をきっかけに、ヘンリーの人生に狂いが生じ始める。仲間が事件の証拠を揉み消す中、FBIに目をつけられたヘンリーは、組織に関するあらゆる証言を迫られていくのだが…。(引用終わり)

マフィアものと言えば『ゴッドファーザー』が有名だが、本作は実話に基づき、末端構成員の目から見た現実のマフィアを、ありのままに描いた映画である。エンドロールの最後にコピーライトの警告文はあっても、フィクション性についての断り書きが一切ないところに、この監督の意気込みというか矜持が見て取れる。

車のトランクに押し込んだ、殺したはずの男が息を吹き返したのに気付き、容赦なくとどめを刺すオープニングのシーンから始まり、陰惨な暴力、殺人シーンがこれでもかと続く。試写会では早々に席を立った人が多く、製作会社も暴力シーンのカットを監督に求めたそうだ。

しかし、大半がギャング同士の内部抗争によるそれらの事件がなぜ起きたのか、そこに至るまでの過程を冷徹かつ丁寧に描くことで、客観的でリアルな人間ドラマとしての価値を獲得していると言えるだろう。

ジョー・ペシ演じるトミーが突然キレるシーンも怖いが、何と言っても、ジミー役のデニーロが微笑を浮かべながら、視線の先の仲間を殺す決意を固めるところがゾクゾクする。ジャンプカットを多用したテンポ感良い映像表現に加え、残酷なシーンと不思議にマッチする音楽も印象的だった。

9月17、19日 ジョグ10キロ

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2017/09/16

『超高速!参勤交代 リターンズ』

Returns2016年、製作委員会。佐々木蔵之介、深田恭子、伊原剛志ほか。アマゾンの紹介文。

江戸時代、老中・松平信祝の差し金により幕府から突然参勤交代を命じられた磐城国(現在の福島県いわき市)の湯長谷藩。金も人手も時間も無い中、知恵と工夫でなんとか江戸への参勤を果たすが、故郷へ帰る「交代」までが「参勤交代」。藩主の内藤政醇率いる一行は、湯長谷を目指し江戸を出発する。
あとは帰るだけ、と思ったのも束の間、その道中、湯長谷で一揆が起きたことを耳にする。
政醇たちに打ち負かされた信祝が、さらに大きな権力と最強の刺客を手に入れ、湯長谷藩を壊滅させようと逆襲を始めたのだった。一揆を収めるためには、2日以内に藩に帰らなくてはならず、さらに「交代」には大名行列も必要になる。
彼らは行きの倍の速さで走り、宿役人の目を晦ましながら、命からがら湯長谷に辿り着くが、すでに城は乗っ取られ、田畑は踏み荒らされた後だった――。城を取り巻くおびただしい数の幕府軍、対する湯長谷藩はたったの7人。ふたたび絶対絶命に陥った湯長谷藩。果たして彼らは城を取り戻し、民を守ることができるのか――?(引用終わり)

「リターンズ」は前作の面々が戻って来たというのと、江戸から磐城への帰路での出来事という二つの意味をかけたものだろう。今回は往路の倍速、牛久から湯長谷までの40里を2日で戻るという、ウルトラマラソンを2日連続して走るような強行軍となるが、前作同様の武士たちがただ走っているだけの場面はほとんどカットして、信祝一派との戦いを軸にしたストーリーとしたのは正解だろう。

全体的には平易な勧善懲悪もので、節目節目では迫力あるチャンバラシーンが登場するし、いずれもひと癖ある藩士たちの小ネタも相変わらず面白く、エンターテインメント時代劇としてよく出来ている作品だと思う。ただ、最後の幕府軍対湯長谷藩七人の侍(プラス猿一匹・笑)の合戦シーンの意外な決着には拍子抜けしてしまった。

さて、自分自身の次回街道走りもそろそろ計画しなくては…(笑)

9月15日 ジョグ10キロ

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2017/09/13

『パルプ・フィクション』

Pulpfiction1994年、米。クエンティン・タランティーノ監督。ジョン・トラヴォルタ、ブルース・ウィリス他。Yahoo! 映画の紹介文。

「レザボアドッグス」のQ・タランティーノによる異色のバイオレンス・アクション。強盗の計画を立てているカップルを導入部に、盗まれたトランクを取り戻そうとする二人組のギャング、ビンセントとジュールス。ボスの情婦と一晩のデートをするハメになるビンセント。ボクシングの八百長試合で金を受け取るボクサーのブッチ。誤って人を殺し血塗れになった車の処理に右往左往するビンセントとジュールス。ギャングのボス、マーセルスを軸としたこれらの物語がラストに向けて収束していく……。(引用終わり)

基本的にはギャングのボス、マーセルスを軸としたストーリーなのだが、複数のエピソードが時系列を入れ替えたうえで交錯するような構成となっていて、多少頭の整理をしないと全体の流れが理解できない。

それぞれのエピソード自体、「瓢箪から駒」の連続というか、ほとんど予想もつかない展開ばかりなのに加えて、途中で止まっていた前のシーンの続きが始まったりするので、観客は意表を突かれ続けることになる。ただ、それは決して不愉快なものではなく、この先一体どうなるのかという期待感と、新鮮な驚きをもたらしてくれるところが、多分この作品の最大の魅力なのだろう。

強盗、殺人、暴行と、何でもありの陰惨な内容にもかかわらず、どこか乾いた笑いを誘うところも不思議だ。血塗れになった車と死体の処理に成功するシーンでは、首尾よくいってこちらまで思わずホッとしてしまう。殺人、死体遺棄という重大な犯罪行為であるにもかかわらず、である。

それはもう、タランティーノ監督お得意のマジックと言うしかないだろう。登場人物たちの一見どうでもいいような会話とか、食事や音楽などのディテールもなかなか気が利いている。好き嫌いは分かれるだろうが、結構コアなファンがいるらしいのも頷ける。

9月13日 ジョグ10キロ

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2017/09/07

『チャイナタウン』

Chinatown1974年、米。ロマン・ポランスキー監督。ジャック・ニコルソン、フェイ・ダナウェイ他。Wikipedia の紹介文。

ロサンゼルスの私立探偵ジェイク・ギテスは「モーレイ夫人」と名乗る女性に依頼され、市の水道局幹部であるホリス・モーレイの身辺調査をすることになった。尾行の結果、ジェイクはホリスが若いブロンドの女性と逢っている様子を写真に撮影する。だがホリスのスキャンダルはすぐに新聞にすっぱ抜かれ、更にホリス自身も何者かに殺害されてしまった。しかも最初にモーレイ夫人を名乗って調査依頼してきた女は別人と判明する。ジェイクは独自に事件の真相に迫ろうとするが、そこで見たのはロサンゼルスの水道利権を巡る巨大な陰謀と、ホリスの妻イヴリン、そして彼女の父である影の有力者ノア・クロスを中心とした人々の、愛憎半ばする異常な過去だった。(引用終わり)

1930年代のロサンゼルスを舞台に、全篇に亘ってフィルム・ノワール的な虚無感と退廃感が漂う、ハードボイルド・ミステリーの名作とされる。殺人事件の背景として、ロサンゼルスという都市にとっての生命線である水道を巡る利権争いが描かれ、社会的な奥行きのある作品となっている。

大まかなストーリーはそれほど複雑ではないけれど、意味深長な伏線が数多く仕掛けられ、それらがいずれも後で重要なカギとなって回収されるなど、一度観ただけではなかなか全体の繋がりが理解できない。実際、主人公自身も大きな勘違いをして、それが因縁のチャイナタウンでの悲劇的な結末を招くという、とてもシニカルで、ある意味異様な作品である。

主演のジャック・ニコルソンがニヒルな探偵役を好演している。彼の主演作は『カッコーの巣の上で』『アバウト・シュミット』『恋愛小説家』『最高の人生の見つけ方』等、いろいろと観てきたが、多様な役柄にきっちり対応できる名優である。トランペットのソロに哀愁感が溢れるジェリー・ゴールドスミスの音楽が、映画の内容にぴったり合っている(直前に差し替えたものらしいが)。

9月6日 ジョグ10キロ

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2017/09/04

『二重生活』

Doublelife2016年、製作委員会(フィルムパートナーズ)。門脇麦、長谷川博己他。公式サイトの紹介文。

大学院で哲学を学ぶ平凡な学生、珠。同棲しているゲームデザイナーの恋人、卓也との日々は、穏やかなものだった。ところがそんな毎日は、担当教授から修士論文の題材に“哲学的尾行”の実践を持ちかけられたことで一変する。それは、無作為に選んだ対象を追ういわば“理由なき尾行”。半信半疑ではじめた、隣人、石坂への尾行だったが、彼の秘密が明らかになるにつれ、珠は異常なほどの胸の高鳴りを感じ、やがてその禁断の行為にのめりこんでいく―。(引用終わり)

小池真理子の同名小説の映画化。「哲学的尾行」というのは、フランスの女性アーティスト、ソフィ・カルのアイデアというが、ここでは「尾行」という行為そのものより、むしろ、多かれ少なかれ誰しもが抱えている「秘密」と、その露見がテーマという気がする。珠の修士論文に次のような文章がある。

平凡で穏やかで、裏切りも隠し事も嘘もない、ひたすら公平な愛だけで満たされている人生なんてどこにもない。人は苦しみからも逃れられない。ほんの少し、その苦しみを軽くしてくれるもの。きっとそれが秘密である。

近所でも評判のセレブ一家の主である石坂と、余命2か月の老母を抱える担当教授の篠原が珠の尾行対象となるが、それぞれ意外な秘密を抱えていることが分かる。珠自身もまた、秘密にしていた尾行行為を卓也に知られてしまう。そうした「二重生活」の露見が、珠の生き方に大きな影響を及ぼすことになる。

しかし、それは決してネガティブなものではなく、過去の恋人との経緯を引き摺って、卓也とさえ表面的な付き合いしか出来なかった珠を、一歩前に踏み出させるものとなる。ラスト近くで、至近距離で歩いている卓也に全く気付かず、また尾行していた(?)篠原の姿を一瞥しただけで、微笑みながら再び歩き始めた彼女の姿に、新たな人生のスタートが感じられた。

門脇麦が「本当にどこにでもいそうな平凡な女子大生」を好演。リリー・フランキーの人生を達観したような哲学教授ぶりも良かった。また、背景の雑音でしかなかった隣人の話し声や救急車のサイレンが徐々に大きくなって、次の展開に繋がっていく音声処理が面白かった。

9月4日 ジョグ6キロ

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