「藤村実穂子さんがグラミー賞獲得」
以前、内田光子がピアノ伴奏を務めたドロテア・レシュマンのCDが、グラミー賞「最優秀クラシック・ヴォーカル・アルバム部門」を受賞した際のことについて書いたが、日本人の身内贔屓、島国根性ぶりは今年さらにエスカレートしている。
日本人メゾソプラノの藤村実穂子が独唱者の一人として参加したCDが、グラミー賞「最優秀合唱演奏賞」を獲得したことに関する報道である。「藤村実穂子さん参加のアルバムにグラミー賞」という見出しの讀賣新聞などはまだしも、共同通信や中日新聞の見出しは明らかにミスリーディングだ。
事実関係を正確に書くとこうなる。
日本人メゾソプラノ歌手の藤村実穂子さんが<8人の独唱者の一人、第1アルト歌手として>参加した<グスターボ・ドゥダメル指揮ロサンゼルス・フィルハーモニック、ロサンゼルス・マスター・コラール(合唱指揮:グラント・ガーション)、パシフィック・コラーレ(合唱指揮:ロバート・イスタッド)、ロサンゼルス児童合唱団(合唱指揮:フェルナンド・マルヴァー=ルイス)、ナショナル児童合唱団(合唱指揮:ルーク・マッケンダー)による>アルバム「マーラー交響曲第8番『千人の交響曲』」が、今年のグラミー賞最優秀合唱演奏賞を獲得した。
ここから< >の中を省略した次のような記述が、日本メディアの記事となっているのだ。
「日本人メゾソプラノ歌手の藤村実穂子さんが参加したアルバム「マーラー交響曲第8番『千人の交響曲』」が、今年のグラミー賞最優秀合唱演奏賞を獲得した」 → 「藤村実穂子さんがグラミー賞を獲得した」
受賞対象となった「合唱」について全く記述がないこと自体がそもそも問題である。藤村実穂子が演奏者の一人として参加しているのは事実だが、それを言うならロサンゼルス・フィルハーモニックの楽員の中にも日本人奏者がいた可能性が大きいのだ。
楽団の名簿によれば、アキコ・タルモト(アシスタント・コンサートマスター)という日本人ないし日系人と思われる名前が見え、もし彼女も加わっていたとしたら、「日本人(日系人)ヴァイオリニストが参加したCDがグラミー賞を受賞!」という記事があっても不思議ではないことになる。
日本人アーティストの活躍は歓迎すべきことではあるけれども、それを過大に伝えがちなメディアの偏向ぶりには常に注意が必要だ。さもなければ、国営メディアの支配下にあるロシア国民を嗤うことなど出来はしないのだ。
(下線部いずれも筆者)
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コメント
アキコ・タルモトさんのお父様は京都大学交響楽団で活躍していたようです(楽器不明)。こうなったら「京都大学交響楽団OBのお嬢さんがグラミー賞を獲得!!」という報を、こちらで発して欲しいです(笑)。
投稿: frun 高橋 | 2022/04/06 15:02
frun 高橋さん
ちょっと調べてみたところ、
昭和36年卒で「樽本庸彦」という
ヴィオラ奏者がいます。
あまりない苗字で年齢的にも相応なので、
ほぼ間違いないかと思います。
それよりも、ノーベル賞を受賞した
OBがいらっしゃいました!
昭和41年卒の本庶佑氏で、フルートを
吹いておられました。
同じくフルートのハロラン芙美子さんも
その年に卒業されています。
遡って昭和27年には、これまたフルートの
河合隼雄氏が卒業されました。
投稿: まこてぃん | 2022/04/08 09:28