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2022/03/13

ブラームス交響曲第3番冒頭のティンパニ

が、ほとんどの場合楽譜どおりに演奏されていないとだいぶ以前に書いた。自分自身、ドホナーニがクリーヴランド管を振ったCDで初めて気づかされたことなのだが、今回それ以上に完璧に楽譜どおりの演奏に出くわした。

それは、今年1月下旬に開催されたNHK交響楽団第1949回定期公演で、先月13日に「クラシック音楽館」で放送されたものを視聴した。指揮はジョン・アクセルロッドという米国人である。

コロナの水際対策で外国人アーティストが来日不能になる中、それ以前から日本に滞在していた彼はそれを奇貨とし、ビザが切れるまでの間を活用して、5つの楽団の計21公演を指揮したとのことである。ちなみに「アクセルロッド」って、何だか自動車部品みたいな名前だなと思って検索してみたら、実際にそういう名前の部品があったので驚いた。

ちょっと話が逸れたが(笑)、その彼が指揮したブラームスの交響曲第3番第1楽章冒頭のティンパニが、完全に楽譜どおりの演奏だったのである。今回の演奏ではこれも楽譜どおり提示部が繰り返されていて、繰り返し後の映像においては3小節目から6小節目の頭にかけて、何とカメラがティンパニの久保晶一氏をアップで、それこそ「これ見よがし」に映しているのだ。

事情を知らないとなぜここでティンパニがアップになるのか理解に苦しむところだが、譜面ではトレモロとなっていない四分音符がきちんと叩き分けられているのが一目瞭然なのである。製作サイドとしてはそこに気づいて欲しかったという意図があったのかもしれないが、本稿執筆時点でネット検索しても何もヒットしなかった。

ドホナーニですら、4小節目と6小節目の四分音符は若干明瞭さを欠いているけれど、今回はそこも大変ハッキリしている。その結果として、トレモロで続けてしまう一般的な演奏では味わえない、6(3×2)拍子独特のリズミックな躍動感が生じて、音楽が一層生き生きとしたものに感じられるのだ。

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