リヒター盤「ロ短調ミサ」を再聴
年明けから聴き始めたバッハの宗教曲で一番最初に聴いたのが、「ロ短調ミサ」BWV232だった。解説書によれば「バッハの教会音楽家としての創作活動の総決算」であり、「中世以来の宗教音楽の発展が到達した1つの頂点を形成する傑作」ということで、「マタイ受難曲」と双璧をなすバッハの宗教音楽の二大傑作と言えるようだ。
キリストの受難の物語を音楽劇にした受難曲と違い、ミサ曲は神やキリストを賛美し、信仰を誓うといった定型的な典礼文に曲をつけただけのもので、テキストを読みながら聴いても、キリスト教や聖書に縁のない東洋人にとってはピンと来ない。
しかし、逆に言えば純粋に音楽だけを聴いていれば良いとも言え、本作はそういう鑑賞態度にも十分に応えてくれる。トランペットが活躍する華やかな曲があるかと思えば、アルトがしみじみとした独唱を聴かせるアリアもありといった具合に、曲想や編成は変化に富み、飽きることがない。
リヒターの演奏はここでも鋭角的で、生々しい迫力に満ちている。何度も繰り返し聴くには向いていないかもしれないが、一つの規範としての地位を有していることは間違いない。
ちなみに、手元にある10枚組BOXに収められているのは、1969年5月に東京文化会館で行われた伝説的な名演奏のライヴ録音で、その演奏に接した人々の体験談は枚挙に遑がないほどである。
今回改めて聴いてみて、さらに大きな感銘を受けた気がするのは、マタイ受難曲のCDを何種類か聴いて、バッハの宗教曲の音楽語法にある程度慣れたということもあるが、自分自身に残された時間がさらに少なくなってきたという自覚によるところも大きいという気がする。
同曲のCDを他に2種類入手したので、そちらも楽しみだ。
| 固定リンク
« 来月には次の抗癌剤へ | トップページ | 人形供養 »
この記事へのコメントは終了しました。
コメント