「ロマンチック」第2楽章終結部のヴィオラにトリル!
16日に放映されたNHK「クラシック音楽館」は、ファビオ・ルイージが指揮したN響第1943回定期公演ほかで、メインはブルックナーの交響曲第4番「ロマンチック」であった。
弦は7—6—5—4—3プルト、管は標準2管にHnとTpを各1名補強しただけという、ブルックナーにしては比較的小さめの編成。そのせいもあってか、ダイナミックな音響で圧倒するというよりは、インタビューでマエストロが語っていたとおり、伸びやかな歌心を基本に、透明感のある響きが美しい、南欧風の色彩の濃い演奏だったと思う。
ただ、1箇所だけ「おや」と思ったところがあって、第2楽章の終結部、243小節から245小節にかけてヴィオラが長いホ音を奏する箇所に、何とトリルがついていたのだ。それも、協奏曲のソロパートみたいに、最初はゆっくりと、それから次第に細かな動きになって、いかにも「ここにトリルがありますよ」と主張するかのようだった。
音楽之友社刊のポケット版スコア(ノーヴァクによる第二稿1878/80)の該当箇所をみると、確かにトリルの記号があるものの、「ブルックナー自身による括弧」が添えられていて、実際にトリルで演奏するかどうかは指揮者の解釈次第ということのようである。
今までこの曲の演奏は数えきれないほど接してきたが、この箇所のトリルを意識したことはかつてなかった。そこで、例によってうちにあるCDとLP、合わせて9種類を片っ端から聴いてチェックしてみた。録音年代の古いものから順に次のとおりである。
ワルター/コロンビア響(1960)
カラヤン/ベルリンフィル(1970)
ベーム/ウィーンフィル(1973)
ケンペ/ミュンヘンフィル(1976)
ハイティンク/ウィーンフィル(1985)
チェリビダッケ/ミュンヘンフィル(1988)
バレンボイム/ベルリンフィル(1992)
ヴァント/ベルリンフィル(1998)
バレンボイム/シュターツカペレ・ベルリン(2008)
この中では唯一、ワルター盤がトリル付きで演奏しているが、なぜかそれは最初の1小節のみで、2小節目からはトリルなしで演奏している。楽譜では3小節目の四分音符までタイで結ばれているから、そこまでトリルを続けるのが普通だと思うのだが、そこはワルターなりの考えがあったのだろう。
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コメント
N響の番組は見なかったのですが(日曜は笑点見ながら飲み始め、早々に就寝)、2mvラストのVlaトリルは今まで気づきませんでした。ルイージはフィルハモニア・チューリッヒとの同曲でもやっていますね。私もちょっと他の盤で探してみます。
とりあえずフィルハーモニア・チューリッヒとの4番(2mv)はこちら。
https://www.youtube.com/watch?v=tZLO9c1LgRI
投稿: frun 高橋 | 2022/01/22 14:00
日本のアマオケ、富山シティフィルはルイージと同じ解釈ですね(^^;指揮は坂本和彦。
再生34'30あたりから
https://www.youtube.com/watch?v=_cYL184xJpI
投稿: frun 高橋 | 2022/01/22 14:11
クーベリック・VPOもルイージと同じ。再生34'00あたりから。
https://www.youtube.com/watch?v=W57LY4D-4Fo
ワルターのような解釈は他に見つからず(^^;。
投稿: frun 高橋 | 2022/01/22 14:15
frun 高橋さん
コメントお待ちしておりました。
ルイージはチューリヒでもN響と同様、
言葉は悪いですが「これ見よがし」の
トリルをかけていますね。
しかし、こうでもやらない限り、
「ホ-ヘ」の半音トリルということもあって
普通はなかなか気が付きませんね。
ましてやワルターのように途中で止められると。(笑)
投稿: まこてぃん | 2022/01/23 09:38
クーベリックのトリル指示はルイージのような「これ見よがし」ではないですね。ワルター盤は私も愛聴してきましたが、ここは気づかなかったです。まこてぃんさんの「耳」は凄い!
投稿: frun 高橋 | 2022/01/23 14:28
frun 高橋さん
いえいえ。戌年生まれで「鼻」には多少自信がありますが、
決して「凄い耳」の持ち主なんかではありません。
今回のルイージ&N響の「これ見よがし」というか
「あざとい」(さらに言葉が悪くなっている・笑)ほどの
あのトリル演奏を聴いて改めてチェックしなければ、
ワルター盤のトリルにも気づかないままだったと思います。
投稿: まこてぃん | 2022/01/24 09:11