米国旅行記 その10
15日月曜日はクリーヴランドからニューヨークへ移動。JFK空港から市内への移動に意外に時間がかかったりで疲れてしまい、夕方にホテル近くの再開発エリアに出かける予定は取り止めて休養に努めることにした。
16日火曜日も午前中は体調が思わしくなく、昼過ぎまでホテルの部屋で休養。午後は市内の日系クリニックでPCR検査を受ける。雑居ビルのその階だけは日本にいるような不思議な感覚だった。検査はすぐに済み、翌日午後には厚労省所定書式の陰性証明書が発行される。料金は300ドル。日本国内ではそれよりも高いところが多く、まだ良心的な方だろう。
一旦ホテルに戻って休んでから、19時からのメトロポリタンオペラ公演に出かけた。入り口でコロナワクチンの接種証明書の提示を求められたが、見慣れないはずの日本政府書式にもかかわらず短時間のチェックでOKとなった。大丈夫かいな。
演目は「トゥーランドット」。ゼフィレッリ演出の名舞台である。作品についてはこちら。当夜の指揮はマルコ・アルミリアート、トゥーランドットはアメリカのソプラノ、クリスティーン・ガーキー、カラフはアゼルバイジャン出身のテノール、ユシフ・エイヴァゾフ(ネトレプコの夫)である。
渡航前にMETライブビューイングの録画を再度観て予習していたが、絢爛豪華な舞台の迫力はやはりナマならでは。2次元の画面では分からない奥行きまで加わった舞台の立体感や、細部まで緻密に作り込まれた装置や衣裳の美しさに、ただただ圧倒された。
歌手陣では、タイトルロールのガーキー(Goerke というドイツ風の名字なので、実際の発音は「ゲルケ」に近いか)が若干軽量級で、ニーナ・ステンメのような鬼気迫る冷酷さを感じさせなかったのは残念。
一方、カラフのエイヴァゾフは伸びのある朗々とした声の持ち主で、第3幕冒頭の聴きどころ「誰も寝てはならぬ」では万雷の拍手喝采を浴びていた。
この名舞台を見るだけでも今回の旅行の価値は十分あったと思わせる、おそらく生涯最後の貴重な体験であった。
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