米国旅行記 その8
この日のお目当てのもう一つは、ホーフブロイハウス・クリーヴランドというビアホールである。旅行のプランを練っているとき、クリーヴランド市内の地図を何気なく眺めていて、Hofbräuhaus という文字が目に飛び込んできたときは驚いた。
ミュンヘンにある有名な醸造所直営ビアホールの支店が、まさかアメリカにあるとは思いもしなかった。調べてみると全米で6店ほどあるようだが、そのひとつがクリーヴランドのダウンタウンにあるのだ。
実は若い頃に一度ミュンヘンの本店に行って本場のビールを堪能したことがあって、それ以来の体験が出来ることに胸躍る思いがした。肝臓に転移した癌のため、今は年に一度だけ正月に飲む缶ビール1本で我慢しているが、この際そんなことは言っていられない。冥途の土産の一杯にと、店が混み始める前の明るいうちから店へ出向いた。
濾過していないため少し濁った感じのラガービールだが、ホップがよく効いた深い味わいはまさに五臓六腑(とりわけ肝臓に・笑)に染み渡った。フライの盛り合わせをアテにチビチビ飲っていたら、店内がどんどん混んできて、最初は両隣空席だったバーカウンターがほぼ満席になった。
客同士、マスクなしでの賑やかな談笑が盛り上がるに及んで、これはマズいと予定どおり1杯だけで早々に退散することにした。写真は自分へのお土産に買ったビアグラス。そのうちこれでビールを味わえる日々がやって来るが、それはもう抗癌剤治療を断念したあとということになる。
ホテルに戻る途中、Playhouse Square という劇場街を通った。交差点の真ん中に吊り下がっているのは、GEシャンデリアと呼ばれる電飾である。いかにもアメリカ!という風景だ。
さて、ホテルに戻って部屋のTVでニュースを流していたら、今日予定されていたクリーヴランド管弦楽団のコンサートが、楽員がコロナに感染した可能性があるため、大事をとってキャンセルになったとの報道が飛び込んできた。自分が行く予定の翌日曜のコンサートは、コロナ検査の結果が陰性という条件付きで、現時点では予定通り開催されるとのことだった。
おいおい。まさにそのコンサートのために、これまで苦労してクリーヴランドまでやって来たというのに。しかし、今さらジタバタしてもどうしようもない。自らの運を信じて床に入ったが、時差ボケに加えて様々な思いが去来してなかなか眠りにつけなかった。
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