『地図帳の深読み 100年の変遷』
今尾恵介著。版元の紹介文。
100年以上の歴史を持つ帝国書院の書庫に眠る大正や戦前戦後の地図帳を、今回も今尾氏ならではの軽妙洒脱な筆致で「深読み」します! 日本一高い山、日本の東西南北端、地名、国名、国旗、国境など…現代の地図と読み比べると、あらゆる部分が変わっていることに気づかされます。各時代の地図帳を「深読み」すると、地図帳が作られた当時の社会情勢、時代背景がまざまざと浮かび上がってきて、歴史好きな方にも読み応えがある一冊に仕上がりました。皆さんが学生時代に使っていた頃の地図帳も登場するかもしれません。家の奥に眠るあの地図帳、今もう一度繙いてみませんか。(引用終わり)
以前に読んだ第1弾に続き、今回はさらに時間軸、歴史を絡ませた興味深い内容になっている。マニアックの度が更に進んだとも言えるが。(笑)
実は自分も古い地図を眺めるのが好きで、特に新旧の対比が容易なこのサイトを見ていると時間が経つのを忘れる。もともと旧街道や廃線となった鉄道がどこを通っていたかを調べるのが目的だったはずが、周辺の市街地や交通網、河川や海岸線の変化を見ていると興味が尽きないのである。
本書ではそこに著者の歴史、産業、政治、経済など各般に亘る該博な知識を動員して、まさに新旧の地図帳を俯瞰するような「深読み」が展開されていて、意外な発見に驚かされることが多かった。そのうちの歴史の部分については、世界史教諭の奥様が知識を授けてくれたからだと、「あとがき」の中で種明かしされているのが微笑ましい。
本書の内容から、ひとつだけ身近な場所での例を挙げれば、大阪府の北端に大小二つのウサギの耳のようになった部分がある。そのうち東側の小さな耳は以前はなかったが、昭和33年4月に京都府南桑田郡樫田村がまるごと大阪府高槻市に編入されたもので、同時に京都府亀岡市の一部が大阪府豊能郡東能勢村に編入されたことで、左側の耳の付け根の部分が太くなったという。
では、なぜそれが「身近な場所」かと言えば、前者はポンポン山のすぐ西側、後者は妙見山のすぐ近くということで、以前何度か走りに(登りに)行ったことがあるからだ。編入の背景となった旧丹波国と摂津国の境界を巡る歴史的経緯等は、本書を読むまで全く知らなかった。
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