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2021/09/17

『すばらしき映画音楽たち』

Score2016年、米。KINENOTE の紹介文。

無声映画の時代から映像と切っても切れない関係にある映画音楽。1933年「キング・コング」では映画音楽に初めてオーケストラを起用。1960年代には独特なオーケストラ音楽に変容していき、現代では独創性が求められオーケストラと電子音が組み合わされてきた。本作では約40名の映画音楽作曲家にインタビュー。時代に合わせ進化を遂げ、名作映画を支えてきた映画音楽の創作秘話に迫る。(引用終わり)

映画音楽の歴史を振り返りつつ、作曲から編曲、演奏、そして映像に合わせた編集までの舞台裏を紹介した、大変興味深いドキュメンタリー作品である。

ロンドンのアビーロード・スタジオにおける録音風景も紹介されていて、初めて見るスタジオ内部の映像に、「これがあの多くの名録音を生んだ第1スタジオか」と目が釘付けになった。

紹介にあるように、映画音楽は映像と不可分の関係にある。『サイコ』のシャワーの場面や『ジョーズ』の水面下の映像は、あの音楽がなければ全く怖くないだろうし、『スター・ウォーズ』や『E.T.』は、例の有名なテーマ音楽抜きには映画自体が存立し得ないとさえ思える。

クラシック音楽ファンとして嬉しかったのは、映画音楽の世界ではオーケストラの力がいまだ健在であるという点だ。もちろん、1970年代後半以降、シンセサイザーなど電子音楽の登場による変化はあるものの、いまも大編成の管弦楽によるナマの音響が大きな効果を上げているのだ。

アカデミー賞受賞作曲家であるハンス・ジマーは、「映画音楽の担い手は、日常的にオーケストラを使っている最後の人種だ。オーケストラが消滅すれば、文化に大きな亀裂が入ることになるだろう。人類にとって大きな損失だと思う」と語っている。

「日常的にオーケストラ音楽を聴いている最後の人種」(笑)の一人かもしれない自分としては、大いに納得のいく言葉である。

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コメント

目から鱗のドキュメンタリーでした。
作曲家と登場する映画がやたら多くて・・・
ハンス=ジマーが勉強になった記憶があります。

映画音楽って、映画がなければ存在し得ない、20世紀に生まれた芸術。
メロディーを聴くだけ、その場面が浮かんでくる。
不可分の関係で、しょぼい映画を音楽が救うことは度々。
逆はないけれど(^^!

投稿: ケイタロー | 2021/09/17 21:04

ケイタローさん
以前どこかで目にしたホームシアターに関する
ある記事の中で、「よほど大画面にしないと
映像が音楽に負ける」といった指摘がありました。
仰るとおり映画は20世紀になってからの産物。
技術的には音楽の方が遥かに完成の域に達している、
ということではないかと思います。

投稿: まこてぃん | 2021/09/18 20:44

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