『インセプション』
2010年、米。クリストファー・ノーラン監督。レオナルド・ディカプリオ主演。公式サイトの紹介文。
ドム・コブ(レオナルド・ディカプリオ)は人の心が無防備な状態、つまり夢を見ている間に潜在意識から貴重な秘密を盗み出すスペシャリスト。その特異な才能は産業スパイが暗躍する世界で重宝される一方、そのために彼は最愛のものを奪われ、国際指名手配されてしまう。
そんな彼に失った人生を取り戻すチャンスが。そのためには「インセプション」と呼ばれる、アイデアを盗むのとは逆に相手の心に“植え付ける”、およそ不可能とされる任務を成功させる必要があった。もしコブと仲間たちが成し遂げたなら、それは完全犯罪を意味する。だがいかに綿密に計画し、様々な特殊能力があったとしても、行動がすべて相手に読まれていては太刀打ちできない。そんな強敵が現れる予感を、コブだけが感じ取っていた。(引用終わり)
「夢のまた夢」という言葉がある。現実感に乏しい話の譬えに使われるが、本作はその逆というのか、3つの階層にわたって大変リアルな夢を「設計」し、無意識のうちにターゲットとなる人物の精神を操作しようという、とんでもない計画的犯罪をテーマにしたものだ。予めストーリーを読んでみたけれど、最初は何が何やらさっぱり分からなかった。
その計画が成功して、主人公は念願どおり自宅に帰ることが出来、長年会えなかった子供たちを抱き締めるところでエンディングとなる。しかし、それは本当に現実なのか、まだ夢の中なのか。最後の最後でその大切なヒントとなる映像が唐突にカットされていて、公開以来議論の的となっているが、答えは明らかではないかと思う。
ひとつは「自分がその場所までどうやって来たのか説明できるか」ということ。もうひとつは、それまで一度もこちらを振り返ることがなかった子供たちが、初めて主人公の方に顔を向けたことだ。
『すばらしき映画音楽たち』で紹介されたとおり、ハンス・ジマーが担当した音楽の演出効果たるや絶大なものであるが、それ以上に実写にこだわった映像の迫力に圧倒された。
どう見てもVFXを駆使した映像にしか思えないLA市内を爆走する機関車や、無重力状態で回転するホテルの廊下での格闘、雪山での雪崩など。そのどれもが紛れもない実写なのである。具体的な撮影方法は特典映像で紹介されている。
ところで、本作の主要部分であるターゲットとの壮絶な「戦い」は、実際にはシドニーからLAまでのフライトの間に完結している。手に汗握る攻防戦が終わり、登場人物たちはジャンボジェットの2階席で眠りから覚め、何食わぬ顔をして飛行機から降りていくのである。
東洋人の一人の感想としては、中国の故事「邯鄲の夢」を連想するし、また、時間の経過の違いですっかり老人になったサイトー(渡辺謙)は、浦島太郎そっくりではないかと思った。
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