『おらおらでひとりいぐも』
2020年、製作委員会。沖田修一監督。田中裕子主演。公式サイトの紹介文。
1964年、日本中に響き渡るファンファーレに押し出されるように故郷を飛び出し、上京した桃子さん。あれから55年。結婚し子供を育て、夫と2人の平穏な日常になると思っていた矢先…突然夫に先立たれ、ひとり孤独な日々を送ることに。図書館で本を借り、病院へ行き、46億年の歴史ノートを作る毎日。しかし、ある時、桃子さんの“心の声=寂しさたち”が、音楽に乗せて内から外から湧き上がってきた! 孤独の先で新しい世界を見つけた桃子さんの、ささやかで壮大な1年の物語。(引用終わり)
芥川賞を受賞した若竹千佐子の同名小説を映画化。タイトルは東北弁で「おら(私は)おらで(私で)ひとりいぐも(一人で生きる)」といった意味である。「いぐ」は「生きる」でもあれば、「行く」でもあるし、「逝く」かもしれない。
全篇にわたって、現在と過去を自由に行き来する形で、いくつものエピソードが淡々と描かれていく。いずれも他愛のないものであるが、それらの積み重ねによって、桃子の人生を俯瞰的に把握することが出来る仕掛けになっている。
桃子の内面でせめぎあう様々な思いや自問自答を、三人の「寂しさ」(濱田岳、青木崇高、宮藤官九郎)が「心の声」として代弁するのは原作にない設定だそうだが、視覚的にも分かりやすく、映画ならではのアイデアだ。
桃子を演じたのは実年齢65歳の田中裕子で、役の設定である75歳より若く見えてしまうきらいはあるものの、健気に生きる桃子の日常を飄々と、しかし内面の葛藤を交えてうまく演じている。桃子の若い頃を演じた蒼井優も、まるで新人のような初々しさで好演していた。
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