『ソフィーの選択』
1982年、米。アラン・J・パクラ監督。メリル・ストリープ、ケヴィン・クライン、ピーター・マクニコル他。WOWOWの紹介文。
米南部の地方からNYに上京した作家志望の青年スティンゴは、下宿先で深い愛情で結ばれた1組の男女と知り合う。ハーバード大卒の生物学者ネイサン。反ナチスの信念を貫いて戦時中に殺されたという大学教授を父に持ち、自らも強制収容所での過酷な生活を生き延びた経験を持つポーランド人女性ソフィーだ。魅力的な人柄の2人に魅せられたスティンゴは彼らと親交を結ぶが、実は2人にはそれぞれ、思いがけない秘密が隠されていた。(引用終わり)
反ナチスをテーマとした作品はハリウッド映画の定番のひとつであるが、『シンドラーのリスト』などとは異なり、本作では残虐なシーンはほとんど登場しない。それよりも、強制収容所で筆舌に尽くせぬ悲惨な体験をしたソフィーという女性の、その後の人生に焦点を合わせた作品と言える。
ポーランド訛りの英語でのソフィーの長回しのモノローグが本作最大の見せ場で、それに加えて強制収容所シーンでの極端に痩せた役作りといい、プロの役者根性を発揮したメリル・ストリープは本作でアカデミー主演女優賞を受賞、彼女の決定的な出世作となった。
ひとつ誤解していた点があって、紹介文にあるようにソフィーの父は前半では「反ナチス」とされていて、ついユダヤ人だろうと思い込んでいたのだ。娘のソフィーも当然ユダヤ人で、それゆえに強烈な反ナチス感情を抱くユダヤ人のネイサンに助けられたのをきっかけに、二人は同棲することになったのだろうと思って観ていたのだが、真相はそんな単純なものではなかった。
それでは、実は非ユダヤ人でカトリックだったソフィーがなぜ強制収容所に連行されたのか。よく分からないまま観終えたのだが、後で調べてみたら、アウシュヴィッツに収容されたのはユダヤ人が90%で、それ以外にも政治犯、ロマ(ジプシー)、障害者、聖職者といった人々も収容されていたそうだ。
そして、彼らの間にはドイツ人を頂点として、西・北ヨーロッパ人、スラブ人、最下層にユダヤ人などといったヒエラルキー(序列)が形成されていたというのである。
その辺りの複雑な事情を知った上で観れば、ソフィーとネイサンの関係なども別の視点から見られたかもしれない。しかし、2時間半の本作ともう一度最初から向き合う気力は、もう今の自分にはないというのが正直なところで、それほど重い内容の作品だということは間違いない。
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