『キネマの神様 ディレクターズ・カット』
原田マハ著。版元の紹介文。
『キネマの神様』映画化に際し山田洋次監督は自身の若き日を重ねて脚色。そのシナリオから著者が新たに生み出すもうひとつの物語。(引用終わり)
原田マハ著の小説『キネマの神様』を原作とした映画『キネマの神様』の脚本を原作とした小説である。映画やドラマの脚本がノベライズされることはよくあるけれども、その元となった作品の作者自身がノベライズを手掛けたというのは珍しいだろう。
本作の意義について、著者は「まえがき『歓び』」の中で次のように述べている。
脚本は原作から大幅に変更されていた。まったく別物といっていいくらいである。けれど、だからこそ、私は嬉しかった。原作をただなぞらえて映像化するのではなく、原作で最も重要なふたつのエッセンス、映画愛と家族愛が抽出されて深められている。その上で、(山田洋次)監督が完璧に自分自身のものにしている。原作に対する深い読解と敬意、真の創造力がなければ決してかなわないことだ。
「まったく別物」とあるけれども、主要登場人物やその役回りはほぼ原作を踏襲した上で、それぞれの過去にも焦点を当てることで各人物像に深みを生み出している。
ただ、原作でプロット上のキーとなっているブログでの遣り取りは映像化には不向きで、その代わり山田監督自家薬籠中の映画製作ネタを持って来て、「見せる」作品に仕立て直している。
これで原作、脚本ともに読み終え、あとは公開が始まった映画を観に行くばかりになった。原節子がモデルと思われる女優園子役の北川景子の活躍ともども楽しみである。
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