『キネマの神様』
2020年、製作委員会。山田洋次監督。松竹映画100周年記念作品。KINENOTE の紹介文。
ゴウ(沢田研二)はギャンブル漬けで借金まみれ。妻の淑子(宮本信子)や娘の歩(寺島しのぶ)からも見放されたダメ親父である彼が、たった一つ愛してやまないのは映画だった。ゴウ(菅田将暉)は若い頃助監督として撮影に明け暮れ、食堂の娘・淑子(永野芽郁)に恋をし、映写技師・テラシン(野田洋次郎)とともに夢を語らう、そんな青春の日々を駆け抜けた。ついに「キネマの神様」という作品で初監督を務めることになるが、撮影初日に転落事故により大怪我をし、作品は幻となってしまう。それから半世紀が経った2020年、「キネマの神様」の脚本が出てきたことから、沈みかけていたゴウとその家族は再び動き始める。(引用終わり)
自分には珍しく、あらかじめ原作を読んだうえ、さらには本作脚本のノベライズ版まで読んでいたので、筋や展開は分かったうえで、それがどう映像化されるか、各俳優の演技にどう具体化されるかという点に絞って鑑賞することが出来た。
原作からかなりストーリーを変更し、大船撮影所を舞台にした50年前のエピソードと絡めた山田監督の意図が、実際の映像を観ることで確かによく分かる。半世紀の時の経過を示すモノクロとカラーの使い分けも巧みである。
ベテランから若手実力派まで揃った俳優陣の演技は安心して観ていられたが、なかでも菅田将暉&永野芽郁コンビが演じた初々しさは、50年後の彼らの姿と対比されることで一層輝いて見えた。
原節子がモデルと思われる大女優・桂園子役を演じた北川景子は、役どころに相応しい気品と風格まで漂わせ、これまでにない新境地を開いたと言える。予想していたより出番が多かったこともあり、ファンとしては大満足の一作となった。(笑)
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
ようやく観てきました。
まだ戦後の風景が残る時代に青春を過ごし、映画をこよなく愛した昭和の男の物語。
「大きな夢、歯がゆい恋、そして挫折の青春時代」それと「老いて酒と博打に溺れ家族のお荷物になった現在」。並行して進む過去と現在の物語に山田洋次の真骨頂である家族愛や深い友情を載せ映画造りと言う主題を見事に織り込んだ作品はさすがの感でした。全編に映画愛が溢れています。昭和の街を見事に再現したセット、ロケ中に「夕陽を戻せ!」と怒鳴る鬼監督、油臭い映写室でリールを巻く映写技師。オープンカーでドライブする北川景子のサングラスとスカーフは日活の青春映画です。役者も素晴らしい。沢田研二の演技は時に志村ケンかと見まがうほど志村への哀悼が溢れていました。夜汽車に揺られる白いブラウスの北川景子は原節子の存在感でした。驚きは孫役の前田旺志郎(「まえだまえだ」の弟君)、鉄道とPC好き「オタク」を好演、後半の存在感は大きく沢田との掛け合いは秀逸でした。
そして「ニュー・シネマ・パラダイス」で締め括るあたりは絶妙、満席に近かったですがエンドロールが終ってもしばらく席を立つ人がいない映画は久しぶりでした。山田監督89歳、沢田研二73歳、宮本信子76歳。昭和の映画造りは間違いなく次の世代に引き継がれていくようです。
さて、まったく余談ですが小生日頃は神も仏も殆ど信じていませんがランナーやっていた頃は「マラソンには神様がいる。」とよく言っていましたし今もそう思っています。
投稿: ブッちゃん | 2021/08/26 11:18
ブッちゃん
お待ちしておりました。本文に匹敵する、
否、それ以上の長文コメント、有難うございます。
仰るとおりで、原作小説と映画との決定的な差は、
前者では映画は観て楽しむものであるのに対し、
後者では苦労して作り上げるものだということです。
にもかかわらず、そこに原作と同様の家族愛や夫婦愛を
織り込んだ作品に仕上がっているところは流石です。
北川景子の昭和俳優ぶり、本当に板についてましたね!
投稿: まこてぃん | 2021/08/27 20:39