香川・徳島の旅 その3 徳島
讃岐山脈越えの国道193号は意外にアップダウンが少なく、トンネルはひとつもない。山脈と言っても、山が壁のように連なっているのではなく、浸食が進んで山と谷が入り組んだ地形になっているためだろう。古くは塩江街道と呼ばれ、昔から人や耕作牛の往来が盛んだったようだ。
四国三郎こと吉野川に向かって下っていく風景に既視感がある。和歌山県北部を流れる紀ノ川流域と地形が瓜二つなのだ。それもそのはず、吉野川と紀ノ川は、紀伊水道を渡って連続する中央構造線に沿った谷あいを、東西逆向きながら紀伊水道に向かってほぼ直線的に流れているのだ。紀ノ川が上流の奈良県内では吉野川と呼ばれるのも、こうしてみると単なる偶然とは思えない。
ブラタモリ的な感想はこれぐらいにして(笑)、塩江から半時間ほどで徳島県美馬市脇町に到着。「うだつの町並み」として整備された地区は、国の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)に指定されている。
出世できずパッとしない人のことを「うだつが上がらない」と言うことがあるが、「うだつ(卯建)」とは隣家との境界に取り付けられた土造りの防火壁のことで、これを造るには相当の費用がかかったため、裕福な家しか設けることができなかったことに由来する。かつて藍の取引で栄えた脇町は、「うだつが上がった」家がズラリと並んでいるというわけである。
街並みの一角に脇町劇場(オデオン座)が鎮座している。昭和9年に芝居小屋として開業、戦後は映画館として地域住民に親しまれたが、映画の斜陽化と建物の老朽化のため平成7年に閉鎖、取り壊される予定だったところ、翌平成8年公開の松竹映画『虹をつかむ男』のロケ地となったことで脚光を浴び、創建当初の姿に修復されたという。
外見は古びているが、平成になって修復された内部はよくメンテされていて、連続テレビ小説「おちょやん」さながらの芝居小屋の風情を今に伝えている。今はコロナのため採算が取れる客数を入れられず(定員250名)、公演が打てないのが残念だと、芝居への熱い情熱が感じられる係員が嘆いていた。
古い町屋を改造したカフェで一休みして、徳島自動車道経由で徳島市内に向かう。ホテルにチェックインするにはまだ時間があったので、徳島の代名詞のような眉山(びざん)に上がってみた。徳島市を東西に横切る四国三郎の雄大な流れが見える。
ホテルに着くと駐車場に横浜F・マリノスの専用バスが止まっていた。翌日の徳島ヴォルティスとの試合を控え、チーム一行が同じホテルに投宿していたのだ。ロビーやエレベーターで選手らしき人たちをまぢかに見たが、サッカーファンではないので誰が誰やらさっぱり分からない。(苦笑)
翌日は「とくしま動物園」に出かけた。旅先でわざわざ動物園を訪れたのは、他に行きたい場所がなかったこともあるが、この子たちに会いたかったからだ。
飼育されているカピバラの数は94匹(昨年末時点)と日本で一番多い。2位の伊豆シャボテン動物公園(27匹)の実に3倍以上である。のんびり餌を食み、悠然と歩き泳ぐ彼らの姿に旅の疲れを癒し、和歌山行きの南海フェリーに乗り込んで帰路に就いた。
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