『虹をつかむ男』
1996年、松竹。山田洋次監督。西田敏行、吉岡秀隆、田中裕子ほか。allcinema の紹介文。
職もなく、親とケンカして家を出た平山亮は、旅の末、徳島の小さな町に辿り着く。亮はそこで無類の映画好き白銀活男が経営する古ぼけたオデオン座という映画館でアルバイトとして働き始める。活男は幼馴染みの未亡人・八重子に惚れていたが、それを口にすることはなかった。そんな活男を亮は叱咤するのだったが……。(引用終わり)
自慢ではないが、『男はつらいよ』シリーズの寅さん映画は1本も観たことがない。「お前はそれでも日本人か!」と言われそうだが、多くの人が観るものは観ないという天邪鬼な性分ゆえのことで仕方ない。
それでも、渥美清の死去で打ち切りとなった同シリーズの後継作として製作された本作を観てみようと思い立った理由は、先日の旅行で訪れた徳島県美馬市の脇町劇場(オデオン座)でロケが行われたことを知ったからである。
現在では昔の芝居小屋に復元されたオデオン座は、かつては映画館(いわゆる名画座)として使用されていた。そこを舞台に繰り広げられる、映画愛に溢れた主人公活男と地元の人々の映画を通じた交流が、ちょっとほろ苦いロマンスを絡めて人情味たっぷりに描かれている。
中でも往年の名作映画の引用や、活男による身振り手振りの解説が出色で、それが本作のストーリー展開にもうまく絡んでいるところは、山田監督自身の映画愛のなせるわざであろう。
映画を観終わっての感想を口々に語る人々の上気したような表情。「これから飲みに行こう!」などという声も聞こえるが、映画にまつわるそんな風景はもう過去のものとなった。ネット配信や何とかプライムの普及で過去の名画が家で簡単に観られる今日、名画座などという「コヤ」はもはや絶滅危惧種のような存在だろう。
ところで、本作を観たもう一つの動機は、この作品の関連でもある(結局そこかい・笑)。
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コメント
久し振りのコメントです。
小生も自慢はしていませんが(笑)「寅さんシリーズ」は全く観ていません。 が山田監督「キネマの天地」はお気に入りです。
松竹大船50周年を記念し当時ドル箱の「寅さん」を見送って撮られた作品とか、旅回り役者(渥美清)の娘(有森也美)がふとしたきっかけで映画界に入り大部屋女優から苦労を重ね大作の主役に抜擢される物語。貧しい生活で病んでいた父親はその作品を一人場末の映画館で観ながら息を引き取る最後が強烈でした。
この物語に日本映画界の出来事や名優のエピソードを織り込み脇も名優揃い、まさに映画好きが寄って集って作り上げた映画愛が満載の作品でした。
延期されていた「キネマの神様」が8月に封切です。どんな映画愛が込められているのか楽しみにしています。(もちろん北〇景〇さんの名演も楽しみです。笑)
投稿: ブッちゃん | 2021/07/21 11:19
ブッちゃん
ご無沙汰です。
実は『キネマの天地』も関連して観たところです。
感想は記事に書く予定ですが、本来主演予定だった
藤谷美和子が降板して新人の有森也実が抜擢されたという、
映画の筋書きさながらの経緯があったそうで驚きました。
投稿: まこてぃん | 2021/07/22 08:43