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2021/07/25

『キネマの天地』

Kinema1986年、松竹。山田洋次監督。渥美清、中井貴一、有森也実ほか。紹介文。

昭和8年(1933)の春、浅草の活動小屋で売り子をしていた田中小春は、松竹キネマの小倉監督に見出されて、蒲田撮影所の大部屋女優となった。さっそくエキストラ出演した現場で小倉監督から怒鳴られて自信喪失しながらも、助監督・島田の励ましもあって、着実に女優の道を歩み始めていく小春。やがて大作『浮草』に主演するはずだったトップスター川島澄江が恋人とともに失踪。彼女の代打として小春が大抜擢されるのだが……。(引用終わり)

これも、近日封切りの『キネマの神様』の予習を兼ねて観てみた。『…神様』は松竹映画100周年記念、こちらは大船撮影所50周年記念ということで、社史代わりみたいにまた映画を作ってしまうところが松竹らしい。

冒頭に挙げた以外にも、倍賞千恵子、前田吟、松本幸四郎(現白鸚)、岸部一徳、柄本明、桃井かおり、平田満ら、文字通りオールスターキャストを贅沢に起用、笠智衆や藤山寛美といった大御所までがチョイ役で駆り出されている。

小春役は当初予定されていた藤谷美和子が降板し、新人の有森也実が急遽抜擢されるという、映画のストーリーを地で行くような経緯があって、その面でも話題になった。当時19歳の有森の初々しい可憐さが、本作の人気の相当部分を占めているように思う。

内容的には、「映画好きによる、映画好きのための、映画の映画」といった作品で、楽屋オチみたいなシークエンスも多い。財津一郎扮する刑事がマルクス兄弟を知らずに頭を捻るシーンは笑える。

一見華やかに見える映画界だが、その舞台裏では多数の人間が日夜汗水垂らして奮闘していて、そこにまた人間臭いドラマがあったりするのだ。それをそのまま映画にしてしまったという意味では画期的な作品であろう。

さて、次の『キネマの神様』はどんな「シャシン」に仕上がっているだろう。今から楽しみだ。

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コメント

「キネマの神様」8月6日公開で楽しみに待っています。
「~天地」はずいぶん以前に観たので記憶が曖昧ですがたしかにキャストは凄かった。クレイジーキャッツ、なべおさみなど脇でも芸達者な俳優が多かった。戦前の岡田嘉子、杉本良吉のソ連逃避行や左翼運動弾圧など銀幕の歴史もひっそりと盛り込んでいました。
映画好きの映画としては「ニュー・シネマ・パラダイス」を思い出します。

投稿: ブッちゃん | 2021/07/31 13:06

ブッちゃん
ハナ肇は中井貴一演じる助監督が収容された留置所で
頭領のようにふるまっていた大親分ですね。
その他、なべおさみは松竹の映画監督、
松坂慶子演じる川島澄江が逃避行して主役が交代、
財津一郎の刑事が追っていた左翼活動家小田切を
演じていたのが平田満でした。
『ニュー・シネマ…』は、小説『キネマの神様』では
大変重要なアイテムとなっていますが、
さて映画版ではどうでしょうか?

投稿: まこてぃん | 2021/08/01 08:44

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