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2021/05/01

トスカニーニのベートーヴェン交響曲全集

Toscanini1949年から53年にかけて、NBC交響楽団を指揮してカーネギーホールで録音された。不朽の名盤とされるが、これまで何となく敬遠していて、一度もきちんと聴く機会を持たなかった。とにかく古いモノラル録音で、キビキビと言えば聞こえは良いが、即物主義的で味わいに乏しい演奏だろうという勝手な先入観があったのだ。

結論的に言えば、両者とも全くの誤解であった。前者については、確かに1950年前後のモノラル録音には違いないが、クオリティは十分に高く、高音から低音までバランス良くとらえられ、Dレンジも結構広い。象徴的なのが「田園」の第4楽章で、ティンパニの炸裂、コントラバスの地を這うような音が見事である。

演奏内容について言えば、これも確かにテンポは速い。しかし、速すぎるということはなく、予想を少しだけ裏切る程度の速さであって、慣れればこれが結構快適になる。それよりも問題は音楽の中身で、精密機械のようなイン・テンポの流れの中で、旋律を十分に歌わせて、強弱の変化も鮮やかである。

実に、トスカニーニは「カンタービレの音楽家」なのであった。それもその筈、オペラの本場イタリアはパルマに生まれ、歌劇場のチェロ奏者からスタートし、オペラ指揮者としてのキャリアを積んできた音楽家ならではの特質と言えるだろう。

9曲いずれも素晴らしい演奏、録音であるが、意外なことに「田園」が最も印象に残った。前述した第4楽章の嵐から終楽章の牧歌に至る後半部が特に秀逸である。第7番終楽章の畳みかけるような迫力にも圧倒された。

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コメント

おっしゃる通り「カンタービレ!」
何たってイタリア人だし、
プッチーニの初演もしてるし、
スカラ座やメトロポリタン歌劇場で活躍したオペラ指揮者なんですよね。
NBC交響楽団との名盤が有名過ぎて・・・
オペラも序曲しか聴いたことなくて・・・(^^!

投稿: ケイタロー | 2021/05/02 09:45

ケイタローさん
戦後の早い時期にオペラから退いてしまったので、
オペラ指揮者としての業績は過去のものになったのでしょう。
序曲集も聴いていますが、「これからオペラが始まる」
というワクワク感が横溢した名演揃いですね。

投稿: まこてぃん | 2021/05/03 09:00

FBを通じて交流している指揮者.徳岡さんのYouTubeのトスカニーニ特集をお知らせします。氏はフルトヴェングラーについてはかなりマニアです。
https://www.youtube.com/watch?v=uQWN49Q_dcY

投稿: frun 高橋 | 2021/05/08 06:29

frun 高橋さん
徳岡さんのYouTubeは、例の
「フルトヴェングラーの足音」など
時々拝見しています。
トスカニーニについても綿密な考証を
されていて感心しますね。

投稿: まこてぃん | 2021/05/09 10:50

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