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2021/04/25

『ノマドランド』

Nomadland2020年、米。クロエ・ジャオ監督。フランシス・マクドーマンド、デヴィッド・ストラザーン他。公式サイトの紹介文。

企業の破たんと共に、長年住み慣れたネバタ州の住居も失ったファーンは、キャンピングカーに亡き夫との思い出を詰め込んで、〈現代のノマド=遊牧民〉として、季節労働の現場を渡り歩く。その日、その日を懸命に乗り越えながら、往く先々で出会うノマドたちとの心の交流と共に、誇りを持った彼女の自由な旅は続いていく──。(引用終わり)

一種のロードムービーかと思わせるが、この物語に目指すべき終点は存在しない。季節が巡るのと同じように、ノマドたちの人生もまた永遠の円環構造を繰り返すかのようである。彼らの別れの挨拶が「さようなら」ではなく、「またどこかで会おう」というのがそのことを象徴している。

クリスマスシーズンのアマゾン配送センターでのアルバイトから始まった主人公の季節労働も、公園清掃やレストランの厨房など様々な職種を経たのち、1年後にはまた同じアマゾンの仕事に戻るのである。

ノマドたちとの交流を通じて心の整理をつけたらしい彼女が、廃墟となったネバダ州の住居を再び訪れて、そこに残してあった夫との思い出の品々を全て捨てて、また新たな旅に出るところで映画は唐突に終わる。終点のない彼女の旅が、またそこから新たに続くことが示唆されているようだ。

この映画の大半はアメリカの大自然を背景にした、主人公の複雑な心理を窺わせる表情のアップといった映像から構成されている。アカデミー主演女優賞を二度受賞したマクドーマンドの静謐な演技が絶妙で、ちょっとした視線の動きにも深い意味と味わいを感じさせる。また、主役二人以外は本物のノマドたちが実名で登場し、彼らの実際の生活ぶりをありのままに再現していることが、本作のリアリティと説得力を強めている。

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コメント

荒涼としたネバダやアリゾナの風景が印象的でした。
アマゾンの配送センターの様子も。(^^)

マクドーマンドBest3は
①「ファーゴ」
②「ミシシッピー・バーニング」
③「あの頃ペニー・レインと」
「スタンドアップ」以後、「スリー・ビルボード」も本作も評価は高いけれど・・・
僕はもう一つ好きになれないなぁ。
また、旦那のジョエル・コーエンと撮ってほしいです。

投稿: ケイタロー | 2021/04/25 14:56

ケイタローさん
アカデミー主演女優賞受賞の『ファーゴ』と
『スリー・ビルボード』は観ました。
どこにでもいそうなオバサンなのに、
役になり切る演技力は相当なものと思います。
さて、今回3度目の受賞なるか?

投稿: まこてぃん | 2021/04/26 09:25

取りましたね。
3度目とは・・・(脱帽)
作品はもう一つのような気がしたんですが・・・
たしかに演技力は抜群。
怪優ですね。(^^)

投稿: ケイタロー | 2021/04/26 21:49

ケイタローさん
3度目の受賞はキャサリン・ヘプバーンの4度に
次ぐものですが、68年のヘプバーンはバーブラ・
ストライザンドと同票の二人受賞になったものですから、
単独での3度受賞という意味では史上二人目の快挙です。
メディアはやれ監督が中国系の女性だとかにのみ着目して
映画の内容や彼女の演技のことはほとんど触れませんが。

投稿: まこてぃん | 2021/04/27 17:58

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