歌劇「連隊の娘」
ドニゼッティ作曲のオペラ・コミック。2019年3月メトロポリタンオペラ公演の録画を鑑賞。METライブビューイングの紹介文。
19世紀初めのチロル地方。進軍してきたフランス軍第21連隊には、戦場に棄てられていたのを軍曹シュルピスに拾われ、連隊で大きくなったマリーというアイドルがいた。そんなマリーに、崖から落ちた彼女を助けてくれた農民の若者、トニオという恋人ができる。だがそこに現れたベルケンフィールド侯爵夫人は、マリーが亡くなった妹とフランス軍人との間の子だと言い、彼女をパリに連れて行く。貴族の生活になじめないマリーを追ってトニオがやってくるが、マリーにはすでに婚約者がいた…。(引用終わり)
マリーにトニオって、20世紀のミュージカルにそんなのがあったっけ(笑)。それはともかく、ストーリーは例によって面白おかしいともハチャメチャとも、「いかにもオペラ」という作り話であるけれど、本作最大の魅力は音楽、とりわけ主役二人の数々のアリアの美しさにあるだろう。
トニオ役にはハイC(清涼飲料ではなく、高いハ音のこと)が9回出るアリア「ああ友よ、何と嬉しい日!」が要求され、メキシコ出身のテノール、ハヴィエル・カマレナ(写真中央)はこれを見事に歌いこなしたばかりか、聴衆の熱烈な喝采に応えてアンコール、さらに9回ハイCを炸裂させて場内を沸かせた。
マリー役の南アフリカ出身のソプラノ、プレティ・イェンデも負けてはならじと、羽のようなコロラトゥーラで数々の難曲を軽々とこなし、さらにズールー族特有の口中で破裂する音まで披露するなど、芸達者なところを発揮している。
また、シュルピス軍曹役のベテラン、マウリツィオ・ムラーロ(写真右)が、本番前に「風邪による体調不良」とアナウンスされたことを全く感じさせない安定した歌唱と演技を見せ、さすがの貫禄を示している。
さて、これでうちにあったオペラのDVDとビデオは、一部の同曲異演版を除いて全て観終えた。その数ざっと50作品。きっかけとなった病気がなければ、短期間にこれだけの数をまとめて観ることはなかっただろう。まさに怪我の功名というやつであるが、それまで未知の大陸だったオペラの世界に、一応のとっかかりは得られたものと思う。
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コメント
「一応のとっかかりは得られた」とはご謙遜を。(^^)
メジャーな作品はほぼ観られたのではないでしょうか?
といっても、オペラの海は果てしなく広がっていて、僕も浜辺で水遊びをしている程度です。
配役や演出が違うと、あるいは時代を変えて換骨奪胎すると、全く別の作品になるところが面白いですね。
METや他の劇場のDVDのおかげで、まだまだ楽しめます。
ありがたい時代です。
ドニゼッティのメロディーって、素直で好きです。
Best3
①ランメルモールのルチア
②愛の妙薬
③アンナ・ボレーナ
投稿: ケイタロー | 2021/02/12 15:43
ケイタローさん
仰るように、同じ作品でも公演ごとに印象が
大きく異なる点は、とても器楽作品の比ではなく、
ひとつのプロダクションを観ただけというのは
一応のとっかかりでしかない気がします。
投稿: まこてぃん | 2021/02/13 08:46