『復活の日』
1980年、角川春樹事務所、TBS。小松左京原作。深作欣二監督。草刈正雄、オリビア・ハッセー他。アマゾンの紹介文。
米ソ冷戦下、密かに開発された細菌兵器MM-88を積んだ輸送機がアルプスの山中に墜落。雪解けの春を迎え、増殖を始めた菌は新型インフルエンザ “イタリアかぜ” として世界中に蔓延。猛威を振るう謎のウイルスに全世界が恐怖に陥る。ホワイトハウスが超低温ではウイルスが機能しないことを突き止め、ワクチン開発に乗り出すが、すでに人類は滅亡寸前に追いこまれていた。そして、南極大陸探検隊の863人だけが残された。しかし、南極日本隊の吉住は、米ソの自動報復システムによって核ミサイルの標的となることを知ってしまう。人類は、地球は生き残ることができるのだろうか!?(引用終わり)
英語タイトルはずばり VIRUS である。ウイルスと人類の戦いを主要テーマとした本作は、現下のコロナ禍を生きる今の我々に対しても、単なるSF映画にとどまらない重い問題提起をしていると言える。
米ソ冷戦下で開発された細菌兵器が盗まれたことが発端となるなど、当時の世界情勢を背景にしたストーリーに古さを感じるものの、「イタリア風邪」が世界中にパンデミックを引き起こす惨状を描いた前半の映像に、我々はおそらく当時の観客以上に、ただならぬリアリティを感じてしまう。
南極に残された各国探検隊のメンバーが衆議一決、「復活の日」を目指して的確な行動方針を決めていく様子は感動的でさえある。そういう極限状況にならなければ発揮されないのかもしれないが、人類の知恵と能力は決して捨てたものではないというポジティブなメッセージを感じた。
南極ロケまで敢行し、本物の潜水艦を使用するなど、製作費25億円に及んだというこの超大作。それまでの日本映画の常識を覆すと同時に、批判も多かった角川映画の中では出色の作品なのではないかと思う。
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コメント
O・ハッセー繋がりですね。ずいぶん前に観た記憶があります。
東西冷戦下、核戦争や生物細菌兵器が現実味を帯び「最後は南半球か~!」とオーストラリアの事を調べたりしました。監督は意外や深作欣二なんですか。カメラはたしか黒澤明ゆずりの頑固者 木村大作でした。彼が南極ロケを最後まで主張したとか、そのせいかこの映画ヒットしたのですが出費が多く大赤字だったらしいです。
実は小松左京の原作の方をよく覚えています。一時期はまりましたが科学解説部分が難解で百科事典で調べながら読むのが大変でした。「修士論文レベルの内容」と評する専門家もいたようです。氏はその後「日本沈没」や「首都消失」を書き日本のSF小説を文学のレベルに引き上げたように思います。
投稿: ブッちゃん | 2021/02/09 09:04
ブッちゃん
小松左京は博覧強記にして大変スケール大きな人物でした。
『日本沈没』『首都消失』も映画化されていますね。
原作を読むのは確かに骨が折れそうですが、
映画はまた機会があれば観てみたいです。
投稿: まこてぃん | 2021/02/10 08:47