« 2021年1月 | トップページ | 2021年3月 »

2021/02/26

『日本沈没』

Chinbotsu_202102252014011973年、東宝。藤岡弘、小林桂樹、丹波哲郎ほか。映画ドットコムの紹介文。

小笠原諸島のとある島が突如として姿を消した。小野寺の操縦する潜水艇に乗って調査に向かった田所博士は、海底に重大な異変が起きているのを発見し、近いうちに日本が海底に沈むという恐るべき予測にたどり着く。やがて、日本各地で大地震や火山の噴火が起こりはじめ……。(引用終わり)

2006年版に続き、1973年版を観てみた。確かに全体的なタッチはかなり異なり、あえて単純化して言えば、前者はエンターテインメント、後者は社会派SFとでも言うべきだろうか。

特に、本作の前半では海底の異変を察知した科学者たちの分析や、遠からずやってくる危機への政府の対応などが淡々と描かれるが、驚天動地のパニック映画を期待した観客からすれば若干間延びした感じすら与えるだろう。

後半はさすがにゴジラを生んだ東宝ならではの特撮映像がこれでもかと登場。50年近く経った今でも劇場の大スクリーンで観れば相当な迫力だろう。その映像が雄弁に物語る「日本沈没」という事態に、政府も国民もなすすべなく呑み込まれていく様子が大変リアルで、SFの世界だけの絵空事として客観的に観ることが出来なかった。

俳優陣では、小野寺役を演じた(まだ「、」のつかない)藤岡弘がとてもエネルギッシュである。いしだあゆみとの控えめなラブシーンは当時話題になったことだろう。田所博士役の小林桂樹、山本総理役の丹波哲郎はいずれも当時50歳前後、脂の乗った演技はさすがである。

また、東大地球物理学の竹内均教授が本人役で登場、かなりの尺を使って地球内部の構造や地殻変動の仕組みを解説するシーンがあり、これが大変分かりやすいと評判になったそうだ。ちなみに原作者の小松左京も、資料を届けに来た社員役でカメオ出演している。

2月25日 ジョグ4キロ
月間走行  8キロ

| | コメント (4)

2021/02/23

ワルターのブルックナー交響曲集

Sicc10301bブルーノ・ワルターが晩年にコロンビア交響楽団を指揮して録音したディスクは何枚か持っていて、特にモーツァルトの交響曲は中学時代以来の愛聴盤となっている。ブラームスの第4番は自分にとっての「刷り込み盤」であることは以前に書いた。

ブルックナーの交響曲第9番の廉価版LPも持っているけれど、昔のCBSにありがちな乾いた音と人工的な残響で、なかなか集中して聴くことが出来ない。そもそも、ワルターはマーラーとの関係が深く、ブルックナーとは縁が薄いような気がして、それ以外のシンフォニーの録音があることすら知らずにいた。

しかし、最近ソニー・クラシカルがアナログ録音の新たなデジタルリマスターに取り組んでいて、その一環としてワルター指揮コロンビア交響楽団によるブルックナーの交響曲第4、7、9番のCDが2019年に発売されたことを知り、物は試しと聴いてみたのだ。

一聴してLPとは次元の異なる音に驚いた。弦楽器の音はLPのようなガサガサ感が少なくて艶が感じられ、管楽器とのバランスも取れている。ホールトーンも自然な感じでよく捉えられ、今日の鑑賞に十分堪えるレベルの音質に驚く。この60年もの間、録音技術は一体どれだけ進歩したというのかと素朴な疑問を抱いてしまう。

ワルターの演奏は純音楽的というのか、ブルックナーのスコアに忠実に、余計な感情移入を排した正攻法の音楽づくりが大変好ましい。それに応えたコロンビア交響楽団の演奏は、録音用に特別に編成された楽団とは思えないほどで、特に管楽器など相当の腕前の奏者を集めたことが窺える。

この頃のワルターは80代前半。既に引退を決めていたが、CBSのプロデューサー、ジョン・マックルーアに口説かれて再び指揮台に上がった。しかし、この演奏からはそんな年齢のことなど微塵も感じさせない。それを見抜いていて、この奇蹟とも言える演奏をステレオ録音で残すことに成功したマックルーアの功績は大である。

ところで、ここまで書いてきた文章は、セル指揮のブルックナー第8番の記事を下敷きにした。それくらい経緯が似ているのだけれど、セルとワルターが残した曲目がひとつもダブらないところが面白い。ヨーロッパからアメリカに活躍の場を移した巨匠2人による、変則的な交響曲集として今後も愛聴したいものだ。

| | コメント (0)

2021/02/20

映画『ファーストラヴ』

Firstlove_202102192101012021年、製作委員会。北川景子、中村倫也、芳根京子他。公式サイトの紹介文。

川沿いを血まみれで歩く女子大生が逮捕された。殺されたのは彼女の父親。「動機はそちらで見つけてください」。容疑者・聖山環菜(芳根京子)の挑発的な言葉が世間を騒がせていた。事件を取材する公認心理師・真壁由紀(北川景子)は、夫・我聞(窪塚洋介)の弟で弁護士の庵野迦葉(中村倫也)とともに彼女の本当の動機を探るため、面会を重ねる。
二転三転する供述に翻弄され、真実が歪められる中で、由紀は環菜にどこか過去の自分と似た「何か」を感じ始めていた。そして自分の過去を知る迦葉の存在と、環菜の過去に触れたことをきっかけに、由紀は心の奥底に隠したはずの「ある記憶」と向き合うことになるのだが…。(引用終わり)

島本理生の同名小説を映画化。原作にほぼ忠実にというより、むしろ小説より要領よく纏まっているように感じた。原作を読まずに観た人にもストーリーを追うのがさほど難しくないだろう。本筋から少し外れたエピソードは割愛し、環菜と由紀の関係性とその変容を軸に構成したことが功を奏している。

監督の堤幸彦、脚本の浅野妙子の手腕によるところが大きいのはもちろんだが、芳根京子、北川景子の迫真の演技がなければなし得なかった作品だろう。特に終盤、東京拘置所面会室での両者の全人格をかけた対峙シーンは大変な迫力があり、仕切りのアクリル板にお互いの顔が映り込んで重なる映像も示唆に富んでいる。

カット割りによる構成を得意とする堤監督にしては珍しく、このシーンではあえて長回しを決断して二人の演技に任せたという経緯が、公式サイトの「プロダクション・ノート」で紹介されている。

北川景子の演技が目に見えて向上しているのを感じた。若い頃はどうかすると真剣な取り組みが裏目に出てしまい、息苦しさすら感じることがあったが、本作では良い意味で肩の力が抜けた、余裕を残した演技ぶりだった。願わくば大器晩成タイプで、このまま着実に大女優への道を歩んでほしいものだ。

| | コメント (2)

2021/02/17

町の書店も捨てたものではない

97847584439204年前のスタート以来読み継いでいる『あきない世傳』シリーズの第10弾が発売された。毎回楽しく読ませてもらっているが、今回書きたいのはその内容ではなく、その入手方法についてである。

結果から先に言えば、今回初めて近所の小さな書店で購入することになった。実はこれまでの9巻は全て、発売前から図書館に予約しておき、入荷後比較的早い時期に読むことが出来ていた。

しかし、昨年12月から今年3月末まで、図書館が設備改修のため長期休館となっていて、貸出はおろか新刊の予約すら出来ない状況になっているのだ。このままだと、再開した4月早々に予約を入れたとしても、実際に読めるのは早くて6月以降、下手をすると第11弾の発売が予想される9月を過ぎてしまう恐れすらある。

そのため、今回に限っては自腹を切って(笑)1冊購入することにして、いつものようにアマゾンに発注した。当初は発売日ぐらいに到着する予定となっていたが、翌日になって「商品の発送に遅延が生じました」というメールが届いた。最長で3週間も後になるという。アマゾンと版元や取次との間で何かいざこざでも起こったのか、部外者には知る由もないけれど、一日も早く読みたい読者としてちょっと困る。

そこで、ダメで元々と近所の小さな書店を何年かぶりに訪れ、入荷の見通しを尋ねたら、発売日かその翌日ぐらいには入りますよと、あっさり言われてしまった。何となくだけどJ堂とかK屋などの大規模書店が優先で、町の小さな本屋は後回しというイメージがあっただけに意外だった。

早速その場で注文してアマゾンはキャンセル、無事発売日に入手することが出来た次第だが、ネットショッピング全盛の現在でも、従来どおりの取次ルートが健在であることが分かって、ちょっと心強い思いがした。

仕入れや在庫、物流など経営のあらゆる面を極限まで効率化したアマゾンのビジネスモデルに対抗して、今回は取次店を通じた従来のアナログ式の販売ルートが、ささやかな勝利を収めたと言えるかもしれない。

また、書店以外にも、スーパー、銀行、郵便局、コンビニ、定食屋、弁当屋、パン屋、医療モール、そのいずれもが徒歩圏内にある今の生活環境が、今後の加齢を考えるといかに恵まれたものであるかを再認識した。

| | コメント (2)

2021/02/14

『日本沈没』

Chinbotsu_202102230934012006年、製作委員会。草彅剛、柴咲コウ、豊川悦司他。アマゾンの紹介文。

潜水艇「わだつみ6500」のパイロットの小野寺は、同僚の結城とともに深海調査に乗り出していた。そこでふたりは驚愕の事実を発見する。このままいくと海底プレートの沈降で、日本列島が海に沈んでしまうことがわかったのだ。日本の危機が目前だと、ふたりを指揮していた地球科学博士の田所はほかの科学者や日本政府にSOSを出す。しかし、地殻変動は起き、火山は噴火、大地震が起こり、国民はパニックに陥る。(引用終わり)

小松左京つながりで観てみた。1973年に映画化されて以来、33年ぶりにリメイクされた作品。未見の73年作品と内容はかなり違うようであるが、それだけ原作が多様な要素を含んだ、スケールの大きな作品であるということだろう。

本作ではSF、パニック、ラブロマンス、サスペンスなどの要素を適宜盛り込み、特撮とVFXを駆使した迫力ある映像とともに、さほど肩の凝らない娯楽作品になっていると思う。ツッコミどころは数多いが、それをいちいちあげつらうより、ひとつでも心に残るシーンがあれば観た甲斐はあるというもの。

大地真央演じる危機管理担当大臣が陣頭に立って大活躍、ラスト近くで国民に対する政府声明を肉声で発するシーンは胸に迫った。木で鼻を括った官僚作文を俯いて読むだけの総理大臣や、女性の活躍に対する理解を全く欠いた元総理にこそ、このメッセージを聞いてもらいたいものだ。

2月12日 ジョグ4キロ

| | コメント (2)

2021/02/11

歌劇「連隊の娘」

Regimentドニゼッティ作曲のオペラ・コミック。2019年3月メトロポリタンオペラ公演の録画を鑑賞。METライブビューイングの紹介文。

19世紀初めのチロル地方。進軍してきたフランス軍第21連隊には、戦場に棄てられていたのを軍曹シュルピスに拾われ、連隊で大きくなったマリーというアイドルがいた。そんなマリーに、崖から落ちた彼女を助けてくれた農民の若者、トニオという恋人ができる。だがそこに現れたベルケンフィールド侯爵夫人は、マリーが亡くなった妹とフランス軍人との間の子だと言い、彼女をパリに連れて行く。貴族の生活になじめないマリーを追ってトニオがやってくるが、マリーにはすでに婚約者がいた…。(引用終わり)

マリーにトニオって、20世紀のミュージカルにそんなのがあったっけ(笑)。それはともかく、ストーリーは例によって面白おかしいともハチャメチャとも、「いかにもオペラ」という作り話であるけれど、本作最大の魅力は音楽、とりわけ主役二人の数々のアリアの美しさにあるだろう。

トニオ役にはハイC(清涼飲料ではなく、高いハ音のこと)が9回出るアリア「ああ友よ、何と嬉しい日!」が要求され、メキシコ出身のテノール、ハヴィエル・カマレナ(写真中央)はこれを見事に歌いこなしたばかりか、聴衆の熱烈な喝采に応えてアンコール、さらに9回ハイCを炸裂させて場内を沸かせた。

マリー役の南アフリカ出身のソプラノ、プレティ・イェンデも負けてはならじと、羽のようなコロラトゥーラで数々の難曲を軽々とこなし、さらにズールー族特有の口中で破裂する音まで披露するなど、芸達者なところを発揮している。

また、シュルピス軍曹役のベテラン、マウリツィオ・ムラーロ(写真右)が、本番前に「風邪による体調不良」とアナウンスされたことを全く感じさせない安定した歌唱と演技を見せ、さすがの貫禄を示している。

さて、これでうちにあったオペラのDVDとビデオは、一部の同曲異演版を除いて全て観終えた。その数ざっと50作品。きっかけとなった病気がなければ、短期間にこれだけの数をまとめて観ることはなかっただろう。まさに怪我の功名というやつであるが、それまで未知の大陸だったオペラの世界に、一応のとっかかりは得られたものと思う。

| | コメント (2)

2021/02/08

『復活の日』

Virus1980年、角川春樹事務所、TBS。小松左京原作。深作欣二監督。草刈正雄、オリビア・ハッセー他。アマゾンの紹介文。

米ソ冷戦下、密かに開発された細菌兵器MM-88を積んだ輸送機がアルプスの山中に墜落。雪解けの春を迎え、増殖を始めた菌は新型インフルエンザ “イタリアかぜ” として世界中に蔓延。猛威を振るう謎のウイルスに全世界が恐怖に陥る。ホワイトハウスが超低温ではウイルスが機能しないことを突き止め、ワクチン開発に乗り出すが、すでに人類は滅亡寸前に追いこまれていた。そして、南極大陸探検隊の863人だけが残された。しかし、南極日本隊の吉住は、米ソの自動報復システムによって核ミサイルの標的となることを知ってしまう。人類は、地球は生き残ることができるのだろうか!?(引用終わり)

英語タイトルはずばり VIRUS である。ウイルスと人類の戦いを主要テーマとした本作は、現下のコロナ禍を生きる今の我々に対しても、単なるSF映画にとどまらない重い問題提起をしていると言える。

米ソ冷戦下で開発された細菌兵器が盗まれたことが発端となるなど、当時の世界情勢を背景にしたストーリーに古さを感じるものの、「イタリア風邪」が世界中にパンデミックを引き起こす惨状を描いた前半の映像に、我々はおそらく当時の観客以上に、ただならぬリアリティを感じてしまう。

南極に残された各国探検隊のメンバーが衆議一決、「復活の日」を目指して的確な行動方針を決めていく様子は感動的でさえある。そういう極限状況にならなければ発揮されないのかもしれないが、人類の知恵と能力は決して捨てたものではないというポジティブなメッセージを感じた。

南極ロケまで敢行し、本物の潜水艦を使用するなど、製作費25億円に及んだというこの超大作。それまでの日本映画の常識を覆すと同時に、批判も多かった角川映画の中では出色の作品なのではないかと思う。

| | コメント (2)

2021/02/05

光インターネットが開通

これまで利用して来たADSLが今年9月で終了となるのに伴い、年末から手続きを進めていた光インターネットへの転換が完了、ようやく我が家にも光がやって来た。

工事そのものは1時間半ほどで終了。その後の接続設定に更に時間を要すると予想していたが、何のことはない。LANケーブルをPCに繋ぎさえすればOK。無線LANもスマホとタブレットにパスワードを入力するだけで済んだ。光ファイバーは契約ごとの専用回線なので、予め必要な設定がなされているのだろう。

最大1Gと謳われている回線速度だが、時間帯による変動が相当激しく、平日の午後には下り300Mぐらい出るときもあるが、夜間や休日などの混雑時には、20MぐらいだったADSLの2~3倍程度にまで落ちる。

回線速度を上げるコツなどがあるのかもしれないが、目下父の死去に伴う諸々の手続きに忙殺されていて、なかなかそこまで手が回らない。しかし、従来より千円近い月額費用の増加となるだけに、時間が出来れば可能な限り改善を図りたいと考えている。

| | コメント (2)

2021/02/02

『トゥルー・クライム』

Truecrime1998年、米。クリント・イーストウッド脚本、監督、主演。アマゾンの紹介文。

サンフランシスコ湾に臨む町オークランドのサン・クエンティン刑務所。フランク・ビーチャムは翌日の深夜0時1分、死刑に処される。6年前、19歳の白人で妊娠していたコンビニ店員を射殺した罪に問われて…。彼が黒人であり、また世論の反発が強く、無実を訴えても道は開かれなかったのだ。その晩、当時事件を追っていた新聞記者ミシェルが事故で死亡し、急きょフランクの取材を任された先輩記者スティーブ・エベレットは、即座に無実の匂いを嗅ぎとり捜査を開始する。(引用終わり)

一介の新聞記者が6年前の冤罪を暴き、死刑執行をギリギリで止めさせるというのは、ちょっと現実離れしたストーリーと言えなくもない。しかし、そこに至るまでのプロセスが丁寧に、かつテンポ感良く描写されているので、主人公にすっかり感情移入してしまい、最後はハラハラドキドキのサスペンスに手に汗握る。映画巧者ならではの作品だ。

「本当の犯罪」というタイトルの意味するところは明らかだが、その執行の部分を担当する刑務所の職員たちが、冤罪の片棒を担ぐ犯罪者というより、職務に忠実な普通の人間という目で描かれているところに好感が持てる。緑色のクレヨンを巡るエピソードが象徴的である。

なお、主人公の娘ケイトを演じたのはクリントの実の娘フランシスカで、その母親フランシスが検事のセシリア役、クリントの妻ディナがTVレポーター役で出演している。気心の知れた身内で固めるのが、クリントの流儀なのだろうか。

| | コメント (4)

« 2021年1月 | トップページ | 2021年3月 »