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2021/01/12

フリッチャイのベートーヴェン交響曲集

Fricsay_20210111183001フェレンツ・フリッチャイは、1914年ハンガリーのブダペストに生まれ、63年に48歳の若さで亡くなった指揮者である。同じブダペスト出身で夭折した指揮者イシュトヴァン・ケルテスのCDは何枚か持っていて愛聴しているが、フリッチャイについては名前を知っているという程度だった。

最近、ベートーヴェン生誕250年に因んで、フリッチャイのベートーヴェンについて書かれたある記事を読んで興味が湧いたので、彼がベルリン・フィルを振ったベートーヴェンの交響曲集を聴いてみた。

録音順に、第1番(53年1月)、第8番(同4月)、第9番(58年4月)、第3番(同10月)、第7番(60年10月)、第5番(61年9月)で、収録場所は全てベルリン、イエス・キリスト教会。なお第1、8番はモノラル録音である。

フリッチャイの若すぎる死をもたらした白血病の兆候は57年に現れたとされる。58年11月と59年1月に大きな手術を受け、1年近い療養生活を余儀なくされたが、その前後で彼の芸風が大きく変貌したことがしばしば指摘されている。

確かに上記の録音順に聴いていくと、初めの頃はトスカニーニを思わせる、キビキビとして推進力に富んだ颯爽とした演奏ぶりだが、後の年代にいくにつれテンポは次第に遅くなり、メロディをたっぷりを歌わせた恰幅の良い演奏を繰り広げるようになる。

晩年になると演奏テンポが遅くなる傾向は、バーンスタインやチェリビダッケなど他の指揮者にも見られるが、それが弱冠40代の指揮者の芸風に現れているのである。大病の発覚で死期の近いことを悟り、自らの生きた証としての表現を極限まで追求した結果なのであろうか。演奏時間38分余に及ぶ第5番も、こうした事情を知った上で聴くと胸に迫ってくるものがある。

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