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2021/01/09

『グラン・トリノ』

Grantorino2008年、米。クリント・イーストウッド監督、主演。アマゾンの紹介文。

妻に先立たれ、一人暮らしの頑固な老人ウォルト。人に心を許さず、無礼な若者たちを罵り、自宅の芝生に一歩でも侵入されれば、ライフルを突きつける。そんな彼に、息子たちも寄り付こうとしない。学校にも行かず、仕事もなく、自分の進むべき道が分からない少年タオ。彼には手本となる父親がいない。二人は隣同士だが、挨拶を交わすことすらなかった。ある日、ウォルトが何より大切にしているヴィンテージ・カー<グラン・トリノ>を、タオが盗もうとするまでは――。
ウォルトがタオの謝罪を受け入れたときから、二人の不思議な関係が始まる。ウォルトから与えられる労働で、男としての自信を得るタオ。タオを一人前にする目標に喜びを見出すウォルト。しかし、タオは愚かな争いから、家族と共に命の危険にさらされる。彼の未来を守るため、最後にウォルトがつけた決着とは――?(引用終わり)

クリント・イーストウッド演じる頑固老人ウォルトの姿を見ていて、トランプ大統領の岩盤支持層というのは、恐らくこういう人たちで構成されているのだと思った。朝鮮戦争退役後はフォードの工員を長年勤め上げ、グラン・トリノに代表されるアメリカ車に限りない愛着を持つ。日本車なんてクソくらえだ。

アフリカ系、アジア系の人間への差別意識を隠そうともせず、タオやその姉スーを含むモン族の一家が隣に越してきたことを、当初はあからさまに毛嫌いしていた。しかし、タオが不良グループにけしかけられてウォルトのグラン・トリノを盗もうとしたことから、ウォルトとの不器用な交流が芽生える。

家のメンテナンスを教えるところから始まったそれは、やがて仕事口の世話や、男らしい喋り方、生き方の伝授にまで及ぶようになる。ウォルトの遺産だけが目当てで擦り寄ってくる実の家族よりも、ウォルトにとってタオは実の息子か孫のような存在になっていく。

そして、タオ一家が不良グループに襲撃された復讐として、ウォルトは命をかけた合法的な反撃を企て、それは見事に成功する。そのラストに至るまでの伏線の張り方、緊迫感の高め方は、映画人クリント・イーストウッドの総決算のような趣きがある。これまで観てきた彼の作品中、文句なしのベストと呼びたい。

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コメント

イーストウッドの映画にはずれなし。(時々あるけど)
これぞ「アメリカ人!」
白人で、従軍経験あり、車はフォード、缶ビールをコップにあけて飲んだりしないし、気に入らないことがあるとすぐライフルを持ち出すし(たぶん全米ライフル協会の会員)・・・
でも、「本当のアメリカ人」という幻想は、ポ-ランド系移民として差別された歴史の裏返しだし、さらに後から来たアジア系移民への差別を生み・・・
おっしゃるとおり、主人公は一見トランプ大統領の支持者と重なりますが、嘘と暴力で国民を分断するレイシストではありません。イーストウッドの贖罪は、時宜を得たメッセージと言えそうです。
いい映画ですね。

投稿: ケイタロー | 2021/01/12 10:13

ケイタローさん
仰るとおりで、あれほど頑固だった主人公ウォルトが
アジア系の隣人たちと心を通わせていくという
過程そのものがこの映画のキモなのでしょう。
さらに、本文では触れませんでしたが、
暴力の連鎖を断ち切るための勇気だとか、
若い牧師とのホンネの遣り取りを通じた、
現代社会における宗教の役割といった重要なテーマも
内包されており、かなり奥行のある作品だと思います。

投稿: まこてぃん | 2021/01/13 08:54

御歳90歳、映画人生を極めつつあるイーストウッド。私生活では菜食主義、狩猟が苦手、タバコは全く喫わない、銃規制賛成派、2020年大統領選は民主党のブルームバーグ支持とスクリーンの印象とはまるで反対です。最近の役どころは頑固で他人と交われない孤独な老人、しかし弱者を助けるためには決然と戦う男。そして尊厳死、戦争PTSD、人種差別など社会問題を必ずテーマにしています。
「グラン・トリノ」と並び「許されざる者」「ミリオンダラーベイビー」「アメリカン・スナイパー」「運び屋」がいいですね。TV映画「ローハイド」の時代から好きな俳優です。

投稿: ブッちゃん | 2021/01/17 15:55

ブッちゃん
『運び屋』は本作と似たテイストで、いい作品ですね。
人間いかに歳を取り、いかに死んでいくか。
これも大きなテーマなのでしょう。

投稿: まこてぃん | 2021/01/18 18:06

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