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2021/01/21

“George Szell: A Life of Music”

Szell_20210119180201弟子 Michael Charry によるジョージ・セル伝。Kindle版の英書を何とか読破した。セルの生涯とその音楽に対する興味に加え、抗癌剤点滴の長い待ち時間がなければ、到底読み終えることは出来なかっただろう。

ジョージ・セルの生い立ちと天才少年ぶりから始まり、若き日の音楽修業を経て楽壇に華々しくデビューした後、様々な経緯を経てアメリカ・クリーヴランド管弦楽団の音楽監督に就任し、この楽団を世界有数の名門オーケストラに育て上げた過程を詳細に記述している。

紙の本で452頁に及ぶ内容を要約して紹介するのはとても手に余るので、自分として意外に感じたいくつかの点をメモしておくに止めたい。クリーヴランド管と数々の優れたレコーディングを残したセルだが、それ以外にも録音には残らなかった(一部音楽祭のライヴ録音を除き)多面的な活動を展開していたのだ。

  • セルはクリーヴランド管以外にも米国主要オーケストラとの関係を保ち続け、特にニューヨーク・フィルハーモニックには毎シーズンのように客演指揮に訪れていた
  • 毎年夏は必ずヨーロッパに滞在し、ザルツブルク、ルツェルン等の音楽祭に出演したり、夫人とともにスイスで静養したりという生活を繰り返していた
  • 古典派、ロマン派の作曲家の作品を主要レパートリーとしていたが、現代作品とりわけアメリカの作曲家の新作を積極的に取り上げ、その紹介に努めた

さて、セルと言えば、練習での厳しい指導ぶりや、楽員の大幅な入れ替えなどが取り沙汰されるが、それについてはさすがに「与党」である著者の立場から悪しざまなことは書けないようで、セルを擁護するような論調になっているのは致し方ないところか。

ただ、内輪の人間しか知らない裏話がいくつか披露されているので、そのうち2つを紹介することにしよう。

ひとつは、1969年9月にオイストラフ、ロストロポーヴィチ、リヒテル、カラヤン、ベルリン・フィルという組み合わせで実現したベートーヴェンの三重協奏曲の録音を巡る話である。実は同じ年の5月に、セルとクリーヴランド管はオイストラフ、ロストロポーヴィチとブラームスの二重協奏曲を録音していた。ベートーヴェンもセルが指揮して不思議はなかったのに、なぜカラヤンに話が行ったのか。

それは、ロシア人3人のソリストのスケジュールが厳しく、コンサートでの公開演奏を経ず僅か2回のセッションで録音するという条件を、たとえスケジュールが合ってもセルは承知しなかっただろうが、カラヤンはすぐに飛びついたからだというのだ。EMIのプロデューサー、ピーター・アンドリーがそのことについてセルに謝罪する一幕もあったようだ。

もうひとつは1970年の来日公演の際の札幌での逸話である。コンサート終了後、セルがホスト役となって、来日公演スポンサーを招待した宴席が札幌市内の高級料亭で開催された。出席者それぞれに着飾ったゲイシャがついていたが、セルについたのはその筆頭格だった。セルはもっと若くて魅力的なゲイシャに当たらなかったことで気分を害し、さらには宴席の請求額にショックを受けたそうである。(笑)

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コメント

いつも楽しく拝読しています。いろいろコメントしたいのに、いつも隠れ読みですみません(^^;。

セルのお話、とても興味深いです。ぜひまこてぃんさんには和訳で自費出版してほしいものです。

ドッペル、札幌の話、共に初耳でした。セルは日本では最初で最後の1970年に10数回指揮をしたようですが、札幌でも振ったんですね。当時の日程、曲目などが詳しくわからず、あの東京文化でのCDを聞きながら思いを巡らしています。

私は1990年代にドホナーニと来たCLOを何回か聴いていますが、その時にチェロにセル時代の女性奏者がいるのを見つけて喜んだものです。

こちらのブログをご参照を。

https://ameblo.jp/galwayera/entry-12075172243.html

大阪出張がことごとく中止です。1/29の大阪国際は長居公園周回ですね。10年ほど前でしょうか、一緒に走ったのが懐かしいです。今年もよろしくお願いします。

投稿: frun 高橋 | 2021/01/22 08:37

中学の修学旅行。長蛇の列で月の石を見られずがっかりした万博。
あの年はいろいろなオーケストラが来日しました。
もちろん演奏は聴いていませんが、セルは背が高い好々爺のイメージ(ジャケットの影響かも)、カラヤンって格好いいなぁと思った記憶があります。

高橋さん、お友達のブログありがとうございました。
あの40番は来日時のライブじゃないんですか。知らなかった。

投稿: ケイタロー | 2021/01/22 11:09

frun高橋さん
こちらこそコメントできずにすみません。
時間が許せば翻訳して一儲けしたいですが、
いかんせん僅かな読者が相手では無理でしょう。(笑)
札幌公演は5月25日中島スポーツセンターにて、
CD化された東京公演と同じ曲目で行われたと、
CDのブックレットに記載されています。
女性チェリストの話、興味深かったです。
リン・ハレルの隣で弾いているので相当な腕前かと。
長居公園周回から最後は競技場に入るみたいですね。
そのまま15周してもちょうどフルの距離で、
私はかつて2度ほど完走したことがあります。

ケイタローさん
1970年は来日オケのラッシュで、
大阪・フェスティバルホールでベルリンフィルと
リハーサル中のカラヤンと、次の公演の下見に来た
セルが顔を合わせ、互いに声をかけあったそうです。
40番のCDは来日時のライヴ録音もありますが、
一般に出回っているのは1967年8月25日、
ヨーロッパ演奏旅行中のセルとクリーヴランド管が
ロンドンのスタジオで録音したものです。

投稿: まこてぃん | 2021/01/23 08:57

長居公園ネタです。
長居公園の周回は10km、ハーフ、30kmは公認ですが15周のフルは公認ではありません。もちろん距離は正確で練習には問題ないです。ただ今回は競技場ゴールの新コースになるので急遽公認取得したようですが(組織委はWAの認証を得たと公表しています)こんなに短期間にマラソンのコースが公認された例は過去にないと思います。
前代未聞の15周の周回コースとなるので公道に比べ高低差がない、風の影響がないなど有利な面があるので大記録が出たあとにクレームがつかない事を願うばかりです。

投稿: ブッちゃん | 2021/01/25 22:01

ブッちゃん
フルも公認だと思い込んでいて、
誰彼となく吹聴していたような記憶が…(汗)
観客はシャットアウトするらしいですが、
あの公園はどこからでも入れる気がします。
ともかく平穏無事に開催され、快記録が
出ることを期待しましょう。

投稿: まこてぃん | 2021/01/26 18:15

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