« 『リチャード・ジュエル』 | トップページ | 『ドクター・スリープ』 »

2020/12/01

歌劇「サムソンとデリラ」

Samsonサン=サーンス作曲。2018年、メトロポリタンオペラ公演の録画を鑑賞。ライブビューイングの紹介文。

旧約聖書の時代、ペリシテ人が支配するイスラエルのガザ。支配下に置かれていたヘブライ人の英雄で怪力の持ち主サムソンは、人々を鼓舞してガザの太守を殺す。ペリシテ人の美女デリラは、復讐のためにサムソンを誘惑し、怪力の秘密が彼の長い髪にあることを聞き出した。デリラに裏切られ、怪力のもとである髪を切られたサムソンは、ペリシテ人に捕らえられ、目を潰されてさらし者にされる。サムソンが神に許しを求めて祈ると奇跡が起き…。(引用終わり)

旧約聖書士師記第13~16章の物語に基づき、最初は宗教曲(オラトリオ)として構想されたものの、当時フランスで確立しつつあったグランド・オペラに改作された作品である。第3幕の有名な「バッカナール」のエキゾチックなダンスや、クライマックスでの神殿崩壊シーンなどが呼び物のスペクタクル・オペラで、もともと宗教曲の枠に収まらない作品だったのだろう。

ストーリーとしては比較的単純であるけれども、男を蕩かすようなデリラの手練手管と、その誘惑と必死に戦うサムソンの葛藤は見応え十分。また、今回の公演ではデリラの役どころについて、エリーナ・ガランチャが幕間のインタビューで「デリラの人間味や豊かな感受性を表現したい」と答えていたように、復讐を遂げることだけが目的の単なる悪女として扱っていないところも興味深かった。

そのガランチャは妖艶なルックスもさることながら、情念を秘めたような翳りのある声質がピッタリだし、サムソンを演じたロベルト・アラーニャは母語フランス語の歌唱が冴え、第2幕のガランチャとの二重唱はまさに圧巻であった。METのオケと合唱も、サン=サーンスの多彩な音楽をよく表現していた。

|

« 『リチャード・ジュエル』 | トップページ | 『ドクター・スリープ』 »

コメント

蜜のように甘い唇、しかし心には猛毒を持ち、男を惑わす女性。
マノンとか、カルメンとか、フランスには「魔性の女」が多いような気が・・・。
ドイツにはサロメがいるけれど、原作はフランスだし。
ジャンヌ・モローやブリジット・バルドーもいるし。(笑)

ガランチャいいですね。
カルメンでも観たことがありますが、この手の女性を演じるにうってつけの歌手です。
メゾの深い声と妖艶な容姿に魔性が潜んでいるようです。

投稿: ケイタロー | 2020/12/02 16:23

ケイタローさん
仰るとおりで、フランスの文化というか
人々の心の琴線に響くものがあるのでしょうね。
09年にカルメンを演じたガランチャの相手は
やはりアラーニャだったと思います。
まさに名コンビですね。

投稿: まこてぃん | 2020/12/03 09:52

この記事へのコメントは終了しました。

« 『リチャード・ジュエル』 | トップページ | 『ドクター・スリープ』 »