劇場版『みをつくし料理帖』
2020年、製作委員会。角川春樹監督、松本穂香主演。公式サイトの紹介文。
時代は享和二年の大坂。暮らし向きは違えども8歳の澪と野江は、まるで姉妹のように仲の良い幼なじみだった。「何があってもずっと一緒や」。しかしそんな二人が暮らす大坂を大洪水が襲い、澪と野江は生き別れてしまう。それから10年後。大洪水で両親を亡くした澪は引き取られ、江戸の神田にある蕎麦処「つる家」で女料理人に。野江は吉原にある遊郭に買い取られ、幻の花魁・あさひ太夫と名乗っていた。澪が苦心して生み出した料理が、別々の人生を歩む二人を再び引き寄せていく。(引用終わり)
髙田郁の同名小説を映画化。これまで北川景子主演の単発TVドラマが2本、黒木華主演の連続TVドラマが製作されてきたが、今回は版元の角川春樹が自らメガホンを取った劇場版が、まさに満を持しての登場となった。
全体に時代劇として大変オーソドックスな作りで、映像アングルやカット割り、セリフのテンポや間の取り方など、いずれもお手本のような完璧さである。ただ、ロケ地のせいだろうが、大坂や江戸の町から見えるはずがない山が、背後に映り込んでいるのは残念だ。
主演は若手女優の注目株とされる松本穂香。大阪・堺出身という同郷人の贔屓目を差し引いても、ベテラン揃いのキャスト陣の中で大健闘していたと思う。標準語と大阪弁、完全バイリンガルの彼女だけれど、江戸言葉に上方訛りが混ざるという芸当が出来れば、もう言うことなしの澪になるだろう。そこは、あるかもしれない続篇に期待することにしよう。
ところで角川映画と言えば、自分のような世代の人間にとっては、青春時代を風靡した数々の作品を思い出す。出版、映画、TV、ラジオなど各種メディアをタイアップした新しい宣伝手法が話題となったものだが、さすがに同じことが通用する時代ではなくなった。
たまたま同時期の公開となったアニメ映画がSNSや口コミで話題を集め、シネコン上映回数の大半を占める賑わいを見せているのを横目に、小さなスクリーンにシニア層がポツポツという状況は致し方ないところか。
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