『シャイニング』
1980年、英。スタンリー・キューブリック監督。ジャック・ニコルソン、シェリー・デュヴァルほか。144分版を放映したWOWOWの紹介文。
作家志望のジャックと妻ウェンディ、そして予知能力“シャイニング”を持つ5歳の息子ダニーは、ジャックがあるホテルを冬の間だけ管理する仕事のため、ロッキー山脈にある現地へ。だがそこはジャックと同じ仕事をしていた前管理人が家族を殺して自分も自害した、いわくつきの場所。やがて氷雪に閉ざされて密室と化したホテルで、一家は次々に不可解な事象を目撃。特に筆が進まないジャックの精神状態は極めて不安定になっていく。(引用終わり)
スティーヴン・キングの同名小説を映画化した、モダン・ホラーの金字塔とされるキューブリック監督の代表作だが、キング自身は原作にあった要素を大幅に削った本作が不満で、自ら製作と脚色を手掛けたTVリメイク版が作られたという。
そうした経緯はともかく、この映画は一見淡々と進む場面進行のさ中にも、またどんな美しい映像の瞬間にも、不可解で得体の知れない恐怖が終始漂っている。そうした映像効果を高めるため、あえて原作の要素の一部は切り捨て、むしろ謎のまま残すという手法を取ったのかもしれない。
次第に狂気に囚われていく作家を演じたジャック・ニコルソンの怪演が話題となり、斧で破壊したドアから覗く彼の顔のアップがジャケット写真に使われている。しかし、私見を言わせてもらえば、この種の演技はさほど難しくないように思える。元々のキャラクターとは無関係に、狂人という言葉から誰もが想像する表情や行動をなぞれば、何となくそれらしく見えてしまうのではないか。
それよりも、このニコルソンの視線の先にある、逃げ場を失った妻ウェンディを演じたシェリー・デュヴァルの迫真の演技こそ、このホラー映画最大の見せ場だと思う。もともと大きな目と口が大きく開かれ、その表情が膠着したままひたすら叫び続ける。人間が本当の恐怖に襲われたら、多分こんな風になるのだろうと思わせる。
キューブリック監督は、『2001年宇宙の旅』と同様、本作でも音楽を巧みに使って恐怖感を盛り上げている。バルトークやペンデレツキ、リゲティの音楽が、まるで本作のために作られたかのような効果を上げているのに舌を巻く。バルトークの「弦チェレ」のみ、カラヤン指揮のクレジットがついている。
なお、本作から約40年後、大人になった超能力者ダニー(ユアン・マクレガー)を襲う惨劇を描いた『ドクター・スリープ』が昨年封切られ、WOWOWで来月に放映される予定である。こちらも今から楽しみだ。
10月28日 ジョグ4キロ
月間走行 20キロ
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