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2020/09/03

最近の「クラシック音楽館」から

日曜夜にNHK・Eテレで「クラシック音楽館」という番組が放送されている。以前は「N響アワー」というタイトルだったと記憶するが、今もNHK交響楽団の定期公演を中心にしたクラシック番組である。最近はコロナのためN響定演が中止になっている関係で、過去のアーカイブ映像が放映されることが多いようだ。

最近では、8月16日に放送された「いまよみがえる伝説の名演奏・名舞台」と、同23日の「追悼レオン・フライシャー」の2本が大変興味深かった。

前者は、今は亡き巨匠指揮者たちの演奏会の記録映像を紹介したもので、そのうちカルロス・クライバーがウィーンフィルを振ったブラームスの交響曲第2番の演奏に惹きつけられた。少し前に観た「ばらの騎士」でも彼の指揮ぶりの片鱗を窺えたが、今回は1曲まるまる通して見ることが出来たのだ。

「ばらの騎士」の記事でも書いたが、まさに音楽を形にしたような流麗な動きは見飽きることがなく、手と指の繊細な動き以外にも、顔の表情や視線の動かし方ひとつで音楽の流れをコントロールしていて、最初から最後まで目が離せない。

また、弦楽器のボウイング(弓使い)は通常、アップ(上向き)とダウン(下向き)をパート内で統一するものだけれど、この演奏では一部奏者が逆に弾いているのが映像で確認できる。これは、第1楽章など3拍子の曲でボウイングを統一すると、小節ごとにアンバランスを生じることから、あえてクライバーの指示で「逆弓」にしているのだろうと、ゲスト解説者の高関健が説明していた。なるほど。

後者は8月2日に死去したピアニスト、レオン・フライシャーの追悼で、2009年10月の来日公演の模様が放送された。全てバッハの曲で、「羊は安らかに草をはみ」「旅立つ最愛の兄に思いを寄せる奇想曲」「半音階的幻想曲とフーガ」「シャコンヌ(ブラームス編曲)」の4曲である。バッハの音楽に真摯に向き合った演奏はいずれも素晴らしく、特に最後のシャコンヌは左手だけでこれだけ深い音楽が出来るものかと感嘆させられた。

フライシャーの手の動きもアップでよく見ることができる。本人も言っていたとおり、復活したあとでもなお、右手の薬指と小指が自然に内側に曲がってしまう様子や、小指の付け根辺りに外科手術の跡と思われる膨らみがあることが分かる。そういう障害を乗り越えた演奏であることが、映像を通して改めて分かるのである。また、理由は不明だが、ピアノに置かれていたのは通常の印刷譜ではなく、五線紙ノートに自ら手書きしたような譜面が用いられていた。

オペラはともかく、音楽は音だけに集中して聴くものと思っているが、こうやって映像と一緒になると、音だけでは分からない意外な情報が得られることもあるのだ。

9月2日 ジョグ2キロ

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