『よこがお』
2018年、日仏。深田晃司脚本・監督。筒井真理子、市川実日子、池松壮亮ほか。公式サイトの紹介文。
初めて訪れた美容院で、リサは「和道」という美容師を指名した。数日後、和道の自宅付近で待ち伏せ、偶然会ったふりをするリサ。近所だからと連絡先を交換し、和道を見送った彼女が戻ったのは、窓から向かいの彼の部屋が見える安アパートの一室だった――。リサは偽名で、彼女の本当の名前は市子。半年前までは訪問看護師として、その献身的な仕事ぶりで周囲から厚く信頼されていた。なかでも訪問先の大石家の長女・基子には、介護福祉士になるための勉強を見てやっていた。基子が市子に対して、憧れ以上の感情を抱いていたとは思いもせず――。
ある日、基子の妹・サキが行方不明になる。すぐに無事保護されるが、逮捕された犯人は意外な人物だった。この事件との関与を疑われた市子は、ねじまげられた真実と予期せぬ裏切りにより、築き上げた生活のすべてを失ってゆく。自らの運命に復讐するように、市子は“リサ”へと姿を変え、和道に近づいたのだった。果たして彼女が心に誓った復讐とは何なのか――。(引用終わり)
サキの誘拐事件を契機として、市子と基子の間の感情のすれ違いから、本人たちも予想もつかない事態に発展し、ついには泥沼のような非難と復讐の応酬に至ってしまう。
ストーリーそのものにさほど新鮮味はないけれども、主人公たちの感情が揺れ動く様子が、たとえセリフなしでも克明に描写されている。何と言っても、主役二人の演技力の高さによるところが大きいだろう。
もうひとつは、映像作品としての構成の巧みさである。市子が訪問看護師をしていた当時と、彼女がリサに名前を変えてからと、2つの時期の話が交互に出てくる展開は、そうと知らなければ混乱してしまうが、冒頭の美容院のシーンで市子が髪を染めるのがヒントになる。
それが分かった上で観れば、両方の時期のエピソードを相互に連関させながら、大変緻密に構成された作品であることが理解できる。ラスト近くのクラクションなど、巧みな音声効果も印象的だった。
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コメント
筒井真理子さん、上手いですね。
映画では同じ監督の「淵に立つ」くらいで、
脇役が多いイメージがあったんですが・・・
最近も「愛がなんだ」「ひとよ」に出てました。
投稿: ケイタロー | 2020/09/15 17:22
ケイタローさん
筒井真理子は今年還暦になるのですね。
それでも本作では池松壮亮とカラミを演じたり、
全裸のシーンまでありました。大したものです。
投稿: まこてぃん | 2020/09/16 08:39