歌劇「アラベラ」
シュトラウスとホーフマンスタールのコンビによる最後のオペラ。1933年初演。ショルティ指揮ウィーンフィルによる映画版を鑑賞。
19世紀後半のウィーン。没落貴族ヴァルトナー伯爵は美しい娘アラベラを金持ちと結婚させ、経済的苦境を脱したいと考えている。アラベラには士官マッテオをはじめ求婚者が何人もいるが決めかねているうち、ハンガリーからやって来た大地主マンドリカをふと見かけ心惹かれる。舞踏会で対面した二人は互いに一目ぼれして将来を誓い合う。
一方、経済的事情から男の子として育てられているアラベラの妹ツデンカは、マッテオに密かな恋心を抱きながらも、彼の姉への思いを成就させようと画策するが、とんでもない誤解を生んでしまい…。
「第二の『ばらの騎士』」を目指して書かれた作品である。初演当時、ウィーンは第一次大戦敗戦後の社会的混乱のさ中にあり、シュトラウスとホーフマンスタールは、ハプスブルクの伝統への回帰により秩序の回復を図ろうとしたと考えられている。
ヒロインのアラベラは自分で結婚相手を決められない受動的な女性であるが、紆余曲折の末、熱烈に求婚された相手と結婚して家庭を築くという幸福を得るに至る。それこそが古き良きウィーンの生き方であるというのだが、オペラの主人公としては若干キャラクターが弱い感じは否めない。
それよりも、妹ツデンカの方が遥かに面白い存在で、後半では実質的な舞台回し役を担っている。実際、本作の前身となったホーフマンスタールの短篇小説「ルツィドール」は、本作のツデンカに相当するルツィドールが主人公なのである。
しかし、ツデンカが行なったことは決して褒められたことではなく、一歩間違えば血みどろの決闘騒ぎになっていたはずである。結果オーライでハッピーエンドだからいいじゃないかと言えばそれまでだが、その辺も含めての懐古趣味のメロドラマというべきか。
ただ、シュトラウスの音楽の素晴らしさは「第二の『ばらの騎士』」に恥じず、ショルティ指揮ウィーンフィルの演奏は作品世界を見事に再現している。歌手陣では、何と言ってもタイトルロールのヤノヴィッツの透明でリリックな歌唱が素晴らしい。残念ながら映像では年を隠せず、カザリアン演じるツデンカと並ぶと、姉というより母親にしか見えないのが玉にキズだが。(笑)
8月9日 ジョグ2キロ
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コメント
あぁ、これは観たことがありません。
シュトラウス&ホフマンスタールは
勝手にBest3
①「ばらの騎士」
②「ナクソス島のアリアドネ」
③「エレクトラ」
以外、観たことがなくて・・・(^^!
ヤノヴィッツは何でも歌ってしまうって感じで、
シュヴァルツコップも・・・
やはり長生きが大事ですね。
そういえばフィッシャー=ディースカウも・・・
僕の勝手なイメージですが。(^^)
(脈絡のない話ですみません)
投稿: ケイタロー | 2020/08/12 09:15
ケイタローさん
「ばらの騎士」がお好きでしたら、
こちらも是非どうぞ。比較するのも一興かと。
ヤノヴィッツはレパートリーが広かったですね。
その辺もカラヤンに愛用された理由だったのかも。
投稿: まこてぃん | 2020/08/12 21:09