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2020/08/31

歌劇「ルル」

Luluベルクの遺作となったオペラ。初演は1937年だが、未完に終わった第3幕をツェルハが補筆完成した全幕版がブーレーズ指揮で初演されたのは1979年になってである。今回鑑賞したのは2015年メトロポリタンオペラ公演の録画。METライブビューイングの紹介文。

20世紀初め、ドイツのある町。町で出会った少女ルルを連れ帰って育てたシェーン博士は、彼女に惹かれながらも官僚の令嬢と婚約し、ルルは医者のゴル博士に嫁がせる。男という男を魅了するルルは画家と浮気をし、現場を目撃したゴル博士は悶死。ルルはシェーン博士の妻の座を手に入れる。だが男女を問わず奔放な関係を続けるルルに、逆上したシェーン博士はピストルを突きつけるが、逆にルルに殺されてしまう。投獄されたルルは女の恋人の手引きで脱獄するが、もはや体を売るしか生きる道は残されていなかった・・・。(引用終わり)

ヴェーデキントの戯曲「地霊」「パンドラの箱」をもとにした歌劇。既成のモラルにとらわれず奔放に生きる女ルルは、彼女に魅入られた男女を次々と破滅させながら、ついには自らも悲惨な死を遂げる。初演当時から音楽界に大きな衝撃を与えた、20世紀オペラ最大の問題作とされる。

「ルル」とは一体どういう存在なのか。本公演の演出家ケントリッジはインタビューで、ただ「魔性の女」とか「犠牲者」と決めつけない方が興味深いと語っている。彼女は多面性を有しながら、その断片しか見せないのだという。その象徴なのか、彼女はルル以外にもネリー、エヴァ、ミニョンという名前で呼ばれ、シェーン博士にすら「本当の名は分からん」と言わせる始末である。

本公演をもって18年間演じてきたこのタイトルロールを卒業したマルリース・ペーターセンの歌唱と演技はさすがで、ルルが憑依したかのような迫真のパフォーマンスを見せていた。また、前回観た「ヴォツェック」のフランツ・グルントヘーバーが、謎の老人シゴルヒ役で健在ぶりを発揮している。

音楽的には十二音技法を駆使した無調音楽でありながら、一方ではヴィブラホンやサックスを導入した響きはジャズの影響を感じさせ、斬新かつ多様性のある音楽はベルクならでは。初演時は最初の2幕と「歌劇<ルル>からの交響的小品」(<ルル>組曲)の一部という形で上演されたそうだが、オペラのハイライトとも言えるこの組曲だけでも面白く聴ける。アバド指揮ウィーンフィル、ユリアーネ・バンセ独唱のCDがたまたま手元にあり、METオケとは一味違った濃厚な響きを堪能することが出来た。

8月30日 ジョグ2キロ
月間走行 14キロ

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コメント

このMET。
僕にとって初めて観たベルクのオペラでした。
こりゃ絶対音がないと歌えないだろうなぁ、が第一印象でした。
あるいは、多少はずしても分からない?(^^)

男が勝手にすり寄って、勝手に自滅してゆく。
こいう女性って・・・幸い会ったことはないけれど。
無調の不気味なメロディがぴったりです。

それにしても
「ルル」にしろ「ヴォツェック」にしろ・・・ドイツって感じですね。
内面を深く掘り下げる芸術には、ある種の暗さが必要なんでしょうか。
「西欧の陰鬱」がベートーベンの音楽を、レンブラントの絵画を、ゲーテの詩を生んだというけれど・・・。
アルプスの南とは違う世界です。

投稿: ケイタロー | 2020/09/01 09:13

ケイタローさん
自然環境の違いというのもありますが、
ゲルマンとラテンという民族の違いによるところも
大きいような気がします。…て、よう知らんけど。(笑)

投稿: まこてぃん | 2020/09/01 17:52

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