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2020/07/29

歌劇「ばらの騎士」

Rosenkavlierシュトラウスとホーフマンスタールのコンビによる最高傑作とされる作品。2017年のMET公演と、1994年のクライバー指揮ウィーン国立歌劇場の公演、それぞれの録画を鑑賞。METライブビューイングの紹介文。

ハプスブルク王朝下のウィーン。元帥夫人マリー・テレーズは、年下の青年貴族オクタヴィアンと情事を重ねていた。ある朝、逢引の余韻に浸っている夫人の部屋に、従兄のオックス男爵が訪ねてくる。成り上がり貴族の娘ソフィーと婚約したオックスは、婚約のしるしである「銀のばら」を婚約者に届ける青年貴族を紹介してほしいと頼みに来たのだった。ふと、いたずら心を起こした元帥夫人はオクタヴィアンを推薦するが、「銀のばら」の使者としてゾフィーのもとを訪れた彼はゾフィーと恋に落ちてしまい…。(引用終わり)

「サロメ」「エレクトラ」と来て、次はまたどんな凄絶なオペラだろうと思いきや、擬古典的な趣向を凝らした、まさかのメロドラマである。「モーツァルト風」を目指していたといい、実際「フィガロの結婚」を下敷きにしたようなストーリーである。

タイトルの「ばらの騎士」とは、紹介文にある「銀のばら」を届ける使者のことだが、実はこれは全くの作り話で実際にはそんな習慣はないそうである。また、作品中で奏でられるウィンナワルツが流行したのは19世紀に入ってからで、時代考証的にはおかしな話のはずである。

しかし、そうしたことを含めて、過ぎ去りつつある時代への惜別を籠めた、美しくも虚構の世界の中だけの大人のラブストーリーが綴られる。そして、この作品でもまた、否これまで以上にシュトラウスの巧みな音楽が全篇を彩っている。無調音楽に近づいた前衛的な前2作とは打って変わり、親しみやすく甘美な音楽が、絢爛豪華な管弦楽法によって万華鏡のように展開していく。

MET公演では、元帥夫人のルネ・フレミングとオクタヴィアンのエリーナ・ガランチャが、それぞれこの公演をもって役を引退することになり、両者の万感の思いがこもった歌唱と演技が見ものだった。「ものには終わりがあるのよ」という元帥夫人のセリフは、そのままフレミング自身の声でもあっただろう。

一方、ウィーン国立歌劇場に9年ぶりに登場したクライバー伝説の94年公演では、クライバーがピットに登場しただけで場内が盛り上がる。前奏曲を振るクライバーの指揮姿は躍動感に溢れ、まさに音楽を形にしたような動きをずっと見ていたいぐらいだった。

歌手陣では、元帥夫人のフェリシティ・ロットが品位ある歌唱と演技を見せる一方、オクタヴィアンのフォン・オッター、ゾフィーのバーバラ・ボニーのカップルがとても初々しく、オットー・シェンク演出のオーソドックスながらやや古臭い舞台を華やかにしていた。

ところで、メゾソプラノが男装で演じるオクタヴィアンと、ソプラノの元帥夫人やゾフィーとの二重唱、三重唱を見ながら、ふとこれは宝塚歌劇の世界に通じるものがあると思った(よう知らんけど・笑)。調べてみると、実際本作を元にした「愛のソナタ」というミュージカルが月組公演で上演されていて、新・東京宝塚劇場の杮落とし公演にもなったそうである。音楽はさすがにシュトラウスのオリジナルではないようだが。

7月29日 ジョグ4キロ
月間走行 19キロ

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コメント

待ってました!「ばらの騎士」
前衛的な「サロメ」や「エレクトラ」とちがって、わかりやすい音楽で、僕は大好きです。
たしかにシュトラウスの「フィガロ」。
他愛のないストーリーですが(失礼)・・・音楽はあきらかに20世紀。
大したアリアもないのに(失礼)・・・魅惑のメロディが18世紀のウィーンに誘ってくれます。
シュトラウスはホルンがいいですね。

そしてワルツ。
というわけでクライバー。
「ばらの騎士」は十八番。
1994年にはウィーン国立歌劇場と来日。東京公演とあまりの高額チケットに、遠くから眺めていた記憶があります。でも本当に来るのか?なんて、キャンセルが多かったし、公演と録音は少なかったし、伝説の天才指揮者でした。
ニューイヤーコンサートの優雅な指揮ぶりを思い出します。TVですが・・・。(^^)

投稿: ケイタロー | 2020/07/29 20:42

ケイタローさん
お待たせしました。(笑)

確かにこのオペラは重唱曲が聴きもので、独唱では
第1幕最後の元帥夫人のモノローグぐらいですね。
途中に挿入される「イタリア人テノール」のアリアは
本筋と全く無関係で、シュトラウス曰く「最も美しく、
最も内容のない」アリアを意図したのだとか。

リヒャルトの父フランツがミュンヘン宮廷管弦楽団の
主席ホルン奏者を務めていた関係で、ホルンはとても
思い入れある楽器だったようです。協奏曲も有名です。

クライバー、本当に水を得た魚という感じですが、
それにピタリと合わせるウィーンフィルも流石です。
ヴァイグレ指揮のMETオケと聴き比べてみましたが…
なんてな野暮な話はヤメにしておきましょう。(笑)

投稿: まこてぃん | 2020/07/30 20:34

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