« 『ファーストラヴ』 | トップページ | セルのブルックナー第8番 »

2020/07/17

楽劇「サロメ」

Salomeリヒャルト・シュトラウスのオペラでは最初の成功作となった作品。ベーム指揮ウィーンフィル他による映画版を鑑賞。

新約聖書の小さな挿話をもとにオスカー・ワイルドが創作した同名の戯曲を台本とする。もともと聖書では洗礼者ヨハナーン殺害のきっかけとなったものの、名前すら明示されていない「ヘロディアスの娘」を主人公に、ワイルドは世紀末の頽廃感濃厚な異常性愛の物語に変貌させ、それをシュトラウスの爛熟した極彩色の音楽が彩る。

あまりに官能的、不道徳であるとして、当初は各地で上演禁止となるほどのセンセーションを巻き起こした問題作で、特に後半でサロメが7枚のヴェールを順に脱ぎながら踊る場面と、その褒美として希望したヨハナーンの生首にサロメが接吻する場面は衝撃的である。

そのショッキングな内容にもかかわらず、いやだからこそか、シュトラウスの音楽の素晴らしさが本作最大の魅了だ。序曲、前奏曲もなくいきなり衛兵隊長ナラボートの歌から始まり、全1幕途切れることなく大河のように流れる音楽は極めて雄弁である。全体のストーリーはもちろん、場面場面の具体的な状況や、極端に言えば歌詞の単語ひとつに至るまで音で表現している。

たとえば第4場でヘロデが「大きな翼の羽ばたき」の幻聴に慄く場面では、本当に風のような音が聴こえる。交響詩「ドン・キホーテ」でも同じような表現があり、シュトラウス自家薬籠中の技なのだ。また、ヘロデがダンスの褒美としてサロメに提案する様々な宝物を表す音楽は、まるで万華鏡のように千変万化する。

タイトルロールはテレサ・ストラータス。細身で可憐な容姿はサロメに打ってつけで、ジャケット写真のようにカツラを被った前半の無邪気さから、後半では髪を下ろし、早くも一人の女として魔性を発揮するまでのドラマチックな変化を演じ切っている。問題のダンスは映画版なのでいかなる映像操作も可能で、一瞬だけ後ろから映る裸体は体格があまりに違うのでおそらくボディダブルだろう(笑)。ヨハナーンのベルント・ヴァイクル、ヘロディアスのアストリッド・ヴァルナイら脇役も素晴らしい。

7月15日 ジョグ3キロ

|

« 『ファーストラヴ』 | トップページ | セルのブルックナー第8番 »

コメント

生首と女
お盆にのった生首にそっとキスするサロメ
血の滴る生首を持ち微笑むユディト
可憐な表情の裏に隠された魔性
ティツィアーノやカラヴァッジョなどの絵もゾッとします
男女が逆になると単なる猟奇殺人(^^)
命を生む女性は死をも司るのですね

シュトラウスの音楽が加わると、さらに官能的です。
サロメ歌手は細身じゃなきゃダメだし、出ずっぱりで、歌えて踊れて演技できる難役。
さすがに「七つのヴェールの踊り」は代役の時が多いように思います。
ヴェールを1枚1枚脱ぎ捨て、最後はビキニ姿で・・・なんてドキドキする演出も。
映画だともっとリアルにできるでしょうね。
美貌のストラータス、調べてみたらのご存命でした。すみません(^^!

デビッド・フィンチャーの『セブン』もぜひ!

投稿: ケイタロー | 2020/07/18 09:09

ケイタローさん
もしかして、絵画にもお詳しいのですか?
検索して見てみましたが、平然とした美女の顔と生首、
確かにぞっとしますね。夢に出てきそうです。(汗)
「セブン」は2年ほど前に観ました。
http://makotin.cocolog-nifty.com/blog/2018/09/post-517c.html
映像のイメージ以外、筋とかは忘れましたが。(笑)

投稿: まこてぃん | 2020/07/18 17:52

いえいえ、全然お詳しくありません。(^^!
ただ、絵も大好きです。
カラヴァッジョは、今年初め、あべのハルカスで観ました。
「ホロフェルネスの首を斬るユディト」が来るはずだったのですが、手違いでイタリア政府の搬出許可が出なかったらしく・・・残念でした。
「ゴリアテの首を持つダヴィデ」にはゾッとしましたが、やはり男の首を狩るのは美女のほうが・・・(^^)
サロメもユディトも、官能的なテーマが多くの芸術家を惹きつけるんでしょうね。

本邦では
原田マハ「サロメ」(文春文庫)
ビアズリーの表紙に思わず・・・装丁の勝利。内容も面白いです。

投稿: ケイタロー | 2020/07/19 07:52

確かマルフィターノは全裸になりましたよね(いきなり、そういう話で出てくる..)。凄い話?といえば、どういう経緯でそういう演出になったのか?という男が裸体で踊ったというのもあったようです。ブーイング凄かったとか。最後は剣で刺すのが定番ですが、最近はピストルで撃ち殺すとか、様々。サロメはストラータスのような細身がいいと思うのですが、踊りもやって歌いきるには相当な体力が必要。現在、なかなか適する方が出てきませんね。マルトンの「サロメ」も観ましたが、華奢な体格とは対照的で(^^;。そういえば、ジェシー・ノーマンも「サロメ」ありましたね。これはさすがに...。//お体の近況、拝読しました。今は医学も進歩していますから、今後もいろいろ音楽等に接し、平穏な日々をお過ごしください!!8月に京都、大阪出張があったのですが、コロナでとりやめになりました...。ジャンジャン横丁とか行きたかったのですが。では!

投稿: frun高橋 | 2020/07/19 16:19

ケイタローさん
いえいえ、もう十分お詳しいかと。(笑)
原田マハ『サロメ』はビアズリーが主人公のようですね。
表紙はともに彼の作品で、単行本が「クライマックス」、
文庫本が「舞姫の褒美」というタイトルの線画ですね。
手元にあるオペラ解説書に並んで出ていました。

frun高橋さん
歌だけで言えばビルギット・ニルソンがベストでしょうが、
映画に起用するのはちょっと無理があります。
と、これも解説本に書いてありました。(笑)
お気遣いありがとうございます。ほぼ音楽漬けの毎日です。
また関西に来られる機会があればご連絡下さい。

投稿: まこてぃん | 2020/07/19 20:55

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 『ファーストラヴ』 | トップページ | セルのブルックナー第8番 »