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2020/07/26

セルのウィンナワルツ

Strauss_20200724185801“冷徹な完璧主義者”とも称されるジョージ・セルがウィンナワルツ? 指揮者活動50周年を記念して作られたというけれど、ほとんど冗談のような取り合わせのCDを聴いてみたら、これが結構面白かったのだ。

1曲目からど真ん中直球勝負の「美しく青きドナウ」。冒頭の弦のトレモロと、これに乗っかるホルンのメロディは実に美しく、いきなり心を掴まれてしまった。これがアメリカのオケの音とは信じられない。

たっぷり歌う前奏に続いて、第1ワルツでは何とウィンナワルツ独特の2拍目3拍目の微妙なズレがちゃんと出来ている! 第2ワルツ以降はなぜか普通の3拍子になるけれど。(笑)

2曲目の「ピツィカート・ポルカ」はセルの面目躍如。どうやったらこれだけピツィカートがピタリと合うのだろう。以下、シュトラウスファミリーの名曲「うわごと」「春の声」「オーストリアの村燕」と続くが、いずれもよく歌う弦楽器を中心に、オーケストレーションの細部まで見通しの良い演奏である。

6曲目の「常動曲」では速いパッセージも何のその、クリーヴランド管の名人芸が冴え渡り、「参りました!」というところで、セル自身の声で “and so forth” (などなど)とユーモラスに締める。ラストは「こうもり」序曲で、これから本当にオペレッタが始まりそうな雰囲気を残して締め括る。

長年クリーヴランド管弦楽団に君臨したセルは、ハンガリー出身ではあるものの幼少期からウィーンで音楽を勉強し、16歳(!)での指揮者デビューもウィーン交響楽団とであったという。

セルの音楽的バックボーンはウィーンにあり、ウィーン流の音楽語法が血となり肉となっているのだろう。このアルバムでも、独特のリズム感や細かい歌い回しの部分ではさすがに「本場もの」には及ばないものの、そうしたセルの原点を十分に感じさせる演奏となっている。

一見妙な取り合わせのウィンナワルツ集を50周年記念にしたのは、実は意外でも何でもなかったのだ。

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