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2020/06/11

『アメリカン・ビューティー』

Americanbeauty1999年米。サム・メンデス監督、ケヴィン・スペイシーほか。映画ドットコムの紹介文。

郊外の新興住宅地に暮らす夫婦と娘の三人家族。夫婦仲は冷め、娘は親と意思の疎通がない。おかしな青年とゲイ嫌いの父親がいる隣家も同様の家庭だ。だが夫がリストラに遭い、娘の友人に性的妄想を抱き、妻は浮気、娘は隣家の青年と駆け落ちを決意し……。コミカルで辛辣な家庭崩壊ドラマ。アカデミー作品賞、監督賞、主演男優賞、脚本賞、撮影賞の5部門を獲得。(引用終わり)

一見ごく普通の中流家庭を構成する登場人物たちの突然の行動変化が、ともすればマンガ的なほど分かりやすく描写され、またジャケット写真に象徴される性的なエピソードも頻繁に登場する。最初に観終えた瞬間は、何だか浅薄で悪趣味で嫌味なブラックコメディのように感じた。

しかし、時が経つにつれ、じわじわと底知れぬ恐ろしさが忍び寄ってきた。ここに登場するのは、どこかの知らない住宅地に住む「彼ら」だけれど、それはもしかしたら明日の「あなた」に起こるかもしれない話なのだ。

一見平和で平凡な日常生活を送る現代人の内面に潜む不安や不満、虚栄心、秘められた願望、破壊や逃走への衝動などが、遠慮会釈なく白日のもとに晒されていく。これは、そういうとても怖い映画なのだ。「自分はそんなのとは関係ない」と仰る(あるいは思い込んでいる)幸せな聖人君子諸氏に、この映画はお勧めできない。

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コメント

登場人物全員が病んでいる映画。(笑)
当時は、えぇっ!あり得ないよなぁって印象でしたが・・・
あれから20年。今なら単なるブラックコメディで、オスカーはないかもしれませんね。

ケヴィン・スペイシーは「ユージュアル・サスペクツ」や「セブン」もいいですが、ボビー・ダーリンの半生を描いた「ビヨンドtheシー」が好きです。本人が歌って多才なところを見せています。
不思議な雰囲気があって好きでしたが、男性へのセクハラ疑惑など、その後の転落の人生をみると・・・やっぱり病んでいたんですね。(^^!

投稿: ケイタロー | 2020/06/13 11:55

ケイタローさん
タテマエよりホンネ、自己中心主義、社会の分断…
今のアメリカの病理を予言していたかのようです。

家族の食卓で突如キレるケヴィン・スペイシー、
まさに迫真の名演技でしたね。

投稿: まこてぃん | 2020/06/14 09:28

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