『ロング・エンゲージメント』
2004年仏。『アメリ』と同じ、ジャン=ピエール・ジュネ監督、オドレイ・トトゥ主演。アマゾンの紹介文。
第一次大戦下のフランス。前線の塹壕を5人の兵士が連行されて行く。過酷な戦場から逃れるため自らの身体を傷つけたフランス兵たちだ。彼らは刑のかわりにドイツ軍の標的となるような敵陣との中間地点に置き去りにされた。そのなかの最も若い兵士がマチルドの婚約者マネクだった。
終戦後も全く音沙汰のないマネクの安否を気づかうマチルドのもとに、戦場で彼に出会ったというエスペランザから手紙が届く。その日からマチルドの懸命な捜索が始まった。プロの探偵を雇い、新聞に告知を出し、必死に捜索を続けるマチルド。兵士たちの知人など関係者が浮かぶたびにどこにでも出向き、さまざまな出会いと証言を重ねていく。
だがマネクの最期を見たものは一人もいない。「マネクに何かあれば、私にはわかるはず---」果たして、その愛の直感は、奇跡を起こし、マチルドを彼へと導くのか?(引用終わり)
戦争で生死行方ともに不明になった恋人を探し求めるという単純なストーリーだけれど、登場人物の人間関係がかなり複雑で、そこを押さえておかないとマチルドの捜索の内容が分からない。『アメリ』でもそうだったが、この監督の作品は説明が極端に少ないので、最初観たときは途中でついていけなくなり、再度メモを取りながら観直す破目になった。
しかし、それだけの価値はある作品だ。悲惨な戦争に引き裂かれた男女の愛。マチルドは小児麻痺の体をおして恋人を探し求めるが、別の女性は恋人を殺した人間への復讐に執念を燃やす。やむを得ない事情で不倫に至ってしまった過去を隠して生きる未亡人、別人に成りすまして密かに戦後を生き延びる元兵士もいる。
そういった様々なエピソードが、ひとつひとつ丁寧に描かれているけれど、それがセリフによる説明ではなく、美しい映像によって直感的に表現されているのが本作最大の特徴であろう。ラスト近く、マチルドが川岸の東屋で化粧直しするシーンは、ルノアールの絵画のような美しさに圧倒される。また、畑の中で農夫が兵隊に徴用される僅か十数秒のシーンですら強い印象を残すが、そのためにわざわざ麻を一から栽培し、ヘリで草を揺らして撮影したというから恐れ入る。
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コメント
「再度メモを取りながら観直す」とは、まこてぃんさんらしい。(笑)
僕は映画館で観た記憶しかないのですが、たしかに誰が誰だかごちゃごちゃしていたような。
第一次大戦のリアルな塹壕戦が印象に残っています。
<戦争で行方不明の○○を探す映画Best5>
①「ひまわり」
②「ディア・ハンター」
③「地獄の黙示録」
④「プライベート・ライアン」
⑤「地獄の7人」
ごく個人的な好みです。
投稿: ケイタロー | 2020/06/17 15:02
ケイタローさん
メモを取って整理しながら観ていると、
主人公と一緒に推理を進めているような
気分にもなれて、結構楽しかったです。(笑)
それより、どんなテーマでもベスト5が出てくるのが
いかにもケイタローさんらしくて感心しています。
投稿: まこてぃん | 2020/06/18 08:37
リクエストに応えて・・・(笑)
<第一次世界大戦の塹壕戦映画Best5>
①「西部戦線異状なし」
②「1917命をかけた伝令」
③「ザ・トレンチ(塹壕)」
④「ヘル・フロント~地獄の最前線~」
⑤「彼らは生きていた」
このブログのおかげで、今まで観た映画を思い出すことができてありがたいです。
投稿: ケイタロー | 2020/06/18 13:23
ケイタローさん
これまたマニアックなベスト5、有難うございます。(笑)
①②以外はタイトルも知らない作品ばかりです。
②は「アメリカン・ビューティー」のサム・メンデス監督の最近作でしたね。
投稿: まこてぃん | 2020/06/19 10:48