歌劇「運命の力」
ヴェルディのオペラでまだ観る機会がなかった本作が、最近NHKBSプレミアムで放映された。ネトレプコとカウフマンの共演で話題になった2019年3月の英国ロイヤルオペラ公演である。公式サイトの紹介文。
18世紀中葉のスペインとイタリア。貴族の名家に生まれたレオノーラはインカ帝国の血を引くドン・アルヴァーロと恋仲だが、二人が駆け落ちしようとした夜にレオノーラの父侯爵に計画が発覚し、ドン・アルヴァーロが攻撃する意図がないことを示すために床に投げた銃が暴発して侯爵の命を奪ってしまう。恋人達は離れ離れに。親の仇であるドン・アルヴァーロを執念深く追うレオノーラの兄ドン・カルロ。レオノーラは修道院の扉を叩き、山中の庵に身を隠して一人で神に祈る生活を選ぶ。運命は最後に愛し合う二人をもう一度めぐり合わせてくれるのだが…。(引用終わり)
「運命の力」と言えば序曲が大変有名で、吹奏楽にも編曲されたりしているけれど、オペラ全体が上演される機会は実はそう多くない。イタリアオペラのご多分に洩れず作為的で冗長なストーリー展開に加え(第3幕最後の乱痴気騒ぎは一体何?)、力強くドラマティックな声を求められる主役級を歌える歌手が少ないためだという。
本公演ではレオノーラにアンナ・ネトレプコ、アルヴァーロにヨナス・カウフマンと、歌唱、演技、容姿の三拍子揃ったスターを起用し、さらにカルロにルドヴィク・テジエ、グァルディアーノ神父にフェルッチョ・フルラネットなど、脇役にも実力者を配している。ヴェルディの音楽の素晴らしさ、音楽監督パッパーノの熱い音楽づくりが相俟って、音楽劇としての完成度はこれまで観たヴェルディの他の作品にも劣らない。
クリストフ・ロイによる演出は、全幕を通じて、上から見ると「へ」の字のような形の大道具を共通して用い、それが第1幕では公爵邸(序曲の間に兄妹の幼時が演じられる)になり、第2幕以降は居酒屋や戦地や修道院になりと、うまく使い回している。後方の壁に侯爵が撃たれた場面などの映像が回想的に投影されるのも効果的だった。
月間走行 26キロ
最近のコメント