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2020/03/16

『イングリッシュ・ペイシェント』

Englishpatient1996年、米。アンソニー・ミンゲラ監督。レイフ・ファインズ、ジュリエット・ビノシュ他。WOWOWの紹介文。

第2次世界大戦中だった1944年、イタリア。飛行機事故で全身にやけどを負い、記憶を失った男性アルマシーが野戦病院に運び込まれてくる。アルマシーが献身的な看護婦ハナに語りだす、彼が体験してきた愛と冒険の思い出とは…。アルマシーはハンガリーの伯爵家に生まれた冒険家で、かつてはアフリカの砂漠で地図作りに没頭していて、1938年、アフリカの地で人妻キャサリンと出会い、彼らは熱愛の仲に落ちたというが…。(引用終わり)

第2次大戦さなかの不倫愛とその悲劇的な結末までの顛末を、火傷で顔も爛れ瀕死状態に陥った主人公が回想するという形式で進行する。その数奇な物語もさることながら、アフリカの砂漠の圧倒的なスケールと、それに対する小さくとも愛しい人間の生の対比が鮮やかな、映像による叙事詩である。

イタリアの廃墟となった修道院で奇妙な共同生活を始めた男女4人の人間関係も興味深い。生と死、出会いと別れ、怨念と復讐、そして赦し。大戦前後に世界各地で生起したであろう夥しい数の悲喜劇の縮図が、そこに凝縮されているように感じた。

アフリカの砂漠を舞台とした英国の軍事諜報作戦が主要なテーマのひとつになっていて、その点『アラビアのロレンス』と通じるものがある。もしかして、英国人の心象風景のどこかに、砂漠に対する憧れのようなものがあるのだろうか。ケテルビー「ペルシャの市場にて」もまた然り。

3月16日 ジョグ5キロ

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コメント

若き日のビノシュ。献身的な看護婦さんでしたね。
先週「私の知らないわたしの素顔」という最新作で、56歳の彼女を観たところで・・・
時の流れを感じました。
「存在の耐えられない軽さ」以来のファンです。

おっしゃる通り、アフリカの砂漠ということで「アラビアのロレンス」を想起させます。
「ペルシャの市場にて」も砂漠を行くキャラバンですね。
憧れもあるでしょうが、大英帝国の宿痾というか、植民地主義の視線も感じます。(考え過ぎか?)
ちなみに、砂漠というと「シェルタリング・スカイ」、アメリカの砂漠ですが「バグダッド・カフェ」を思い出します。

投稿: ケイタロー | 2020/03/18 20:53

ケイタローさん
ビノシュは河瀬直美監督の『Vision』(2018)にも
出演していて、スチルを見る限りまだまだ綺麗ですね。
この監督は食わず嫌いで1本も観てませんが。(苦笑)
「大英帝国の宿痾」というのは確かにありそうで、
アフリカにしろインドにしろ、支配対象という見方が
まず根底にあるのを感じてしまいます。

投稿: まこてぃん | 2020/03/19 17:43

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