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2020/02/17

『ドクター・デスの遺産』

321511000308中山七里著。版元の紹介文。

警視庁にひとりの少年から「悪いお医者さんがうちに来てお父さんを殺した」との通報が入る。当初はいたずら電話かと思われたが、捜査一課の高千穂明日香は少年の声からその真剣さを感じ取り、犬養隼人刑事とともに少年の自宅を訪ねる。すると、少年の父親の通夜が行われていた。少年に事情を聞くと、見知らぬ医者と思われる男がやってきて父親に注射を打ったという。日本では認められていない安楽死を請け負う医師の存在が浮上するが、少年の母親はそれを断固否定した。次第に少年と母親の発言の食い違いが明らかになる。そんななか、同じような第二の事件が起こる——。(引用終わり)

この作家のデビュー作で「このミステリーがすごい!」大賞を受賞した『さよならドビュッシー』の映画版や、『ヒポクラテスの誓い』のドラマ版は観たことがあるが、活字で読むのは初めて。他にも『おやすみラフマニノフ』や『どこかでベートーヴェン』など、クラシック音楽を織り込んだミステリーがいくつかあるようである。

さて、本作は安楽死の是非という重いテーマを主軸に据えながら、1件20万円で安楽死を請け負い「ドクター・デス」を名乗る謎の人物と、現行法上は殺人に当たるとしてその罪を追及する刑事の対決という、正統派ミステリー作品に仕上がっている。刑事自身、実の娘が難病と闘っていて、職業上の倫理観と個人的な感情が相反するという設定も、作品に重層的な深みを与えている。

「どんでん返しの帝王」と称される作家だけあって、ようやく犯人を確保したと思いきや、その足元を掬われるような仕掛けが待っていて、一瞬茫然としてしまうほどである。もちろん、最終的には全て辻褄があっているわけだけれど、そのための手がかりが最後になって出てくるのは、全体の構成上やむを得ないとはいえ少し残念である。

ところで、本作を読むことになった理由は単純で、既に映画化が決定していてこの人が明日香役を務めるからである(笑)。11月の公開が今から楽しみだ。

 

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