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2020/02/02

『運び屋』

Mule2018年、米。クリント・イーストウッド監督、主演。アマゾンの紹介文。

イーストウッド演じるアール・ストーンは90歳の男。家族と別れ、孤独で金もなく、経営する農園には差し押さえの危機が迫っていた。そんな時に、ある仕事が舞い込む。ただ車を運転すればいいだけの訳もない話だ。しかしアールが引き受けてしまったのは、実はメキシコの麻薬カルテルの“運び屋”だった。たとえ金銭的な問題は解決しても、過去に犯した過ちが、アールに重くのしかかってくる。捜査当局やカルテルの手が伸びてくる中、はたして自らの過ちを正す時間は彼に残されているのか。(引用終わり)

同監督の作品は『15時17分、パリ行き』以来。そこでも書いたけれど、本作も実話をベースにして製作されている。

カネ欲しさから麻薬運搬に手を染めてしまった老人が、麻薬組織と捜査当局双方に追われることになるクライムサスペンスかと想像していた。そういう要素も少しはあるが、さすがに派手なカーチェイスがあるわけでもなく、犯罪そのものの結末は実にあっけない。

それよりむしろ、大金を稼いでも満たされることのない主人公の心の空白と、それを埋めるのはこれまで顧みなかった家族への愛しかないことに今さら気づいた無念といったことが、本作の大きなテーマとなっている。

それにしても、御年88歳のイーストウッドの格好良さはどうだろう。面相はさすがに老人というしかないが、しゃんと背筋を伸ばし、カーラジオに合わせて鼻歌を歌いながら運転するさまは、孤独さえも自己の一部にして飄々と、だがしたたかに生きる一人の男として、まことに絵になっている。

 

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コメント

米寿ですか。
「運び屋」では、さすがにおじいちゃんですね。(^^!
若いときのマカロニウエスタンや「ダーティハリー」も格好よかったですが、イーストウッドは年取ってからがいいです。とくに監督としての活躍は目を見張るばかり。どの作品も完成度が高く甲乙つけがたいですが、あえて個人的な趣味でベスト10を選ぶと・・・
1 「ミスティック・リバー」
2 「許されざる者」
3 「ミリオンダラー・ベイビー」
4 「チェンジリング」
5 「パーフェクト・ワールド」
6 「インビクタス/負けざる者たち」
7 「グラン・トリノ」
8 「アメリカン・スナイパー」
9 「マディソン郡の橋」
10 「バード」
う~ん、難しいなぁ。とても10には収まらない。すみません、他にも名作がいっぱいあります。
アトランタ五輪の爆破犯?「リチャード・ジュエル」が公開中。衰えを知らないフィルムメーカーです。

投稿: ケイタロー | 2020/02/03 17:31

ケイタローさん
お恥ずかしながらベスト10を選ぶどころか、
挙げられた作品ではまだ3つしか観ていません。
最近の作品のほとんどが実話ベースということは、
いまの社会に対する関心が強いということで、
それも想像力、若さを維持する秘訣かもしれません。

投稿: まこてぃん | 2020/02/04 08:49

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