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2020/02/14

『情婦マノン』

Manon_202002111848011948年、仏。アンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督。アマゾンの紹介文。

ユダヤ人を乗せイスラエルへ向かう貨物船内で、二人の密航者・ロベール(ミシェル・オークレール)とマノン(セシル・オーブリー)が見つかった。二人は船長に経緯を話し始める。44年、レジスタンスに参加しドイツ軍と戦っていたロベールは、若き売春婦マノンと出会い、たちまち虜になる。彼は運動から離脱し、二人での新生活を求めパリを目指すことにしたが、それは波乱の幕開けだった。(引用終わり)

プッチーニの歌劇「マノン・レスコー」に関連して、ケイタローさんが紹介してくれた映画を、ようやく観ることが出来た。アベ・プレヴォーの原作を第二次世界大戦直後のフランスを舞台にして翻案、一途な青年と奔放な女性の逃避行という大筋は維持しながら、当時の世相を織り込んだ現代劇に生まれ変わらせている。

プッチーニのオペラでは、囚人となりアメリカに追放されるマノンを追って、デ・グリューが無理矢理に移送船に同乗するけれど、映画では殺人犯となって列車で逃走するロベールを、マノンが追いかけるという逆の設定になっている。満員の乗客をかき分けながら、ロベールを必死で探すマノンの表情を長回しで映したシーンが印象的で、言い寄ってくる男をあしらうだけだった彼女が、ようやく本物の愛に目覚めたことを窺わせて秀逸である。

二人の逃避行はオペラと同様、悲惨な結果に終わるが、死んだマノンの脚を持ってロベールが砂漠を彷徨う有名なシーンは鬼気迫る。「恐怖の報酬」のクルーゾー監督だけに、死体の描写などもっとリアルな表現をしているのかと予想していたが、それほどでもなかった。特殊メイクなどなかったに違いない当時のこと、砂に埋められたマノンの顔はそれまでと変わらず美しい。しかし、そのことでかえって二人の悲しい宿命が際立って感じられるのである。

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コメント

あぁ、観ていただけましたか。
「情婦」って・・・なんか古めかしくていいですね。(笑)
18世紀の物語をみごとに翻案した恋愛サスペンス。とくにラストが秀逸です。
かつて、紅顔の美少年だった僕は、セシル・オーブリの豊満な胸や素足にドキドキした覚えがあります。
「ファム・ファタール」 男を破滅させる魔性の女。
カルメンやナナ、「椿姫」のヴィオレッタ・・・フランスの伝統?なんでしょうか。
フランスの女優って、ちょっと怖い美しさがありますよね。
以前話に出た「泉のマノン」のエマニュエル・ベアール、若いときのブリジット・バルドーなんかも。

投稿: ケイタロー | 2020/02/15 11:26

ケイタローさん
「ファム・ファタール」でググってみたら、
古くはサロメとかクレオパトラ、
日本でも『痴人の愛』のナオミなど、
古今東西枚挙に遑がないようですね。
ただ、「オム・ファタール」なる男の話は
あまりないようです。なんでだろう?

投稿: まこてぃん | 2020/02/16 08:47

「魔性の男」とは言わないし、
魔法使いはだいたい女性で、
男は箒に乗って飛べないし、
奥様は魔女だし・・・(笑)

投稿: ケイタロー | 2020/02/17 09:17

ケイタローさん
あえて言えばジゴロとかホストと
呼ばれる人種ぐらいでしょうが、
ただカネを巻き上げるだけの浅ましい存在で、
「運命の女」の足元にも及びませんね。

投稿: まこてぃん | 2020/02/18 21:09

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