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2020/01/30

ハイティンク&ベルリンフィルのマーラー交響曲集

Mahler昨年末にかけてブルックナーばかり聴いていたが、今年に入ってからはマーラーを集中的に聴いている。タイトルにあるように、ハイティンクつながりというわけだが、ベルリンフィルを振ったマーラーは第8番と第9番を欠き(第10番のアダージョは収録)、ブルックナーと同じく交響曲「全集」ではないのが何とも残念である。

さて、その演奏内容だが、ブルックナーの項で書いたのとほぼ同じことが、曲想がまったく異なるマーラーでも該当するというのは、ある意味驚くべきことなのかもしれない。究極の職人技とでも言えばいいのだろうか、作曲者がスコアに籠めた音の世界を忠実に再現することに徹している。そこに余計な主観や誇張、聴衆への媚など一切入り込む隙もないのである。

まさに「なにも足さない。なにも引かない。」であるが、そんな演奏が面白いのかと言えば、最初は面白くないだろう。しかし、何度か聴くと飽きてしまう演奏と、何度聴いても飽きない演奏とがあるとすれば、ハイティンクは明らかに後者に属する。マーラー特有の粘着質で執拗な反復が多い長大な交響曲を聴き終えて「胃もたれ」するどころか、一種の爽快感を与えるような演奏はそうあるものではない。

優秀な録音も含めて全般的に水準が高いが、より後期の作品ほど上記の特質が発揮されているように思う。第10番のアダージョが大変美しく感動的な演奏であるだけに、せめてあと第9番だけでも録音しておいてくれたらと思わずにいられないが、マエストロは既に昨年夏、惜しまれながら引退してしまった。若い頃にコンセルトヘボウと録音した全集盤や、2011年バイエルン放送響とのライヴ録音などもあるようなので、入手できれば聴いてみようかと思う。

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