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2019/12/13

歌劇「トスカ」

このところ何かと多忙でまとまった時間が取れず、オペラ鑑賞はちょっと久しぶりとなった。

プッチーニの代表作のひとつ。主要登場人物がいずれも死んでしまい、さらには尾行や拷問、セクハラと、これでもかという陰惨な内容にもかかわらず、最後まで愛を貫いたトスカとカヴァラドッシの悲運が胸を打つ。悪役の警視総監スカルピアとの対決の構図は分かりやすく、そこにプッチーニの名旋律が絡んでとなれば、純粋な歌芝居の世界に浸り切ることが出来るというもの。

「ラ・ボエーム」の項で書いたような、音楽の流れとストーリーの一体感はさらに強まり、ほとんどワーグナーの楽劇に近いものがある。実際のところ、トスカとカヴァラドッシそれぞれの名アリア、「歌に生き、恋に生き」と「星は光りぬ」が、そこだけ浮いてしまっているような印象すらある。作曲者自身そのことに不満を持っていたというが、それでも、これらのアリアがあってこその「トスカ」であることは間違いない。

今回鑑賞したのは、2018年メトロポリタンオペラ公演のライブビューイング。トスカのソニア・ヨンチェヴァ、カヴァラドッシのヴィットーリオ・グリゴーロとも、今回がロール・デビューとは思えないほどのハマり方だ。スカルピアのジェリコ・ルチッチも、憎々しいながらどこか人間味を感じさせる演技が光った。

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コメント

“「歌に生き、恋に生き」と「星は光りぬ」が、そこだけ浮いてしまっているような印象”
おっしゃるとおり。
この時代になると、オペラはより演劇的になり物語の流れを重視するので、アリアが浮いた感じがしますね。拍手もできないし。
ただソプラノやテノールの歌声に聞き惚れるだけでなく、ナポレオン戦争や革命の血生臭い政治状況を理解し、共和主義者カヴァラドッシの心情を思い、警視総監スカルピアを憎み・・・(忙しい)
トスカさん、ただ歌や恋に生きているだけじゃダメなんだ。

敬虔なカトリックの彼女がなぜ自殺したのか?
サンタンジェロ城の屋上から身を投げるとき、愛するカヴァラドッシの名ではなく、
「おお、スカルピア、神の御前で!」と叫んだのか?
奥の深い、ヴェリズモオペラの傑作ですね。

ちなみに、このオペラもカーテンコールをしないでほしいです。(^^!

投稿: ケイタロー | 2019/12/13 21:58

ケイタローさん
METの観客はお構いなしに大喝采を送ってました。(笑)
カーテンコールも通常よりも多いぐらいでした。

歴史や宗教の知識があると更に楽しめそうですが、
今から勉強しても間に合わないかもしれません。
とりあえずは目の前のお芝居と音楽を楽しみます。

投稿: まこてぃん | 2019/12/14 21:22

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