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2019/12/19

『愛と宿命の泉』

Manon1986年、仏。クロード・ベリ監督。前篇後篇合わせて4時間近い大作である。アマゾンの紹介文。

(前篇)1920年、フランスのプロヴァンス地方。兵役を終えて帰ってきたウゴラン(ダニエル・オートゥイユ)は、伯父のセザール(イヴ・モンタン)の家の近くに身を落ち着けた。セザールは富と力をもつスベラン家の長老であり、人々から“パペ”と呼ばれていたが、結婚もせずに独身を貫いていた。スベラン家の血筋を絶やさないためにも、ウゴランに妻を迎えるようにせきたてた。しかし不器用で内気なウゴランの夢は、結婚よりもカーネーションの栽培だった。
問題は大量に水が必要なこと。パペは甥を助けるために手段を選ばない。泉の出る土地を自分たちのものにするため、その所有者の隣人を殺めてしまい、泉もセメントで埋めてしまった。その土地を相続したのは、隣人の妹フロレットの息子ジャン(ジェラール・ドバルデュー)だった。希望に溢れたジャンが、妻のエーメと娘のマノンを連れて都会から越してきた…。
(後篇)ジャンの悲劇的な死から10年後。策謀により彼の土地を手に入れたパペとウゴランはカーネーション栽培で豊かに暮らしていた。一方、ジャンの娘マノン(エマニュエル・ベアール)は輝くばかりに美しく成長し、同じ村の羊飼いとして暮らしていた。そんなある日、狩りに出たウゴランは、泉で水浴びするマノンの姿を見て一目で恋に落ちてしまう。(引用終わり)

タイトルすら知らなかったが、ケイタローさんのコメントに紹介されていて興味を持ったので観てみた。セザールを中心に三代(お腹の中には四代目も)にわたるスベラン家を取り巻く愛憎劇を描いた人間ドラマが、極端な少雨のため農業には厳しいプロヴァンス地方の自然と、その中で生きる人々のナマの生活感情を交えて、大河ドラマのように展開していく。

とりわけ、強欲や打算、策謀といった人間の負の側面と、それによる因果応報ともいうべき厳しい運命が、残酷なまでにリアルに描かれている。ダイナマイトが爆発した直後の井戸掘削現場に駆け寄ったジャン。ジャンの家族が出て行くと分かった途端、隠していた泉を確かめに行ったウゴランとセザール。いずれも水が湧くのを一刻も早く自分の目で見たかったからだが、その一瞬の油断が自業自得の結果を招いてしまうのである。

本作を観ながら、何とはなしにではあるが、聖書を引用ないし下敷きにしているような匂いを感じた。各種映画情報サイトでは特に指摘はないが、アマゾンのユーザーレビューで、旧約聖書の「コヘレトの言葉」を踏まえたものであるとの投稿があった。人の運命は予め決められているとする決定論に基づく世界観は、確かに本作の内容に一脈通じるところがあるのかもしれない。

オペラとの関連も少々あって、冒頭から最後まで全体を通じて流れるハーモニカによるメロディは、ヴェルディのオペラ「運命の力」で、そのタイトルは本作の内容を暗示している。また、ジャンの妻エーメは元オペラ歌手で、オペラ「マノン」(マスネかプッチーニかは不明)で評判となったので、娘の名前もマノンにしたというし、ジャンの死後は歌手として復帰し、「アイーダ」の端役を歌ったというくだりがある。

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コメント

なるほど、言われてみると聖書の匂いがプンプンします。(^^)
気がつきませんでした。
調べてみたら、クロード・ベリはアシュケナジムの家庭に生まれています。とすると、当然『コヘレトの言葉』を踏まえている可能性はあります。「この世のすべてには定めがあり、それは決して変えることができない」というソロモンの宿命論。仏教でいえば因果応報。だから『運命の力』なんですね。(納得)
「壮大なロマン」という言葉がぴったりの映画です。

ベリが製作した『王妃マルゴ』もお薦めです。

投稿: ケイタロー | 2019/12/19 15:18

ケイタローさん
自分の直感が見当違いでなくて良かったです。
『王妃マルゴ』も全く知りませんでしたが、
これも宗教色がかなり濃いようですね。
ラストはサロメを踏まえているみたいだし。

投稿: まこてぃん | 2019/12/20 21:52

マルゴは愛人ラ・モールの首を防腐処理して保存していたといいます。
ゾッとします。
「切首」は歌舞伎でも重要な小道具だし、劇的効果は抜群ですね。
で、思い出すのは、犯罪スリラーの傑作『セブン』。
ゾッとします。

投稿: ケイタロー | 2019/12/21 16:28

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