『地図帳の深読み』
今尾恵介著。版元、帝国書院の紹介文。
学生時代に誰もが手にした懐かしの学校地図帳には、こんな楽しみ方があった! 100年以上にわたり地図帳を出版し続けてきた帝国書院と地図研究家の今尾恵介氏がタッグを組み、海面下の土地、中央分水界、飛び地、地名や国名、経緯度や主題図など「地図帳」ならでは情報を、スマホ地図ではできない「深読み」する! 家の奥に眠るあの地図帳、今もう一度繙いてみませんか。(引用終わり)
帝国書院刊ということで、半分は自社刊行物のPRみたいなものかと思っていたが、意外に客観的な視点から地図帳の面白さを縦横に論じている(もちろん、版元をヨイショした箇所もなくはない・笑)。ひとえに著者の長年にわたる地図帳愛のなせるわざであるが、題材が「地図」(国土地理院の地形図など)ではなく、「地図帳」だというところがミソだろう。
地形図では等高線だけのところ、地図帳ではそれに段彩が施されて、地形が直感的に把握できるようになっているし、また地域ごとの名産品がイラストで紹介されたり、巻末には各種統計が掲載されたりと、学習者の便宜を図る工夫がなされている。それを「深く読み込む」ことで貴重な情報が得られることを、著者は多くの具体的事例を挙げて力説している。
地図帳に親しむことは、自国や世界の本当の姿を知ることであり、ひいては世界平和の礎ともなる。「あとがき」で著者は次のように述べている。
世界はあまりに広く、人はその大半を知らずに一生を終えるのだが、地図帳があれば、少なくとも知らない場所へ空想旅行することはできるだろう。昨今「多様性」が叫ばれるのは、世界を均一化の方向へ誘うグローバル化への警戒感のゆえだろうか。紛争の多くはお互いの無理解に起因するのだろうが、異文化を認め合うことが広義の安全保障につながるとすれば、炎上するセンセーショナルな報道ではなく、地道に地図帳に親しむことこそが平和への王道かもしれない。
ところで、本書カバーは地図帳の切り抜きを貼り合わせたようなデザインになっているが、裏側の一枚は奈良盆地付近の地図である。思わず見入ってしまったが、1か所だけ不思議な記載がある。それは高松塚古墳の南方、高取町役場の東側に卍マークとともに記された「子嶋寺」である。
長いこと隣の橿原市に住んでいるが、寡聞にしてその名すら知らなかった。調べてみるとそれなりに由緒ある寺のようだけれど、この場所に記載するなら「キトラ古墳」の方が昨今はるかに有名だし、近隣の寺では飛鳥観光の名所である「岡寺」や「飛鳥寺」の記載がないのが不思議である。
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コメント
早速図書館の予約入れました。(^^;
高校の時の地図帳持ってます。
もちろん日本も世界も様変わり?してますが、
見やすくわかりやすいですね。
話変わって、先日古本屋で『週刊日本の街道』という本を見つけて、
17冊程買ってしまいました。(^^;
買っただけで満足してる感じですが、いつか辿れるといいかな~と。
動けなくなる方が早いかもしれません。(^^;
投稿: くー | 2019/10/27 09:24
くーさん
『週刊…』は全部で100冊あるようですね。
県下の図書館に蔵書があるようなので、
機会があれば一度読んでみたいです。
投稿: まこてぃん | 2019/10/28 18:50