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2019/10/02

歌劇「仮面舞踏会」

Maschera ヴェルディ23作目のオペラ。18世紀スウェーデンの専制君主グスターヴォ3世が、仮面舞踏会の席上アンカーストレム伯爵に暗殺された事件に題材を取りながら、伯爵は国王の最も忠実な側近である一方、その妻アメリアは国王との秘められた恋に苦しむなど、史実にない設定を交えた「3幕のメロドランマ」(原作のサブタイトル)に仕立てられている。

当時のイタリアでは当局による検閲が厳しかったことから、舞台を17世紀末、イギリスの植民地ボストンに移し、登場人物の名前も変えるなどの改訂を加えて初演に漕ぎつけ、大成功を収めたということだが、現在ではオリジナル版で上演されることも多く、今回鑑賞した1991年収録のメトロポリタンオペラ公演も同様である。演出、装置、衣装はピエロ・ファッジョーニ。ヤマ場となる最後の舞踏会シーンはため息が出るほど美しく、幕が開いた瞬間に聴衆から拍手が起きるほどだ。

「リゴレット」や「イル・トロヴァトーレ」などと比べると、ストーリーは比較的単純で分かりやすい。道ならぬ恋に落ちた国王とアメリアの苦悩はいかにも人間らしく、その悲劇的な結末に十分感情移入できる真っ当な「メロドラマ」であるとも言える。国王役のパヴァロッティ、伯爵役のレオ・ヌッチはいずれもさすがの貫禄を見せていて、迫力ある歌唱のみならず、表情の変化やちょっとした仕草による演技も大変こまやかである。舞台ではオペラグラスがないと分かりづらいが、DVDではアップでしっかり確認できる。

ところで、本作はこのブログ開始早々の2005年4月、ボストンマラソンを走る前にMETの同じプロダクションを鑑賞していた。その予習として購入したのがこのDVDというわけだが、その時2回も観ていたのに、ストーリーの大半を忘れてしまっていた。(泣)

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コメント

おっと、来ましたね。(^^)
道ならぬ恋に落ちて・・・いいですね。(残念ながら経験はないけれど)
国王(総督)と部下の妻との不倫。観ている方が恥ずかしくなるほどの激情。
これぞイタリアオペラの真骨頂。
「ノルマ」「運命の力」「アイーダ」・・・
イタリアに限らず「ばらの騎士」だって「トリスタンとイゾルデ」だって、道ならぬ恋。
普遍のテーマかもしれません。

MET、いいですね。ぜひ行ってみたいオペラハウスです。
本作は、新演出のライブビューイングを観ただけで。
CDは
コリン・デイヴィス指揮 コヴェント・ガーデン王立歌劇場管弦楽団
これまた若き日のカレーラスとカバリエ。

投稿: ケイタロー | 2019/10/03 11:20

ケイタローさん
ココログの不具合なのか、このところ
コメントの反映が遅くなっていますね。

ヴェルディのオペラを数本観てきて、
不倫とか復讐とか呪いとか、
最後は人が死んで終わるとか、
共通するテーマみたいなものが
浮かび上がってきました。
ドラマづくりに不可欠な素材なんでしょうね。

投稿: まこてぃん | 2019/10/04 09:16

愛憎の果てに訪れる死に、カタルシスを感じます。
悲劇が精神を浄化するんですね。

投稿: ケイタロー | 2019/10/04 13:32

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