奈良街道を歩く その1(奈良~棚倉)
記事カテゴリーは便宜上「街道走り」としたが、今は「歩く」しかない。体力的にはまだ十分走れるけれども、長時間ストーマに衝撃を与え続けるのが不安だからだ。
今回は奈良から京都に至る奈良街道(大和街道)約40キロを3日間に分けて歩く。往時は途中に木津、玉水、長池、伏見の4宿が置かれていた。ルートは複数ある。かつて京都盆地南部にあった巨椋池が交通の大きな支障となり、古くは六地蔵、宇治方面に迂回していたが(現在のJR奈良線ルート)、秀吉時代に巨椋池を渡る太閤堤が築かれて最短ルートが整備された(現在の近鉄京都線ルート)。今回行くのは後者である。
また、木津川に沿った区間は江戸時代中後期には木津川右岸の土手を行くことが多かったようで、いつも参照している明治末期の地形図でも土手道を奈良街道としている。しかし、あまりに単調で面白味に欠ける上、トイレやコンビニ等もないことから、今回は古くからの集落を抜ける山背(やましろ)古道を通ることにした。
まだ残暑の残る14日午前、近鉄奈良駅前を出発。東向商店街を抜け、三条通に突き当たると以前走った伊勢本街道に一旦合流する。猿沢池から興福寺境内を抜けて大宮通に出て県庁前を東に進むと、今年4月に約45億円をかけて整備されたバスターミナルがある。観光バスによる渋滞の緩和が目的であるが、使い勝手が悪くて利用は想定の半分以下にとどまっているという。この日も3連休初日というのに、広い構内は人気もなく閑散としていた。
ここを左折して一路北上し、転害門前を経て今在家交差点で旧道に分岐する。佐保川に架かるこの橋の土台は慶安3年(1650)のものだそうだ。
ここから奈良坂の登りとなり、途中で振り返ると東大寺など奈良市内の風景が望める。
坂を登り切り、般若寺の先の植村牧場で名物ソフトクリームを食べながら牛たちを眺めて一息入れる。ラン仲間と何度か来たことがあるが、牛舎の屋根の上に牛がいることに、これまで気づいていなかった。フランスの作曲家ダリウス・ミヨーも多分これを見たのだろう。(謎爆)
この先、奈良豆比古(つひこ)神社の先の辻に弘化4年の道標が建ち、「すぐ京うぢ道 右いがいせ道」などと刻む。
やがて県道に合流したのち京都府木津川市に入り、州見台(くにみだい)住宅地の中を進む。JR奈良線と国道24号を越えて木津宿エリアに入ると、街道らしい風情が残っている。
木津川に突き当たる手前のとある寺の境内に和泉式部の墓がある。彼女は木津の生まれで、余生もここで過ごしたという伝承があるものの、それを裏付ける資料はなく、和泉式部の墓と称するものは全国各地にあるそうだ。
かつてはこの付近に木津川を渡る泉橋が架かっていたが、現在は少し上流側にある国道24号の泉大橋を渡る。
対岸の旧泉橋の袂と思しき付近に「西京都街道 東笠置山伊賀上野街道」などと刻む道標が残っている。裏面に「□□年春稟京都三宅安兵衛遺志建之」とあり、幕末から明治期の商人三宅安兵衛の遺志を稟けて、その子息が京都各地に建立した多数の道標のひとつと知れる。
この先は茶問屋が並ぶ地区であるが、土曜で休みなのか茶の香りが漂うという風情はなく、通りも閑散としていた。国道24号を渡ったJR上狛(かみこま)駅付近に環濠集落が残る。濠を渡る橋が危なげな駐車スペースになっている。
この先は集落の中を縫うように狭い道が蛇行しながら進み、いかにも古道の風情が感じられる。
この日はJR棚倉駅前までの約12キロで終了。奈良まで電車で戻ると僅か18分だった。
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コメント
木津川駅までの山背古道は辿ったことありますが、その先はまだ行けてません。
奈良駅までもよさげな雰囲気ですね。(^^♪
投稿: くー | 2019/09/17 18:56
手術後、3ヶ月近くですもんね。
取りあえず身体は元気ですよね(^^;)。
とは言え、歩いた後は結構脚が疲れるでしょう。
それも翌日に・・・(笑)。
ところで屋根の上の牛は牡でしょうか?。
いや検索したら、ちと気になりました。
曲名が「牡牛」と入る場合も有ったので(^◇^;)。
投稿: AKA | 2019/09/18 09:33
くーさん
山背古道は鄙びた良い雰囲気だったのですが、
コンビニやトイレがほとんどなくて、
今の体にはちょっとキツかったです。
AKAさん
以前は1日に30キロ走っても平気だったのに、
その半分を歩いただけで当日もう脚が疲れます。
写真をよく見るとお乳があるので牝牛ですね。
そもそも牧場にいるのはほぼ牝牛だけだそうです。
原語曲名は Le Boeuf sur le Toit で、
boeuf は男性名詞らしいので、多分ミヨーが
勘違いしたのでは…ということで。(笑)
投稿: まこてぃん | 2019/09/18 18:24
お断り
あるウェブ小説を勧める趣旨のコメントがありましたが、
記事本文とほとんど関係なく、投稿者は私の記憶する限り
直接知らない方のようなので削除しました。悪しからず。
投稿: まこてぃん | 2019/09/28 21:47