歌劇「椿姫」
ヴェルディ中期3大傑作のラスト。原題は La Traviata で「道を踏み外した女」というような意味だが、本邦ではデュマ・フィスの原作タイトルに近い「椿姫」として親しまれている。ちなみに、私の高校時代の歴史だったかの女性教師が同じ綽名で呼ばれていた。そのココロは、教壇で喋ると唾液が飛んで、最前列の生徒が迷惑したことによる。(笑)
今回鑑賞したのは、1994年英国コヴェント・ガーデン王立歌劇場で行われた公演のDVDである。主役のヴィオレッタを当時新進気鋭のアンジェラ・ゲオルギューが務め、彼女の出世作となった歴史的な公演である。指揮はこの劇場の音楽監督を長年務めたゲオルク・ショルティで、彼が死去する僅か3年前のことであった。
独墺系が得意だったショルティがヴェルディ、しかも「椿姫」というのは意外な取り合わせのように思え、前奏曲が始まってあの厳つい顔がアップで映るとかなりの違和感を感じるが、実際にはオペラ指揮者としてヴェルディやプッチーニもレパートリーにしていたようだ。
パリ社交界の華として持て囃されていたヴィオレッタが、ある日純真な青年アルフレードの一途な愛を受け入れ、パリ郊外で彼との幸福な日々を過ごすようになるが、突然現れたアルフレードの父ジェルモンから、娘の縁談に差し支えるからと身を引くよう懇願される。このあたり何となく日本の人情劇のようであるが、見知らぬ娘の幸福と自らの境遇を天秤にかけたヴィオレッタはジェルモンの申し出を了承する。その後の紆余曲折を経て、最終的にはジェルモンも考えを改めアルフレードとの仲を認めるも時すでに遅く、肺結核に侵されていたヴィオレッタはこの世を去る。
このようにヴィオレッタの命運は大きく変遷していき、それに合わせたヴェルディの音楽も非常に振れ幅が大きい。この役を演じるソプラノには幅広い歌唱力、演技力が求められるが、ゲオルギューは期待に十分応えて見事な歌唱と演技を披露している。アルフレード役のフランク・ロパードは少し弱いが役柄にはピッタリ、ジェルモン役のベテラン、レオ・ヌッチはさすがの味わい深い演技を見せている。
蛇足ながら、コヴェント・ガーデンの習慣なのだろう、アリアや重唱が終わった直後の拍手喝采は一切なく、すぐに次の場面へと移行する。DVDで観る限り観客の反応は全く分からないが、舞台の歌手たちには雰囲気は伝わっているのだろう。舞台が一旦止まったまま中断することなく、ストーリー展開に集中できるメリットはあると思われ、これはこれで良き伝統なのだろう。
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コメント
お久しぶりです。
僕もオペラは大好きです。
とくに惚れた腫れた、切った張ったのイタリアオペラはいいですね。(^^)
ロッシーニ、ドニゼッティ、ベッリーニ、そしてヴェルディ!如綺羅星
昨年、念願叶ってウィーン国立歌劇場で「アイーダ」を観てきました。
また感想を聞かせてください。
投稿: ケイタロー | 2019/09/11 14:28
ケイタローさん
意外な人から…と言っては失礼ですが、
ケイタローさんから音楽ネタで反応があるとは!
ヴェルディの次はプッチーニを観る予定です。
もう、「イタリア版浪花節」の世界ですね。(笑)
ウィーン国立歌劇場での観劇、羨ましいです。
私も事情が許せばもう一度だけウィーンに行って
音楽とオペラを楽しんでみたいです。
投稿: まこてぃん | 2019/09/12 08:23
ふふふ、意外でしょう(^^)
歌舞伎とオペラは大好物です。
レオンカヴァッロ、マスカーニ、そしてプッチーニ。
ヴェリズモもいいですね。
感想を聞かせてください。
投稿: ケイタロー | 2019/09/12 10:13
横から失礼します。
ケイタローさん、びっくり。(@_@)
知らなかったです。
ケイタローさんのことだから、蘊蓄凄そう?(^^;
投稿: くーです。 | 2019/09/13 17:47
ふふふ・・・
蘊蓄なら任せてください(^^!
投稿: ケイタロー | 2019/09/17 14:35