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2019/09/26

ベートーヴェン チェロソナタ全集

Uccd2141_20190926082501「全集」と言っても全部で5曲しかないのだが、内容的には「チェロの新約聖書」(「旧約」はもちろんバッハの無伴奏)と称されるほどの深みと多彩さを有している。ピアノソナタや弦楽四重奏曲と同様、作曲時期が初期、中期、後期と分散していて、それぞれの特徴を反映しているのも興味深い。

作品5の第1番と第2番は、いずれも序奏を持つ長大な第1楽章と、軽快なロンドによる第2楽章という特異な構成で、まだピアノが主役でヴァイオリンやチェロはオブリガート(助奏)的な色彩が強かった当時のソナタの様式を残すものの、生き生きした楽想や意表を突く展開に早くも作曲者の特質が現れている。

第3番作品69はいわゆる「傑作の森」の時期の作品だけに大変充実した内容を持ち、朗々としたメロディで開始される第1楽章、スケルツォの第2楽章、序奏のついたアレグロ・ヴィヴァーチェの第3楽章というオーソドックスな構成の中に、いかにもベートーヴェンという快活で躍動的な楽想が展開される。

一転して作品102の第4番、第5番は、作曲者晩年の特徴である自由な楽章構成、個人的な独白のような緩徐部分、フーガによる緊密な構築美などがみられ、後期のピアノソナタに相通じるものがある。

今回聴いたCDは、ロストロポーヴィチとリヒテルが共に壮年期の1960年代初頭に録音した名盤の誉れ高いもので、剛毅にして男性的な、気迫に満ちたベートーヴェン演奏である。ジャケットからしていかにも男性的な画で、面相や頭頂部の具合から、両者はまるで兄弟のように見える。(笑)

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コメント

久しぶりに、埃のかぶった同じ盤を出して聴いてみました。
間違いなく、脇役だったチェロが主役の座を獲得したのは3番です。
ベートーヴェンは交響曲でもメロディーを朗々と歌わせているし、弦楽四重奏でも
対等です。チェロが大好きなんですね。
モーツァルトがこの楽器を縦横に扱っていたら・・・。

デュ・プレの眉間にしわを寄せて弾く姿が好きでした。(^^)

投稿: ケイタロー | 2019/09/26 21:34

ケイタローさん
オペラのみならずクラシック全般にお詳しいとは!
ベートーヴェンのチェロパートと言えば、
エロイカの第1楽章冒頭や、第5交響曲の
第2楽章冒頭(ヴィオラとのユニゾンですが)など
印象的な使い方は枚挙にいとまがないですね。

投稿: まこてぃん | 2019/09/27 18:32

いえいえ全然詳しくありません。ただ音楽が好きなだけで。
クラシック、ジャズ、ロック・・・ぐちゃぐちゃです。(汗)

余談ですが頭頂部について
計算したら、録音時のロストロポーヴィチは34、5歳、リヒテルは40代。
ロシアに限らず欧米では、若くしてハゲている人が多いですが、マッチョなハゲが一番モテるそうです。
ユル・ブリンナー、ブルース・ウィリス、ジェイソン・ステイサムetc.
男性的な演奏と頭頂部が、この名盤の人気の理由かもしれません。(笑)

投稿: ケイタロー | 2019/09/28 21:26

ケイタローさん
日本人の場合、薄くなったりスダレ状になったり、
それを胡麻化そうとしてかえって見苦しくなりますが、
欧米人の場合は爽快とも言えるほど見事なハゲぶりです。
そこがまさに男らしいし、挙げておられる3人いずれも
そういう相貌の持ち主ばかりですね。

投稿: まこてぃん | 2019/09/29 09:06

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